第79話 決戦④
これまではMPの温存のため、使えなかったが一撃受けるだけで命取りになる相手だ、四の五の言っていられないよな。
ここが勝負の時だ。
【スキル『
よし、きた!
これで負けないはずだ。
暗黒竜シュバルツは、俺のスキル効果を知る由もない。マリウスも、俺の鑑定は出来なかったので最初に持っていたスキル以外は知らないはず!
「勝負だ、暗黒竜シュバルツ!!」
真っ向から勝負を仕掛けてきた俺に対し、魔法陣を出現させる暗黒竜シュバルツ。
さらに、逃げ道を塞ぐようにその鋭い爪で攻撃してきた。
「圧倒的な力と魔力で今まではそれで相手を屠ってきたんだろうな?
でも、俺はそうはいかないぞ!」
全てのステータスが同じ状態。だからこそ、分かる相手の弱点。それは、物理にも魔法にも弱いということだ。
もちろん、普通の人間ならそれでも高くて刃が届くことは無いだろう。しかし暗黒竜シュバルツと、力と魔力を借りている俺なら、その硬い鱗を突破出来る。
カッと目を見開き、大きく口を開く暗黒竜シュバルツ。
やばい、ブレスか?
……そういや、ブレスって物理?魔法?もしかした、別扱いか?
(マスター、ブレスは属性が付与された物理攻撃扱いです)
それならこのまま突っ込むぞ!
これでもくらえっ!!
「精霊魔法『
(──実行します)
あとこちに小いさな魔法陣が展開された。そこからランダムに強い光が放たれる。
暗黒竜シュバルツは、その大きな巨体を揺らし身もだえた。どうやら効いているようだ。しかし、それでも俺にブレスを放った。
俺は負けじと、ミスリルの大槌を上段で構える。すると不思議な光がそこに集まった。
どうやら、これはスキル発動を誘導してくれているのか?
「くらえっ、『チャージアタック』!!」
ドンピシャで発動し、頭蓋を砕くべく暗黒竜シュバルツの頭へ吸い込まれるように向かっていくミスリルの大槌。
そして、見事に頭のてっぺんを打ち付けた。
ギュオオオオンと初めて鳴く。かなりの威力が出たな。
このさっき習得した『チャージアタック』は、使うと二倍の威力でダメージを与え、更に短時間
MPも20しか消費しないので使い勝手は良さそうだな。
よし今の一撃で、かなりのダメージを与えれたぞ!頭を砕かれて怒ってるな。
だけど、これで終わりじゃない。
「タニア! もう一度、精霊魔法『
(──実行します)
追撃で更に、光の精霊魔法を放った。動けない状態で再びあらゆる角度から撃たれ呻き声を上げる暗黒竜シュバルツ。
「うがっ!!」
相手も黙っているわけじゃなかった。スタンが解けた瞬間に影から黒い棘を放った。
咄嗟に躱そうとするも、何発かダメージ受けてしまう。
「だけどこれくらい、なんともない!」
全て50ダメージだったのを見て、一瞬焦る。つまりは余裕で防御力を超えるダメージを与えてきているわけだ。
直ぐに回復出来るわけじゃないなら、油断禁物だな。
更に下に魔法陣が浮かび上がる。魔法もそんなに効かないので、そのまま攻撃しようとした。
だが──。
(毒の魔法です、マスター。回避してください!)
先にタニアが毒を感知して、間一髪回避に成功した。しかし、これがまずかった。
毒を回避したことで勘づいたのか、俺の弱点だと思った暗黒竜シュバルツは辺り一体に毒の息を吐き出した。
「くっそ!」
(毒を浄化する魔法を放ちます。マスター、許可を!)
「分かった! ちなみに解毒は出来ないの?」
(申し訳ございません、マスター。体内に入り込んだ毒の無効化は、私ではできません)
なんでも都合よくいかないもんだな。毒だけは継続ダメージだからスキルでダメージ減らしてもあまり効果が無いんだよな。
(精霊魔法『
タニアの精霊魔法で、あたりの毒が消えていく。そのおかげで何とかなりそうだ。
しかし、しつこく何度も毒を撒き散らし、また毒の魔法を繰り返してこちらを牽制してくる。
おかげでなかなか踏み込めないでいた。
そこからは我慢の時間が続く。毒を消したら影から攻撃が来て、それを躱すと今度は頭上から猛毒の水が降り注ぐ。さらに、躱した先には透明化したしっぽが襲いかかる。なんとか防ぐが、止まった足を狙い魔法による攻撃が降り注ぐ。
「徐々に削られているな。
こいつ今までで一番頭いいな」
じっとこちらを観察し、次々とこちらが嫌がる攻撃を仕掛けてくる。
なんだか真綿で首を絞められている気分だ。
(耐えてくださいマスター。焦れば相手の思惑に乗ってしまいます)
「くそっ、分かっているよ!」
そう思った矢先に、また見えない竜のしっぽに吹き飛ばされそうになる。ダメージは僅かだとはいえ、痛みはあるし鬱陶しい!
ん、しっぽ?
しっぽも体の一部だよな?ダメージは入るか?
(はい、マスター。急所では無いためダメージは低いですが入ります)
よし、それならしっぽを待ち伏せて返り討ちにしてやる。それに、試したいことがあるんだよな。
「タニア、暗黒竜シュバルツのしっぽ攻撃がきたら教えてくれ!」
(承知しました、マスター。感知しましたらお知らせします)
「ああ、頼んだぜ!」
わざと距離を取り、警戒しているフリをする。離れると毒ブレスや魔法での攻撃が激しくなった。
こちらも石をスキル『
よく見ると、地面の影が不自然に伸びている。さっきまでは回避するのに精一杯で気がついていなかったが、こうやって影を移動させて死角から攻撃していたのか!
伸びた影は俺のと重なり、そして一瞬歪んだ。
(マスター、来ます!)
「何度も食らうかっていうんだ!!」
ミスリルの大槌を上段に構えて、力を貯める。するとヘッド部分に光が集まる。
「『チャージアタック』!! そして、スキル『
【──『チャージアタック』の効果が変更されて、『ギガントプレス』に変化しました】
おお? 攻撃スキルの効果を変えると、スキル自体が変化するのか?
つまり、『ギガントプレス』は50倍ダメージのスキルってことか!!
「うごっ!! ……どぉおりゃああ!!!」
暗黒竜シュバルツのしっぽ攻撃を耐えつつ、そのまま大槌を振り下ろす。
先程よりも眩く光り、見えないしっぽを粉々に打ち砕いた!
ギュオオオオオオオオッ?!!
暗黒竜シュバルツは、しっぽが破壊されて付け根から血が飛び散り吹き出している。
更に
(チャンスです、マスター!!)
いつも冷静なタニアも、千歳一隅に声を荒らげる。
もちろん、俺もこの絶好の機会を逃す気はない。
まさに潮時だ!
「砕け散れっ!! 『ギガントプレス』!!!」
彗星がそこに落ちたかのように、凄まじい光と衝撃が広がる。暗黒竜シュバルツの胴体を貫通し、地面にはクレーターのようなものが出来るほどだ。
──勝った!
そう思った時であった。
上空から、とてつもない大きさの魔法陣が降りてきた。それは村全体を包み込むほどの、見たこともない規模の魔法陣だ。
まさか、これは?!
「まさか、四体とも倒されるなんて想像もしなかったよ。でも、これで終わりだよ?
『
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