第116話 魔王シャクティ
「『色欲』の魔王は、まだ眠っていたじゃなかったのかよ!」
「ふん、妾をたたき起こした本人がそのような戯言を言うとはな。
お前がここに攻め入らなかったら、我が起きる事もなかったものを。
その罪、命をもって贖ってもらうぞ?」
そう言った途端、魔王シャクティの周りに冷気が集まる。詠唱もなく、精霊を呼んでいる気配ないが魔法なのかあれは。
たった数秒で氷塊が出来上がったいた。
「潰れろ『
ビュオンと放り投げた氷塊が、ハンマーの形に変わり俺に襲い掛かってきた。
「うおおおおおおお?!」
ミスリルの大槌で向かいうち、全身に力を入れて迫りくる氷のハンマーの圧になんとか耐える。
見た目は少女なのに、発動するスキルの威力が半端ない。
「タニア、あいつのステータスは?」
「『鑑定』に成功しました、情報を送ります」
すると、頭の中に魔王シャクティのステータスが表示された。
魔王シャクティ
???歳 女 『色欲』に支配されし古き女王
レベル:50
HP4500/4500 MP2000/2000
力:1200
魔力:2200
体力:4000
知力:2200
敏捷:1000
技量:1200
運:40
スキル:『
気になるスキルがいくつかあるな。やはりというか、本物の魔王らしいが想像よりもステータスが低いな。だけどこれは『弱体化』によるものだろうな。
完全な状態だったら、ステータスでも負けていただろうな。まぁ、『
この氷のハンマーは、『冷気操作』スキルで作ったものか。魔法ではなく、スキルというのが厄介だ。魔法なら『魔法特殊耐性』、物理攻撃スキルなら『物理特殊耐性』でダメージを落とせるはず。
ブレスのときも物理属性ダメージに分類されていたのできっと大丈夫だろう。
ただし、どちらの耐性スキルも自動発動しないし、効力を発揮したときにMP消費するので注意が必要だ。
やはり気になるのは、『
効果は次のような感じだ。
『
あらゆる精神スキルをMP消費なしで使えるってどんだけチートなのよ?!
しかも、本人には効かないのでやりたい放題だな。
しかし、俺には『精神力』のスキルがある。これのお陰で、なんとか影響を受けないで済んでいる。
今も相手からは、『恐怖』と『混乱』の効果を乗せて『魔眼』を使ってきている。
この『魔眼』は、任意の精神異常スキルを視線に入った者に掛けるスキルらしく、ミィヤが受けてしまったらひとたまりも無い。
今はアビスとタニアが護ってくれているので大丈夫だが、その分俺は自力で防御しないといけないのだ。
そして、最後に気になるのは『神威』。
『神威』:古の神より与えられた神の代行者たる証。近くにいる者に影響し、抵抗力が低い者は行動不可となる。
神の代行者ってなんだ?
魔王って、厄災の魔王の仲間なんだよな。
この神って、厄災の魔王ってことなんだろうか?確か神に近い存在だったか?だとしたら、同義として扱っているのかな。
どちらにしろ普通の魔物や魔族とは一線を画しているみたいだ。
殆どのステータスで勝っているからと甘くみてはいけない相手なのは理解出来た。
「うらあっ!!」
渾身の力を込めて、氷のハンマーを打ち返した。
「ほう? 人間のくせにやりおる。
しかし、これならどうかな?
『
いきなり頭上から滝のように氷が降ってきた。それは連なりビキビキいいながら氷ののれんを作り出しいく。
「やばいっ!」
次々に現れる氷の滝は、それぞれが壁になり俺の行動範囲を狭めていく。このままでは、回避する場所がなくなる。
「くっそ、これならどうだ?」
氷の滝により、出来上がった壁をミスリルの大槌で砕こうと打ち付けた。
ドォンッ、ガラガラガラと豪快な音と共に崩れ落ちるが、たったその一瞬でミスリルの大槌に氷の霜がへばりついた。
「やっぱり、あれに触れると凍ってしまうのか?!」
「逃げても無駄じゃよ。妾の氷に囲まれた時点でお前の負けじゃ」
気がついたら氷の結界を作られて、身動きが取れなくなったぞ。
くそっ、このままじゃ氷漬けにされてしまう!
「はい、そうですかなんて言えるわけないだろ!
精霊魔法『
アビスの精霊力を借りて、ミスリルの大槌に火炎属性を付与し、燃え上がらせる。俺の魔力の方が高いので、それだけで氷の結界が溶けて消えていく。
「なんと、妾の氷を溶かすだと?
お前、本当に人間か?!
これならどうじゃ、『氷竜牙』!」
氷で作られたドラゴンの頭が現れて、ガバッと口が開いた。それがそのまま俺に噛み付いてきた。
うげっ、結構痛い!
「その程度、ダメージなんてないぞ!」
きっちり50ダメージを受けたのだけど、問題は無い。というか、俺の防御力をあのステータスで貫いてくるあたり、結構強いスキルだな。
しかし、いつまでも食らってやる義理はない。
直ぐにミスリルの大槌で打ち砕いた。
砕けて四散する氷も、ミスリルの大槌に纏っていた炎でジュっと蒸発し消えた。
「これを人間が耐えるというのか!」
「今度はこっちの番だぞ!
そのまま眠っていろ、『ギカントプレス』!!」
纏っていた炎がぼうっと燃え盛る。さらに勢いがついた一撃が魔王シャクティを脳天を叩き割った。
「ガアッ!!」
グチャっと嫌な音をたてたあと、飛び散る四肢はそのまま一瞬で塵と化した。
「まじか? 一撃で終わった?」
そう思って、喝采の声をあげようとした瞬間だった。
『まさか、妾がこうも容易くやられるとは、人間の勇者とは厄介な……』
地の底から響くような声が部屋の奥から聞こえる。それは紛れもなく魔王シャクティの声だ。
「げ、倒した訳じゃなかったのか」
『ふむ、妾の肉体は砕け散ったの。
だがな人間、妾たち魔王とは不滅の存在なのだ』
そう言うと、飛散していた塵が集まり再び魔王シャクティが現れたのだ。
「分かったか? 貴様が何度妾を倒そうとも何度でも復活するのだ。大人しく、降伏せよ」
「誰がするかよ! 『ギカントプレス』!!」
「ちょっ、お前話を聞け!
ぐはっ!!」
俺は復活する魔王に対して、容赦なく最大の一撃で叩きのめす。
──何度も。
「まてっ、だから妾はっ! ぐひゃっ」
──何度でも。
「待って、少しだけ待て!
それからでも良い──げひゃっ」
──相手が折れるまで何度だって。
「魔王可哀想」
「そう仰らないで上げてください」
若干、魔王に哀れみの言葉が聞こえたとしても。
──1時間後。
『参った、妾の負けじゃ。だからもう妾の肉体を破壊しないでおくれ……』
最後には泣いて詫びる魔王を見るまでは……。
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