第113話 夢魔サキュバス
やっとフロアボスが出たんだけど、これって魔族なのかな?
レベルは30と低めだし、ミィヤといい勝負になるんじゃないかな。
「リューマ、あのおばさんのレベルは?」
「ん? ああ、レベル30だな。
まさか戦うのか?」
「もちろん。私のリューマを誘惑するオンナは許さない!」
いい勝負になると思ったけど、戦わせようとは思っていなかった。
本人はやる気だけど、どうしたもんかな?
(やる気があるなら、戦わせるべきです、マスター。
ミィヤのレベル上げの相手にピッタリかと)
レベルアップに必要な経験値は、その貢献度で配分が決まる。
なので、俺が戦ってしまうと経験値がミィヤに入りにくくなる。
もちろん俺もレベル上げしたいから、それは悪いことではないけど、ミィヤとずっと一緒に旅するならなるべく上げておきたい。
だからこそ、任せてみることにした。
「分かった。無理して怪我とかしないでくれよな?」
「ん、分かった!」
意気揚々と前に出るミィヤ。その手にはミスリルの短剣が握られている。
「あらぁ? お嬢ちゃんが相手なのかしら?
遊びじゃないの、その男に隠れて下がっていなさいよぉ」
「ふん、おばさんなんかに負けない。
それに私の方が強い」
そう言うと、呪文を詠唱するミィヤ。
おお、魔法か?
あまり使ったところを見たことがないから、興味津々だ。
「集え風の子、舞え、そして切り裂け、『ウインドカッター』!!」
「そんな初級魔法で私が……、イタタッ!
アナタもしかして、私よりもレベル高いの?」
思っていたよりもダメージを受けて、驚くサキュバス。
名前が無いし、ダンジョン生まれなのかな?それほど育ってない個体相手ならミィヤの方が強い。
まぁ、いざとなれば俺の『
負ける要素はない。
ミィヤが負けているのは身長と胸のサイズくらいだ。これに関しては大きければいい訳じゃないし、数値上だけの勝負ならって話だ。
「効いてる。それなら、コッチ。
集え石の子、固く、鋭い槍となれ。
『ストーンエッジ』!!」
「そう、何度も食らわないわよっ!
その命、精と魔力を寄越しなさい『エナジードレイン』!!」
ミィヤの魔法を躱しつつ、サキュバスがスキルを発動する。その瞬間、ミィヤの体からもやっとしたものが出てくるとそのままサキュバスに吸い込まれていった。
「ふふ、若いエキスは美味しいわね」
舌舐りして、ミィヤの精気を味わうサキュバス。
こうやって傍から見ると、やっぱ魔物って感じだな。邪悪に喜ぶ姿は、受け入れ難い。
「うくっ、たった一回でごっそりもっていかれた。
おばさん、鬱陶しいよ!」
「おばさんおばさんって、うるさいのよ小娘がっ!
さぁ、永遠に眠りなさい!『ソウルドレイン』!!」
両の手のひらを前にかざし、ミィヤに狙いを付ける。
名前からしてなんかヤバそうなスキルだな。もし、発動を許せばミィヤの命が危ないかもしれない。
そうさせてたまるか!
前に出て、サキュバスに攻撃しようとするが、ミィヤはそれを手で制した。
「大丈夫、リューマ以外も助けてくれているよ」
「あ任せあれですぞ、お嬢様!」
「アビス、失敗したらお仕置では済みませんよ?」
「私の上官殿は、厳しいデスね!」
言葉とは裏腹に、二人とも真剣な顔で……アビスはわからんけど、サキュバスに対抗する。
アビスは体から黒い霧を放出して全面に展開し、タニアはミィヤの周りに魔法障壁を展開した。
そして、ミィヤも手に持つナイフを変えてトレントのナイフを握る。
「おばさんには負けない!
そこで干からびていなさいっ!」
珍しく気合いの入った声で叫ぶミィヤ。
その手に持ったトレントのナイフを地面に突き刺した。
ビキビキと地面を割りながら、ナイフから木の根の様なものが伸びていく。
そしてサキュバスの真下まで来ると、一気に地上に突き出し木が生えた。
その木は、しゅるしゅるとサキュバスに巻き付き、拘束する。
「な、なにこれっ?!」
「精霊ドリアードを呼んだ。
これでおばさんはそこから動けない」
「ちっ、精霊使いか!
でもこの程度なら、魔法で……」
「遅い。これで終わりよ?」
サキュバスが拘束されている間に、サキュバスの眼前まで迫るミィヤ。
そしてもう一度持ち替えたミスリルの短剣をサキュバスの胸に突き刺した。
「ぐあっ、まさかこんな小娘にやられるだなんて?!」
心臓のある位置に、深く突き刺さるミスリルの短剣。そこから吹き出すのは、血ではなく魔力の元魔素だ。
「あっ、あっ!
私の命が漏れ出ていくっ!?
あ、あっーーーー!」
最期の断末魔を上げると、サキュバスの胸からぶあっと魔素が溢れ出し、そして塵となって消えていった。
「勝った!」
「流石ですぞ、お嬢様ー!
ぐあっ」
歓喜の声を上げて飛びつこうとしたアビスを払い落とし、ミィヤは俺に飛びついた。
「よしよし、よくやったなミィヤ!
タニアとアビスもよくミィヤを守ってくれたな、ありがとうな」
ミィヤの頭を撫でつつ、タニアとアビスにも労いの言葉をかける。
アビスは地面に転がったまま『ありがたきお言葉……』と少しだけ悲しそうに言っていた。
カランとサキュバスがいた場所に何かが転がる音がした。そこに目をやると指輪のような物が落ちていた。
「お?これは戦利品かな?」
「『鑑定』します──。はい、マスター。
これは『魅了耐性の指輪』ですね。自分よりレベルの低い相手からの魅了効果を防ぐ効果があります」
「おお、それはいいな。
これは俺が装備した方が良さそうだな」
「うん、リューマが魅了スキルなんかで他の女にふらつくのは駄目。すぐに使うのがいい」
ミィヤにも推されたので、すぐに装備をした。
これで余計な心配はしなくて済むな。
「ははは、私の役割が減ってしまいますな、旦那様」
「いや、アビスはまだまだ働いて貰うから心配しなくても大丈夫だぞ?」
「そ、そうですか。では、これからも頑張りますぞ、旦那様」
ヒューンと飛んで俺の左肩に乗るアビス。
いつの間にかそこがアビスの定位置になっているみたいだな。
「マスター、今のでミィヤのレベルが34に上がりました。ボス相手だとレベルが上がりやすいみたいですね」
「なるほど。それにしても、俺はなんで上がりにくいんだ?」
「ステータスが高くなりすぎているので、普通の人とは必要経験値が違うようですね。
多分、ドラゴンと同じくらいレベルが上がりにくいのかと」
「ドラゴンと一緒なのかよっ!
はぁ、もう少し楽して上げたいなぁ」
「今や人類最強クラスですから、諦めてください」
「せめて、ここをクリアするまでにレベルが一つ上がるといいなぁ」
「はい、マスター。
きっと最後に出るであろうボスを倒せば上がると思います。それまではミィヤのレベル上げに専念しましょう」
「うーん、そうだな。
上げれるうちにレベルをあげてしまおう。
ミィヤ、頑張ろうな」
「ん、頑張る。
リューマの妻にふさわしい女になる」
もうなっているさ、とか無粋な事は言わずに頭を撫でてそのまま次の階へ進むのであった。
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