第118話 シャクティの宝物
「それで、魔王シャクティが保有していた物はなにがあるんだ?」
「そうじゃのう。記憶が正しければ精神攻撃無効とか、ドレイン無効とかあったはずじゃな。
あとは、飢餓無効じゃのう。
他はステータスアップとか一般的なアーティファクトばかりじゃの」
なんだ一般的なアーティファクトって!
そもそもアーティファクトが一般的なアイテムじゃないっていうんだよ。
案内されて宝物庫へ入る。
ちなみに、シャクティは元魔王なのでタニアの配下にはなっていない。
同格以上の相手は配下に置けないらしい。流石、負けても魔王ってことだな。
その為、タニア同様俺の直配下になる。当然お互いの情報連携は出来るみたいだが、お互いに無理な干渉は出来ないらしい。
「シャクティもタニアみたいに分身体を作れるのか?」
「妾は精霊じゃないので無理じゃぞ?
だから眷属に任せようと思うのじゃ」
「えっと、それはシャクティは俺についてくるってことか?」
「当たり前なのじゃ!
数百年ぶりに外に出れるのじゃぞ?!
行かないわけがないのじゃ!」
「ついてきてもいいけど、リューマは私のもの」
「ふむ、心配せんでも奥方の邪魔はせぬのじゃ!
妾は見ているだけで良いからの」
ふふふって妖しく笑うシャクティ。見るって何を見るんだよ!
それはそうとバンパイアって光に弱いんじゃないのか?
「シャクティは外に出て平気なのか?」
「妾は、真祖のバンパイア。アンデットではないので、陽の光も炎も弱点にはならぬのじゃ。
だから、安心するがよいぞ!」
元気良くそう言われれば、そうですかとしか言えない。どうやら、また一緒に行動する仲間が増えたようだな。
幸い、俺の配下になったことである程度の力を取り戻したらしく、今のレベルは60になっている。
本人曰く、『今の妾なら、普通のドラゴンなら余裕で勝てるのじゃ』ということらしい。
何その化け物。
そこまで強いと、裏切らないか心配になるな。
「『再生』もあるから、魔力がある限り一瞬でも回復も可能じゃぞ?
それとじゃな、コアを与えれれたおかげで『冷気操作』以外に『水操作』も習得したぞ!
褒めるが良いぞ、主様!」
「おー、えらいえらい。
で、どんなことが出来るんだ?」
「んー、反応が薄くて哀しくなるのう。
そうじゃな、まずはどこでも水を集めれる!
そして、生命の源でもある水を操ることで傷を癒したり、毒素を浄化したり、体力を回復しとたりも出来るのじゃ!」
えっへんと、小さな胸を張るシャクティ。
子供が威張っているみたいで、微笑ましくなる。
しかし、これは幸運だな。
なんせ、みんな魔法が使えるのに回復魔法が使える者がいなかったからな。
これで多少の怪我なら、気にせずに戦える。
「魔王、意外と役に立つ」
「奥方、妾はもう魔王ではないのじゃ!
役目が終わり、ただのシャクティじゃ」
「じゃあ、今は別の『色欲』の魔王がいるってこと?」
「んー、それも『禁止事項』なのじゃ!」
いやそれを元気よく言われても。
でも、どこかに新しく魔王が生まれたとしてもおかしくは無いな。
ただ、だからといって俺には関係ない話だ。
別に魔王を倒す使命があるわけじゃないし、敵対する理由がないからな。
魔族だって普通に生きているし、彼らの生活を脅かすのも目的ではないからな。
俺の邪魔をしないでくれるのを祈るだけだ。
はー、早くのんびり過ごしたい。
「で、眷属ってやっぱりコウモリとか?」
「主様は無知なのじゃな?
あれはペットだが、眷属ではないのじゃ。強いて言えば、偵察用に使うくらいじゃな。
眷属は、こういうものじゃ。
我が血に応え、その忠誠を示せ!生まれよ、我が分身『リリス』!!」
「はぁーい、お呼びですかァ?」
「うむ、お前にここを任す。
しっかり働くのじゃ!」
「えー、またですかぁ?
さっきやられたばかりなんですけどぉ。
……まぁ、やりますけどぉ」
文句を言いつつ、早速シャクティに何をしたらいいかを確認するリリス。見た目の気だるさと違いかなり優秀なようだ。
コアはシャクティが持っているが、ダンジョン内の権限を与えて殆ど任せることが可能になるらしい。
「うむ、これで大丈夫じゃな。
しっかり稼ぐのじゃぞ?」
「はーい、頑張りマース」
適当な返事をしつつも、早速作業を開始したリリス。とりあえずは、しっかりとやってくれそうだ。
「結局、『暴食』に対抗するアーティファクトってどれなんだ?」
「それは、この『ドレイン無効』のアーティファクトじゃな。あ奴の最大の特徴は相手の魂を喰らうことじゃからな。
それさえ防げば、ただの攻撃と魔法が強い化け物じゃ」
「いや、十分強そうじゃん」
「当たり前じゃぞ?魔王とは、ひとりでドラゴンを倒せる程の強者なのじゃ。
そのうえで、常人では耐えられらぬスキルを扱い、王として君臨しておるのじゃ」
「魔王専用スキルは、魔王であることを象徴するものですが……、シャクティはまだスキルを所持したままですね」
「魔王になる際に与えられたスキルなのじゃが、一度習得したスキルは失われぬみたいじゃな。
まぁ、他の魔王には通じぬスキル故、大して問題にしてないかもじゃな!」
「俺が生きている間は、次の『色欲』の魔王が生まれないことを祈るよ」
よし、これで準備は整った。予定よりもかなり早く終わったし早く家に帰りたいな。
そういえば、自分のダンジョン同士なら転送出来るんだよな。
女王にはタニアの分身から連絡できるし、まずは精霊の棲む村に帰ろう。
このダンジョンからも物は転送出来るみたいだから、必要なら後で送ってもらえばいいし。
「それじゃ、一旦家に帰ろう」
「ん、久々にゆっくりできるね」
流石のミィヤも魔王に対峙したことで随分と疲れたみたいだ。久々に村に帰ってゆっくりと休みたいのだろう。
「では、私とシャクティで転送門を作ります。
少しお待ちください」
「ふむ、済まぬなタニア。妾はあまりそういうのは得意ではなくてな」
「いいえ、こういうことは古来より精霊の役目ですから。シャクティは魔力の安定化をお願いします」
「分かった、任せるのじゃ!」
二人が協力して、ぱぁーっと光輝く門が作られた。流石この二人が協力したらあっという間だな。
「マスター、出来上がりました」
「ありがとう、助かるよタニア」
「主様、妾も頑張ったのじゃぞ?!」
「おー、そうだったな!
よしよし、良くやったな」
「ふふん、それほどでもあるのじゃ!」
ゴスロリ服をフリフリさせながらえっへんと胸を張るシャクティの頭を撫でてやると満足そうにしていた。
何故か不満そうにしていたミィヤも撫でてから、俺たちは転送門を通るのだった。
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