第111話 誘惑のダンジョン
北側の国に来てから、まる三日。
予定通りに目的のダンジョンに辿り着いた。
楽しい時間もこれで終わりだな。
久々に、ずっとミィヤと過ごせたので割と楽しい三日だった。
この三日で大量の魔獣を狩ったため、ミィヤのレベルも33に上がった。ダンジョン以外で二つレベルが上がったわけだ。
理由は二つある。
まずは、前のダンジョンで少し経験値を稼いでいたので、32まであとちょっとで上がるくらいだった。
次に、敵のレベルは南側と違いかなり高かったことだ。南側の大陸ではダンジョンよりもレベルが圧倒的に低い魔物しか出ないのが常識だ。
しかし、魔王が支配する領域にはダンジョン程ではないにしても、強い魔物や魔獣が生まれるのだとか。
レベル30の敵が普通に歩いていたりするので、ミィヤのレベル上げにはちょうど良い感じだった。
「さて、ここがダンジョンの筈なんだが……」
「何かの建物?」
「どうやら、建物の下にダンジョンがあるみたいです、マスター」
へぇ、そんなパターンもあるのか。
どちらかというと、ダンジョンの上に建物を建てたんだろうけど、そんな危険なことを普通は、しないだろう。
つまりは、ダンジョンの魔物が怖くないほど強いか、支配出来る奴がここの建物の管理をしている筈だ。
「ふわわぁー。ようこそ、妖艶館へー。
あれ、人間のお客様なんて初めてじゃないかにゃ?」
「あらあら、脆弱な人間ちゃんは来るところじゃないですよぉ?
さっさと帰って、魔王様の餌にでもなってくださいね」
屋敷の扉がギーッと開いて、そこから出てきたのは獣人の女の子と悪魔の格好をした女の子だ。
あれ、獣人って人類だったよな?
(人類に含まれますが、魔族との混血は基本的に魔族に属します、マスター)
なるほど。獣人に対しては風当たりが強いみたいだし、魔族とに混血になればよりそれが強くなるだろうしな。
それはともかくだ、あんまり歓迎されてないな。
このまま帰るわけにいかないし、ちゃんと聞いてみるか。
「なぁ、これって帰れって言っているのかな。
だとすると、答えはお断りしますになるんだけど?」
「ねぇねぇ、あの人間ちゃんは馬鹿なのかな?
ここで殺っちゃおうか?」
「お客様なら通さないとダメだよ、サーナちゃん。
人間でも、対価を払えるなら相手をしないとだにゃ」
「? 対価ってなんだ?」
「ここは妖艶館。サキュバスの女王が管理するダンジョンの入口なんだにゃ。
中はあらゆる快楽で満たされているんだにゃ。
だから、中に入るには通行料として魔貨が必要なんだにゃ」
「マカ? お金って意味か?
金貨ならあるけど……」
「人間のは、魔力が込められていないから、こっちでは大した価値がつかないの。
魔貨がないなら、直接魔力を頂くわっ!」
「サーナちゃんは好戦的だにゃぁ。
じゃ、わたしも参加するにゃ」
「何よー、結局リーヤだってやるんじゃない!」
わきゃわきゃとじゃれあっている二人に構っている場合じゃないな。
こちとら急いでいるし、なんか戦う気満々みたいだからこっちから仕掛けてもいいよね。
「じゃ、吹き飛べ。精霊魔法『ウインドシールド』!」
「えっ?」
「にゃ?」
不意を付かれた二人は、キョトンとした顔で目の前に現れた半透明の盾を見ている。
そして、そのまま吹き飛ばされてしまう。
「うきゃっー!?」
「うにゃっー!!?」
二人は後ろの扉に激しく打ち付けられて、そのまま気を失うのだった。
うん、良かった穏便に済んだね。
「ちゃんと息はしているみたい。
問題なさそうだし、先に進もうリューマ」
完全にのびて、倒れている二人をそのままにして建物の中に入った。
中は綺麗に掃除してあり、常に誰が来てもいいようになっているみたいだな。
ダンジョンの入口は、中に入ってから直ぐに見つかった。なぜなら、看板がぶら下がっていたからね。
なんというか、どっかのテーマパークなのかと言いたくなるくらい、色んな説明が書いてある。
なになに、『ここは妖艶館。中にはサキュバスやリリス、インプにナイトメアなど、妖魔や淫魔が多数出現する。
ここで帰還の護符を買えば、気を失ってしまってもここに戻ってこれるので、ご心配なく。
存分に楽しんで来て欲しい』
どうやら、ここはあらゆる誘惑をしてくる精神攻撃特化のダンジョンなんだな。
ある程度生気を吸われても、気を失ってもどってこれるなら、楽しむだけ楽しんで、もしくは苦しむだけ苦しんで帰ってくるわけだ。
これは一人だったらヤバかったな。
独身歴が長い俺なんて、あっさりハマって沼になっていたに違いない。
今はミィヤがいるし、タニアもいる。
投擲用のアイテムになりかけているけど、アビスも闇魔法が使えるので役に立つ。
なんせ、幻術系は闇系統が多い。当然防ぐスキルや魔法を多く持っている。
まぁ、元々ダンジョンマスターだった闇精霊の能力なんだけどね。
タニアのおかげでかなり使えるようになっているらしい。一応期待しているんだよね。本人には絶対に言わないけど!
「なんというか、娼館のような作りなんだな。
さっきの二人は受付兼護衛なのかな?
他にスタッフは……」
「いらっしゃいませー!
男女二人で来るなんて、とても変わった趣味をお持ちなのですね?
コースは、淫夢コースと拷問コース、あとは堕落コースとありますがどれにしますか?」
「……、どれが一番長いコースだ?」
「リューマ?!」
勘違いして貰っては困るが、ここには攻略しに来ているんだ。最奥まで行けるコースじゃないと意味がない。
決して変態を極めに来たわけじゃない。
敢えて言おう、俺はノーマルだと!
(マスター、誰に向かって言っているのですか?)
(いや、何でもないよ。自分に言い聞かせているだけさ)
「リューマ?」
「心配するな、目的を忘れてないさ。
というより、目的のためには最難関なコースに行かないとな」
「なるほど。一瞬違う世界のトビラを開こうとしているのかと。
でも、そんなリューマでも私は愛せるよ」
「いや、変な扉は開かないから……!
冗談言ってないで、行くぞ!」
「うん、行こう」
こうして変な汗をかきつつ、新たな扉……じゃなかった、ダンジョンへの道を進むのだった。
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