第78話 決戦③

「ははは、ドラゴン達に気を取られて、俺の存在を忘れているな、リューマ。しかし、あの大地竜を倒すか。やはり油断出来ないな」


 自分でも倒すことが出来なかったドラゴンをこうもあっさり倒されると、少しショックなマリウス。

 しかし、今はまだ狙い通りではあるのでそこまで気落ちしていなかった。


「もう少し粘ってくれよな、俺のドラゴンたち」


 そう言って、遥か上空からリューマたちを眺めているのだった。


 ──


「ま、まずは一体。でも、あと三体もいるのか!」


(マスター、次は火炎竜バーンを狙います)


「リョーかいっ!」


 次の狙いは、敏捷が高い赤いドラゴン。さっきから炎を吐きつつ、魔法でこちらを攻撃してきている。


「くらえっ!!」


 石を投げ、瞬間にスキル『50フィフティ』を発動して広範囲に攻撃をするも、ほとんど躱されてしまう。

 何気にシュバルツの敏捷が、俺よりも低いせいで下がっている為、こちらの回避率は下がっていた。


「くー、デカい図体でちょこまかと!」


(ですが、全てを回避しているわけでは無いです、マスター)


 いくら素早くても、これだけの巨体なので当たっているのもある。しかも力が上がっているおかげで思ったよりもダメージが入っている。


「魔法を50倍に出来ないのか?」


(マスター。それは出来ますが、多分その分だけMPが消費するかと)


「一回くらいなら、問題ないんじゃないか?」


(分かりましたマスター。まだ温存しておきたいところですが、倒せなければ同じことですね。私がサポートしますので、それにスキルを、使ってください)


 タニアの精霊魔法は、俺の魔力を使って発動している。だから、俺の精霊魔法でもあるはずだ。

 それなら、スキルの効果も発動するはず!


(見えぬ刃で朽ち果てなさい。『不可視の刃インビジブルエッジ』!)


「スキル『50フィフティ』発動!

 『不可視の刃インビジブルエッジ』の刃の数を50に増やせ! 」


 すると、俺とタニアだけに見える魔法の刃が一気に50本に増える。その刃は、火炎竜バーンに襲いかかる。身体中からいきなり血飛沫が舞い、驚愕の声を上げた。


 ギュオオオオオオンッ!!


「今だ!」


 驚き、足を止めた瞬間を狙いミスリルの大槌を渾身の一撃を打ち込む!


「うおりゃあっ!!」


 ギュオオオオーー!!


 やらせまいと全身を包み込むほどの火球を吐き出す。まるで太陽を前にしたような錯覚を覚える。


(マスター、耐えきれます! そのまま突撃してください!)


「信じているぞ、タニア!

 うぐおおおおっ!!」


 熱気が全身を包む、しかしタニアの張った防壁とスキル『熱耐性』が俺を守ってくれている。

 届けっ!!


 ドゴンッと大きな音がして、火炎竜バーンの頭を打ち抜いた。

 シュヴァルツの力と平均化されたことにより、俺のちからはかなり上がっている。

 グランド程の防御力が無くても、ドラゴンとして十分に強いバーンのHPをごっそりと削り取った。

 バーンは最後の抵抗とばかりに、魔法を展開する。自身も包み込むほどの大きな魔方陣を瞬時に出現させられるあたり、やはりドラゴンは上位の存在といえる。

 次の瞬間には魔法が発現する。周りが業火に包まれてすべてを灰にする勢いで燃え盛った。


「残念だけど、俺には魔法はほとんど効かないぜ?

 これで終わりだ!!」


 頭が潰れているのに、どうやって思考しているのかわからないが、それでも抵抗するように尻尾をこちらに振りかかる。

 しかし、先ほどまでのような鋭利な攻撃速度はだせずに空振りに終わる。

 回避し続ける間にも、フロストとシュヴァルツの攻撃は止めやまない。

 俺はそれを掻い潜りつつ、ミスリルの大槌でとどめの攻撃を繰り出した。

 がら空きになっていた横っ腹に渾身の一撃を叩き込む。ゴガアッと轟音を響かせるその一撃はドラゴンの鱗を突き抜けて、その肉を爆発させた。


 どてっぱらに穴が開いたバーンはそこで力尽きて倒れる。

 よし、これで二体目だ!


【──経験値が一定に達しました。レベルが56にアップしました。各ステータスにボーナスが発生します】


 さすがドラゴンだな。経験値は半端ない。たった一体でレベルがぐんと上がる。

 この調子なら、全部倒せば60まで上がりそうか?


(ここまでは順調ですね、あとは二体ですマスター。次に狙うのは氷結竜フロストを推奨します)


「やっぱりシュヴァルツが最後か。ボスは最後ってことだな

 しかし、一向にマリウスは出てこないな」


(どうやら、上空でずっとこちらを監視しているようですね。

 ドラゴンよりも強い人間がいるとは思えませんが、マスターにように特殊なスキルを持つ場合もあるので、油断は出来ませんね)


「じゃあ、さっさと氷結竜フロストを倒そう!」


(はい、それが良いかと。氷結竜フロストは魔法に特化したドラゴンになります。

 その攻撃のほとんどを魔法に依存しているため、現在のマスターには脅威とはなりません。しかし、ダメージが全く入らないわけではないので、注意してください)


「ああ、分かった。ダメージが50に軽減さえるとはいえ、無数に散らばる攻撃とか食らったら死ねるからな」


(普通なら不可能ですが、あの氷結竜フロストなら可能ですね。マスター、気が付かれる前に全力でいきましょう)


「ずっと全力で戦っているさ。しかし、魔法が利かないのが分かっているなら真正面からいくか」


(暗黒竜シュヴァルツが、放っておいてくれるとは思いませんので、油断しないようにしてくださいね、マスター)


「了解」


 氷結竜フロストと暗黒竜シュヴァルツは俺を挟み込むように対峙する。

 下手すればお互いの攻撃に被弾してしまうが、それを気にしていないかのように攻撃をし続ける。


 暗黒竜シュヴァルツは、ステータスが下がってから魔法を主体に攻撃してきていたが、仲間の竜が減ったので攻撃を物理に切り替えてきた。

 厄介なのは、毒の霧を混ぜた爪での攻撃と、影に隠して死角からやってくるしっぽの攻撃だ。

 タニアが都度攻撃を知らせてくれなければ、とっくに死んでいるなこれ。


 一方氷結竜フロストは、氷のブレスと他方から飛んでくる氷結魔法で俺を追い詰める。魔法攻撃は食らわないけど、ブレスはまともにダメージを食らうので、『水晶防壁クリスタルガード』で防壁でガードした。

 

「このまま突っ込めば!」


 ヒュオオオオオオンッ!!

 氷結竜フロストが俺にめがけて強烈な氷のブレスを吐く。凍てつくような冷気が俺を包み込むが、まだ防壁は破られていない。これならダメージは食らわない。


「おらあああっ!!」


 ブレスを吐く口に、強烈な一撃を食らわせる。吐き出そうとしたブレスが内側に溜まり溢れ出す。


「もう一発食らっておけ!」


 怯んでいる氷結竜フロストの顎下からもう一度一撃を入れた。

 浮かびあがる、頭をジャンプしてさらに追いかける。


「こいつで止めだっ!」


 氷結竜フロストの頭よりも高く飛び、『飛翔』の魔法を使い今度は急下降する。

 その勢いのまま、ミスリルの大槌を両手で持ってまさかりのように縦に振り下ろした。


「うおりゃああああっっ!!」


 打ち下ろすまま氷結竜フロストの頭は地面に叩きつけられる。その衝撃で頭が弾け飛んだ。そのまま息絶えたのか、ピクリとも動かなくなった。


【──経験値が一定に達しました。レベルが58にアップしました。各ステータスにボーナスが発生します】

【──熟練度が一定値に達しました。スキル『打撃マスタリ』を習得しました】

【──熟練度が一定値に達しました。スキル『チャージアタック』を習得しました】


 よっし、レベルがまた上がった!しかも、なんかスキル覚えたし。これでもっと強い攻撃が出来そうだ。

 そう、一瞬油断した瞬間だった。


「うごあっ?!」


 見えない衝撃がいきなり襲い掛かってきた。今日、初めての直撃だ!


(マスター、暗黒竜シュヴァルツの攻撃です! 影がある場所から攻撃が出来るようです。今ならスキル『50フィフティ』を使ってもMPに支障がありません、使用を推奨します)


「いってぇ、でもこれであと一体。なんとかいけそうか!?

 よしわかった、使うぞ? スキル『50フィフティ』発動!

 俺に対する物理ダメージを最大50ダメージしろ!!」


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