第137話 マリウスとの決闘②

「しまった、やられた!」


「せっかくだから、お返しするよ!

 『倍返しダブルカウンター』!!」


 マリウスは『魔導師』により創り出した技で、魔法の威力を倍にして返してきた。

 流石にまともに食らうとまずいので、俺も『魔法特殊耐性』をONにしてダメージを最小限に抑える。


 これで50以上のダメージは受けない。そして50程度のダメージなら作業着の効果ですぐに回復する。

 MPもアーテイファクトの効果で回復するので気にならない。


 たださっきのような、五月雨の攻撃で沢山被弾してしまうと削られすぎて死んでしまうので油断は禁物だ。

 HPもMPも、そして命は有限だからね。


「へぇ、あっさりそれを防ぐんだね?

 やっぱり君は異質だな。

 君以外の人間で、まともに食らって平気な顔している人はいないんだよ?」


「そうなのか?

 そういうお前だって、『魔法吸収』なんてふざけたスキル持ってるじゃないか」


「うん、そうだね。でもこれは、ダメージを0にする訳じゃないんだよ?

 吸収出来た分がダメージ無効化されるけど、それ以外は普通に食らうんだよね」


「へえ、魔法が効かないって訳じゃないのか。

 でも、吸収した分は回復するんじゃないのか?」


「あ、分かってた?

 そう、ダメージ入っても回復もしているから結局ダメージ0ってわけ。

 まぁ、魔王みたいに一瞬で街が蒸発して消えるような魔法使われると耐えきれないかもしれないね」


「そんな魔法、ここで使ったら俺も死んでしまうぞ?!」


 しかし、この世界の魔王は本当に強いんだな。

 弱体化していたシャクティも、勇者たちから見ればかなり脅威なステータスだった。俺じゃ無ければ、シャクティにすら勝てなかったと思う。


 しかし、目の前にいるマリウスはそれ以上のステータスだ。

 まだまだ遊んでいる程度にしか実力を見せていない。というか、あの顔は本当に楽しんでるな!

 まぁ、だったら俺も楽しませて貰おうかな。


「さて、お互いに魔法が効かないみたいだし、殴り合いのガチンコ勝負といこうか!」


 そう言うと、手に剣を出現させるマリウス。

 その体で、そんな剣を出したらまんま魔王じゃないか?!


「結局、最後は自分のステータス次第だよね。

 今まで、嫌という程思い知らされてきた。

 だけど、君はそれを覆す力を持っているんだろう?」


「ああ、そうだな。じゃなきゃ、あのドラゴン達には勝てなかったさ。

 だから、全てを使ってお前を倒す!

 『平均アベレージ』発動!」


 マリウスの力が流れ込んでくる感じがする。やはり、圧倒的に力と魔力はマリウスの方が高い。

 HPとMPは各種ステータスに依存して変化するのだが俺だけは何故か例外だ。


 多分、『50フィフティ』によって無理やりレベルアップしたことでこの世界の法則を無視してしまったからだろう。

 ……多分ね。


 但しマリウスにはちゃんと効果が発揮されるので、HPもMPもガクッと下がっている。

 副産物としての効果だけど、かなり有難いな。


 あとはマリウスの攻撃を耐えつつ、最大の攻撃でHPを吹き飛ばしてやる!


「いくぞ、マリウス!」


「魔法以外でステータス下げるとか、反則だろっ!!

 くっそ、食らえ『ダイヤモンドスピア』!!」


 間髪入れず、魔法を放つマリウス。詠唱要らないはずなのに言ってしまうのは癖か?


(魔法名は詠唱に含まれません、マスター。

 完全無言でも発動出来ますが、方向や、威力を上げるのに有効です)


 なるほど、一応意味はあるということか。

 でもマリウス程の魔導師が手の内を晒すことをするだろうか?


「精霊魔法『水晶障壁クリスタルガード』!」


 なるべくダメージを抑えるため、精霊魔法でマリウスの魔法を受け流す。それに当たれば痛いしな。


 しかし、ガードして目を離した瞬間にマリウスの姿を見失う。やはり、魔法は囮か?!


 だとしたら、次に来るのは後ろかっ?!


「どこ見てるのかな?

 こっちだよ!」


「うがっ?!」


 いきなり頭上に現れて、俺の頭を蹴り飛ばすマリウス。そのとてつもない衝撃で、目の見えに星が舞う。

 更に追撃で上段に剣を構えているのが見えた。

 てか、殺す気まんまんじゃないかっ!?


「やばっ!!」


 咄嗟にその場から離脱し、距離をとることでマリウスの姿が変わったことが分かる。

 というか、空飛んでいるし。

 

 マリウス背中に、さっきまでは無かった大きな羽が生えていた。

 流石は魔族になっただけあるな。そんな芸当も出来るようになったのか。

 ちょっと、羨ましいな。


(マスターも魔族になりたいのですか?)


 いや、流石に魔族になりたいわけじゃないよ。ただ翼が欲しいなと思ったことが何度化あるだけさ。


 しかし、あの翼は本当にマリウスと繋がっているのか?見た感じは、生物の翼とは違うんだよな。

 なんというか、機械のように作られたものの印象だ。


 何故かと言うと、全て金属で出来ているようでピカピカと光沢を放っているからだな。それなのに、生き物の翼のようにしなやかに動いているから不思議な感じがする。


「それって、お前の身体の一部なのか?」


「戦っている最中に随分と余裕だね?

 そうだよ、これは僕の体から生えている正真正銘の翼さ!

 おかげで魔法を使わなくても、飛べるんだぜ?」


 そう言って、空をクルクルと飛び回るマリウス。なんだか前よりも子供っぽく感じるな。生まれ変わったから気持ちも若返ったか?


「正直羨ましいけど、生まれ変わるのは遠慮したいな」


「生まれ変わらせた張本人がよく言うよ!

 でも、今では感謝しているんだ。心も体も自由になったからね。

 でも、だからって手加減はしないからね!」


 そう言うと、両手を重ねて魔力を集めだした。中心に目に見えるほどに濃くなった魔力が更に凝縮されていく。


(マスター!あれは『魔導砲』です。

 受けている間、連続でダメージが発生するので避けてください!)


「ちっ、厄介な攻撃ばかり持ってやがんな!」


「流石に前の戦いで学習したからね。

 前の時も、高威力の攻撃より連続ダメージの方が嫌がってただろ?」


 言うか早いか、俺を目掛けて『魔導砲』を放った。マリウスは前よりも魔力値が高いせいでMPを気にしないで攻撃してきている。


 あの攻撃に捕まったら、瞬く間に俺のHPを削られてしまう。


 慌てて、横に後ろにと飛び躱していく。しかし、ステータスを同じにしているせいで振り切ることがなかなかできない。


「くっそ、逃げてばかりじゃ負けてしまうな」


「ほらほら、よそ見していたら当たっちゃうよ?」


 いい性格しているぜ。しかし、確実に仕留める方法だと確信しているからこそマリウスは手を緩めない。相変わらず、堅実な戦いをする奴だな!


「それなら、これを食らえ!」


 魔法はあまり効かないので、物理攻撃しか手がない。それなら、撹乱する意味でもいつもの手が一番いいだろう。


 拳ほどの石を投げてから『50フィフティ』で増やして狙い撃ちする。

 投擲マスタリのおかげで命中率はかなり高い。

 なのでマリウスも、これを躱しきれないはずだ!


「うわっと?! ごはっ?!!

 死角を狙ってくるとか、いい性格しているね?

 でもこれくらいなら直ぐに回復出来る……」


「いまだっ!!」


 『自己修復』スキルを使い、回復するために一瞬だけ手を緩めるマリウス。

 慎重故に、その隙を作ってしまったのだ。

 そして、これが俺にとっての最大のチャンスになる。


「うおっー!!」


 俺は、その一瞬を突いて黒斧を手にマリウスに飛びかかるのであった。

 

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