第134話 魔王になるの?
ダンジョンに篭ってからちょうど一週間経った。
特にマリウスに催促される訳じゃないし、焦らずに攻略を続けて確実にレベル上げをしていた。
ここは地下七十五階層。おかしなことだけど、地下に潜るほど天井が高くなっているみたいだ。
まぁ、出てくる魔物を見ればその理由は歴然とするよね。
このダンジョンは下層に向かうほど、出てくる魔物の数は減りその分大型のものが多くなっていくからだ。その魔物に合わせて天井が高くなるように創っているんだろう。
そんな中、物語に良く出てくる魔物を見つけた。
獅子のような顔が三つあり、吐く息は熱を持つのか煙が立つ。赤黒い体毛は丈夫そうで、触れば刺さりそうなほどだ。なんかトゲトゲしているな。触ったら痛そう。
「あれって、いわゆるケルベロスって奴か?」
「あの三つ首に巨大な胴体、炎を吐く魔獣ですね。……はい、マスター。あれはケルベロスLV80です。HPは多いですが、マスターなら一撃ですね」
「リューマが戦うと、大体一撃で終わるからいまいち強さが分からない」
「そうだよっ!
だから、アレは譲ってよ!」
そこで鈴香が割り込んできた。
こんな下層に来てもまだ獲物取り合戦は続いている。
「確かに、私たちもレベルは上がって強くなってますが連携の訓練もしないとこの先厳しそうですわ」
「私の剣技が通じるのか、試してみないとね」
「私は『応援』スキルでバフかけるね」
いいよと言う前に、前に陣取り鈴香と星香そして瞳月がケルベロスに襲いかかる。
それをサポートする明日香は、スキルによって全員の身体能力を向上させた。
そこに更に響子がスキルを発動させた。
「では、みんなの能力を上げますよ!
『統率者』スキル発動!」
響子のスキルで皆の恐怖心が収まり、集中力が格段に向上する。更にステータスも上がるため、一撃一撃がかなりの威力だ。
「たああっ!!」
「どおりゃああっ!!」
星香が薙刀でケルベロスの首をひとつ切り落とす。怯んだケルベロスのもうひとつの首に、鈴香が強烈な拳を繰り出し破壊した。
「スキル『一閃』!」
居合で抜いた刀が煌めき、残った首ごとケルベロスの胴を真っ二つにした。
黒い煙を上げてアイテムを落とし、ケルベロスは消滅してしまった。
一人一人は俺よりもステータスが低いのに、バフスキルと攻撃スキルを駆使することで遜色ない戦闘力を発揮する。
これがチームの連携力だ。格上の敵にも、あっさりと勝利してしまう。末恐ろしい娘たちだな。
言い換えれば頼もしいとも言えるけどね。
「あれは、巨人か?」
目の前に俺たちの三倍はデカい人型の魔物が現れた。人の背丈ほどある顔は髭がぼうぼうと生えてよく分からない。ボサボサな髪は背中にまで伸びている。強靭そうな肉体は、筋肉の鎧になっておりちょっとやそっとじゃビクともしないだろう。
「ジャイアントLV81です。力だけならドラゴン並に強いので注意です、マスター」
「了解! ミィヤ、足留め頼んだぞ!」
「任せて。『
トレントのナイフにより現れたドリアードは、無数の蔦で巨木のようなジャイアントの足を縛り上げる。蔦にはかなりの強度があり、どれだけ暴れても千切ることが出来ない。
それだけで、身動きが取れなくなったジャイアント。
体が大きい分、元々動きが遅いジャイアントはそれを気にする素振りもなく、手に持った棍棒を振り下ろしこちらに攻撃してきた。
「そんな攻撃にやられるかよ!」
このダンジョンだけで、一万以上の魔物を倒している。流石にこれだけの数をこなせば戦闘にも慣れてきた。
おかげでいくつかのスキルも獲得できたし、自賛ではなく本当に強くなったと思う。
スキルの影響だけじゃなく、戦いの感覚を身についてきた。
どうやれば体が思うように動くのか、武器の角度の調整の仕方、力を入れるタイミング。
そんな戦いの専門家なら当たり前に知っていることを今更ながら学習している。
「前よりも威力が上がってきましたね、マスター」
「ああ、力まなくても倒せるちょうどいい加減が分かってきたよ」
そのおかげで余計な地形破壊とかしなくなった。自分が所有するダンジョン内なら修復出来るけど、外でやったら環境破壊もいいとこだからな。
「『
更に、ミスリルの短剣を媒体に風の上位精霊を呼び出すミィヤ。俺とパーティを組んでいるため、かなりの勢いでレベルが上がっている。
全ての戦闘で経験値を獲得しているわけじゃないが、サポートするだけでも獲得出来るので、補助魔法メインで戦っている。
ミィヤのレベルは、既に66になっている。
「使える魔法がかなり増えたみたいだな、ミィヤ」
「うん、これもリューマのおかげ。一人じゃこの半分にも到達しなかった」
「まだまだ上がりそうだし、じっくりレベルあげしておこう。この先何があるか分からないからな」
「うん、そうだね。
あ、止めよろしくね?」
ミィヤが召喚したセイレーンに、空気を奪われて苦しんでいるジャイアント。
しかし、HPが多いせいで中々倒れない。
俺はミスリルの大槌を構えて、大きくジャンプした。天井ギリギリまで跳んだ俺は、天井を蹴り飛ばしその反動を使って脳天目掛けて大槌を振り下ろす。
「おりゃあっ!!」
俺に気がついて、上を向いたその顔面にめり込むミスリルの大槌。
そのままグシャリと潰して、頭を粉砕した。
首を失った胴体はビクリと痙攣を起こして、数秒後に動かなくなった。
人型は頭を潰せば、大体は倒すことが可能だな。
【レベルが70にアップしました。各ステータスにボーナスが発生します…】
川西 龍真(かわにし りゅうま)
36歳 男 用務員、迷宮管理人、魔王代理
レベル:70
HP: 3500/3500 MP: 3500/3500
力:3500
魔力:3500
体力:3500
知力:3500
敏捷:3500
技量:3500
運:3500
スキル:『
称号:『ダンジョンマスター』、『デーモンキラー』、『アサシンキラー』、『ドラゴンキラー』、『
んー、マリウスには程遠いけどかなり強くはなっているかな?
何気に『
いや、確かに魔物は倒しまくったけどさ、この称号はないんじゃないかな?
「しかし、なんだよ職業に魔王代理って……」
「オッチャン、魔王になるの?」
「いや、ならんわっ!!」
変な職業に就かせないで欲しいわー。
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