第135話 決闘の前に……
ダンジョンに篭って二週間経った。
そろそろおうちに帰りたい。温泉にも入ってゆっくりしたい。
さて、レベル上げは順調だ。1日に1レベルは上がっているし、このままいけば、あと一ヶ月くらいで目標を達成出来るだろう。
経験値を多く手に入れるアイテムが手に入ればもっと早く終わらせれるだろうけどね。
マリウスとの勝負に勝って是非とも手に入れたい。
そうそう、もう鈴香たちにレベルを追い越されたわ。タニアに観測してもらったけど、大体俺の1/50の経験値獲得でレベルが上がるらしい。
こんなところにまで、『
というか経験値の場合だけ、n倍が適用されるって神様に恨まれているのか俺?!会ったことないけど、ぜひ直接文句を言いたい。
「マスターのスキルは、他のどのスキルの特性にも似ていない特殊なものですね。『ユニークスキル』とも言えます」
「いやいや、ユニークって面白スキルとか要らんけど?」
「リューマさん、面白いとかのユニークではなく、唯一無二のという意味だと思いますよ?」
「あー、英語だとそういう意味だったなー」
ということは、このスキルは俺しか持ってないということか?
マリウスにも良く分からないスキルだとか言われていたし、この世界では俺しか持ってないスキルかもしれないな。
どうせだったら、もっと使いやすいのが良かったよ……。
さて、そろそろ最下層に到達するかな?
現在、地下九十九階層。
この階には、ボスらしき敵はいなかった。
その代わり、やたらと豪華な装飾された部屋に到着した。奥には降り階段が見えている。
その前に小さな丸テーブルと、水晶玉が置いてあるのが見えた。
「あれはなんだ?」
「……『鑑定』した結果、メッセージを相手に伝えるためのアイテムのようです。特に罠とかは仕掛けられていないようです、マスター」
「なるほど、それなら先に聞いておくか」
罠がないというので、先に聞いておくことにした。何か重要なメッセージが残されているかもしれないからね。
近づいて水晶玉に触れると、淡い光を発した。暫くすると、そこからホログラムのように映像が映し出された。
これは便利だな。リアルタイムの映像ならタニアでも可能だが記録しておくことは出来ない。
店の前において、宣伝に使ったら繁盛しそうだな。
『これを見ているということは、このダンジョンをクリアしたってことだね。おめでとうリューマ。
万全な君と戦いたいから、休憩出来る場所を用意したよ。
人数分のベッドにバスルームも用意したから、しっかりと休んで欲しい。
階段を降りるとそこは闘技場になっている。君以外の仲間は観戦出来るように、安全な別部屋を用意したから思う存分戦ってくれよな。
では、楽しみにしているよ』
メッセージが終わると、ホログラムは消えてしまった。
どうやら一回だけ流れる仕組みのようだな。
「これは便利な魔導具ですね。解析して、私も作ってみましょう」
「タニア、そんなことが出来るのか?」
「はい、マスターのレベルが上がったおかげで私もスキルが増えました。その中に、『魔導具創造』というのがあります」
「相変わらず、優秀だなータニアは」
「い、いえそれ程でも……」
おや、表情があまり変わらないから分かりにくいけど、珍しく照れているのか?
小さいタニアが少し顔を手で隠す仕草がちょっと可愛いかも。
「いや、それほどでもあるよ。いつもありがとうな」
そういってアタマを撫でると、照れながらもはにかむタニア。その顔を見ていると、なんかこっちの方が幸せな気分になるよ。
さて、それじゃ休憩の準備をしよう。
扉は中からロック出来るので、侵入者の心配も要らない。
中はいくつかの部屋に分かれていて、ベッドルームには人数分のベッドが用意されていた。
バスルームは二つ用意されていて、シャワーまで備わっている。
まるで海外の高級ホテルのようだな。
流石は元地球人だな。向こうにあった設備をこっちの世界で再現するなんて、かなりのこだわりを感じる。
「せっかく用意してくれたなら、最大限に利用しよう。それじゃ、俺とミィヤはこっちのバスルーム使うから、みんなはそっちの使ってくれ」
「「はーい」」
何故か、響子が残念そうにしていたが気のせいだろうか?
まぁ、あっちの方が人数多いし、人数割に不満でもあったかな。ただ、俺も戦いのために体を休めたいしそこは我慢してもらおう。
「うーん、気持ちいいな!
シャワーを作るっていう発想が無かったなぁ」
「この細かい水しぶきが気持ちいい
リューマのいた世界には、こんなものまであったのね」
「なるほど。マスター、これも魔導具のようですので後で解析しておきます」
ミィヤと二人でシャワーを浴びていると、下から声がしたので見下ろすとタニアも一緒に浴びていた。
「タニアって、お風呂必要なのか?」
「いいえ、常に汚れがつかないように保護しています。しかし、お風呂は嫌いではありません」
「そういえば、本体でも温泉一緒に入っていたものね」
普段から服を着ている訳じゃないので、そのままわしゃわしゃと頭をすすぐしぐさは、なんだか子供が頑張って洗っているみたいで微笑ましいな。
そんな隣には、背は小さいながらも見目麗しいミィヤの姿があるのだが。
なんだこの至福の光景は!前世では考えられないシチュエーションだな。
「どうした、リューマ?
そんなに見つめて、ミィヤが好きなのか?」
「何言っているんだ?
大好きの間違いだろ?」
そして、シャワーから流れるお湯を浴びながらそれよりも暑いキスを交わす。
ミィヤから伝わる体温が何よりも癒しとなり、体だけでなく心まで回復していくのが分かる。
ここ数日は、戦いに明け暮れていたからな、こうやって二人きりの時間は久しぶりだな。ついつい、ここがダンジョンの中だと忘れてしまいそうだ。
「マスター、お二人の邪魔をするつもりはありませんが……」
「ん……?どうしたタニア。まさか敵襲か?!」
「いえ……大変言いにくいのですが、ここはマリウスが支配するダンジョンの中なので、すべてあちらに筒抜けになっているかと……」
「ぶっ、まじかよ!?」
「マリウス……、無粋な男」
今の言葉が冷や水となり、一瞬で冷めてしまう。
そもそも、ひとの家に来てイチャついているようなものだものな。
ダンジョン生活が長くなって我を忘れかけていたようだ。
「じゃあ、せめて今夜は二人で寝よう?」
「そうだな。ミィヤの体温感じて寝るだけでも幸せだな」
「いつもな気もしますが……。
では、私は村から料理を転送してリビングに用意してきます。
湯冷めしないようにしてくださいね」
そういって、タニアはシャワーだけ浴びて出て行った。
なんか余計な気を使わせてしまったみたいだな。
「取り敢えず、風呂に入ろうか」
「ん、そうしよ」
俺とミィヤは、そのあと二人でゆっくりと風呂を堪能するのであった。
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