第132話 遭遇
「おりゃっ!」
「あーっ、先に倒されたっ!!」
試練のダンジョンに篭って三日目。
ここまで、予定通り殆ど俺が倒してきた。倒した数は、既に数千体に及ぶ。もはや数を数えるのも面倒で覚えていない。
(先程ので、7852体です)
いや、数えているのかよ!すげーなタニア。
それにしても、雑魚が大半とはいえレベルがまだ4しか上がっていない。
現在は、地下61階層。平均100体以上は倒しているな。ちなみに鈴香たちの話では一番深くて45階層らしい。
助けに行ったあの場所から、少しは進んでいたんだな。安全マージンとって団体行動していたからな、そんなにサクサク進めなかったんだろう。
「オッチャンは、色んな意味で無茶苦茶だね」
「こっち来てから、のんびりするつもりだったのに、なんでかいつも慌ただしくなるんだよ。
だからか、少しせっかちになったかもな」
「少しってレベルじゃないと思いますけど?」
「早く終わらせて、家でのんびりしたいね」
「そうだなミィヤ。俺も同感だ!」
さっさとレベル上げ終わらせて家に帰る。そして、ミィヤとのんびりと暮らすのだ。
代理戦争では、魔王クラスと戦うことになるがレベル上げしてスタータス上がれば勝てなくはないだろう。
もっともタニアもアビスもいるし、シャクティも魔力が戻ればかなり強くなる。ひとり倒すくらいならなんとかいける筈さ。
……多分ね。
そんなことを考えつつも、敵をドカドカと倒していく。取りこぼした敵は、鈴香たちがもれなく討ち倒している。
解せないのは、俺よりも倒した数が圧倒的に少ないし、パーティ人数は多いのにレベルの上がりが早いのだ。
いくら俺よりもレベルが低かったとはいえ、全員が既にレベル50を超えた。
つまり、俺の倍近く上がっているのだ。
せっかく戦場に来させないように経験値を削いでいるのに、これでは意味を成さない。
かといって、これ以上ペースを落とせば俺が期限に間に合わない可能性があるんだよな。なんというジレンマなのか。
「タニア、なんか経験値上がるアイテムとかないかな?」
「無くはないですが、あっても経験値を1.1倍に増加させるとか微妙な効果……、なるほどその手がありますか」
「そう! 俺のスキルは50に変えれるけど、50倍にするわけじゃない。
だけど、元々が数倍の効果とかついていれば効果を50倍に変えれるんだよ」
「リューマのスキルは便利なようで、意外と制限が多いのね」
「そうなんだよ。思った通りには使えないことが多くて、授けた神に悪意を感じているくらいだよ!」
「あはは!それでも凄いけどね、オッチャン。
必要な経験値を50にすることとか出来ないの?」
「それなぁ。鈴香は自分があとどれくらいでレベルが上がるか知っているか?」
「へ? それは分かんないよー。だって、ステータスに書いてないし!」
「だろ? 概念として、経験値を数値にしていないんだよ。タニア曰く、魂の輝きが増していって、輝きが眩しくなる頃に次のレベルになるんだってよ」
「なるほど。やはり、この世界には経験値というのは数値で表せないんですね。他のステータスは数値があるのにおかしいとは思っていたんです」
星香もずっと疑問に思っていたみたいだ。
それに響子も頷いているあたり、みんな疑問に思っていたみたいだな。
「実はこっそり試してはみたんだ。だけど、『経験値を数値で表す概念がない』って表示された。
だから、この世界の神が概念を作らなかったんだろうな」
それか、何故か制限を掛けているかだよな。俺にとって不都合な条件が多い気がするんだよ。
気の所為とか、被害妄想と言われればそれまでだけど、なんで他人には『
なんで、俺を含めないと『
他の人の補助魔法や補助スキルは他人に掛けれるし、強化魔法は自分にも他人にも掛けれる。
俺のスキルだけ、何故か制限が多いことに気がついたのはみんなのスキルの効果を聞いてからだ。
他人のみ、自分のみのスキルは沢山ある。
だけど、範囲で使えるスキルで俺のようなスキルはひとつもなかったのだ。
だが、今は嘆いても仕方ない。
やれる範囲内で、スキルを最大限に活用するしかないからな。
「確か、このダンジョンには経験値を増加するアイテムが発見されたことがあると聞いています」
「響子ちゃん、それはどこで聞いたんだ?」
「えーと、確かマリウスさんからです。
なんでも昔にこのダンジョンに挑んで、クリアした時に、途中で手に入れたと」
なんだと!あのやろうそんないいもの手に入れていたのか!
ということは、あの時倒してダンジョンコアを奪っていればそのアイテム手に入れれたってことでは?
「マスター、過去を悔やんでも仕方ありません。
新しく手に入れることを考えましょう?」
「ま、そうだな。
結局それしかないよな」
もう、変な期待はしないさ。
前の世界でもそうだったが、上手くいといいなと思っただけでは上手くいかない。
いつもそうだ。
結局、誰も助けてはくれない。
誰も手を差し伸べてくれない。
俺を助けてくれるのは俺だけ……。
「リューマ? どうしたのリューマ!」
「あ、あれ? どうしたんだ俺は」
「マスター、精神力低下の罠に掛かったみたいです。直ぐに解除しましたが、大丈夫ですか?」
気がついたら、立ち止まってぼうーっとしてたみたいだ。そういえば、このダンジョンでは『精神力』のスキル使ってなかったな。
というか、アビスは何してたんだ?
「申し訳ないです。ここには精神攻撃してくる敵がいなかったもので、油断していたのですぞ!」
ですぞじゃねー!そういう所が前の主人に捨てられた原因だといい加減に気がついて欲しい。
「アビス、次からサボってたらクビにしますよ?」
「なんとぉっ!それは勘弁して欲しいですぞ?!
もう、気を抜かないので勘弁いただきたいのですぞ!」
そんなやり取りをしている最中であった。
奥の方から足音が聞こえてくる。
会話をしているふうに聞こえるので、どうやら誰か人がいるみたいだな。
だが、今日はここには俺たちしかいないはず。
もしかしたらたまたまここを見つけた冒険者が入り込んでいる可能性はあるけど、この階層まで来れる一般人なんていない。
それを分かっているのか、みな足を止めて武器を構えている。
そう、なんらかの方法で送り込まれた追っ手が来たのだと思っていた。
──だったのだが。
「あれー? こんな所に人がいると思ったらオッサンじゃないか」
「クソっ、やっぱり生きていた……ってあれ?
お前は誰だ?」
「酷いなぁ。僕を殺しておいて忘れるだなんて酷い奴だよ。マリウスだよ、思い出した?」
なんだコイツ。
マリウスだと言っているけど、なんか全くの別物だぞ?
真っ黒い肌に、青いサファイアのような瞳。
髪は銀色に輝いている。
背格好は、中学生くらい?まだ成長途中といった感じた。
「忘れたことなんかないさ。
というか、姿が変わりすぎだろ?」
「それも君のせいなんだけどなぁ」
その呆れたような笑い方は、まさにマリウスであった。
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