第54話 パワーレベリング②
「はぁっ!!」
気合と共に、矢を打ち放つ瞳月。
レベルは42で、武器は弓道部の部長だけあり弓矢だ。
彼女は星香と違い、矢を使わない。
正確には、スキルで作った矢を放って攻撃するのだ。
その為、矢を補充せずに延々と射続けられる。
体力とMPが尽きなければね。
どうやら矢を作るのに、MPが必要なのだ。
その為、MPが尽きればそこで終わり。
流石に予備の矢は持っているけど、威力は落ちるし消耗も激しい。
そんな瞳月が戦っている相手は、フレイムリザード。レベル38の火を纏うトカゲの魔物だ。
天井を素早く這い、上から火の玉を吐いてくる。
油断をすれば、あっという間に黒焦げだ。
的として小さく、素早いために狙いにくい。
その為、高い集中力と一撃で仕留める命中率が必要だ。
しかし、流石は弓道部の部長だな。全て頭を射抜いて仕留めている。
しかし、全てスキルの氷の矢を使っている為、こちらもMPが足りなくなりそうだ。
氷の矢が何本も天井に刺さっているのを見ると、当てるタイミングには苦労しているみたいだな。
ただ被弾はしていないし、絶妙な相手を用意しているな。タニアは凄いな。
考えたら、アークデーモンからコアを引き継いでいるのだから、レベルもそれに近いのかな?
「ちなみにタニアのレベルはいくつだ?」
「私は……。マスター、私と意識を接続すれば私の情報やダンジョン内の情報を見れます。
『
そんな便利な機能があるのか!?
これは使わない手はないな。
「いいね、もちろんYESだ」
【タニアと
「なんか出た?
これはダンジョン内のマップだな。
みんなのいる場所やレベルまで分かるな」
そして、肝心なタニアのレベルは……。
「あれ、レベル50?」
「はい、マスター。私のレベルはマスターと連動します。マスターがレベルを上げれば同時に上がります」
「そういうもんなのか。
え、じゃあ魔王のレベルって80くらい?」
「……それは機密事項のためお教え出来ません」
「ええー、魔王ってずるいな」
さて、言っても仕方ないので自分のことを考えようか。アークデーモンでギリギリだったわけだし、この先は勝てない相手も出てくるだろう。
それこそドラゴンとかね。
だから自分のレベルを上げたいのだけど、これまでかなりの数の魔物やら魔獣を倒しているのに上がる気配がない。
ゲームと違って次のレベルまでどのくらいの経験を積む必要があるのか表示されない。
また魔物を倒した時にどのくらいの経験値が入ったとかも分からないのだ。
まさか、スキルで上げたからこれ以上上がらないとかないよね?!
「なぁタニア、俺のレベルが全然上がらないのだけどなんでか分かるか?」
「少しお待ちくださいマスター。
……、マスターは何故だか分かりませんが本来レベル50に至る経験を積まれていないようです。
魔物には生まれた時に高レベルで生まれた魔物と同じ状態です。マスターは本当に人間ですか?」
サラッとディスられた気がするが、原因はやっぱりスキルで無理やりレベル上げたせいだったか。
ということは?
「じゃあどうしたらレベルが上がるんだ?」
「1レベルの人間が51に至るだけの経験を積めば上がると推測されます」
「やっぱりそうなるか」
こりゃ、思ったよりも大変そうだぞ。
一体どれだけ倒せばいいのやら。
「マスターのステータスなら、格上の魔物を楽に倒せます。なので私が出せる最高のレベル魔物を沢山倒しましょう」
そういうと、魔物を一気に五体出現させるタニア。うん、どう見ても悪魔だな。
「デーモンを五体創りました。
さあ、始めましょうマスター」
「俺だけ多くない?」
「……いいえ、適正ですマスター」
「はい、そうですか」
こうして、俺のパワーレベリングが始まったのだった。
五体もいるから、五月雨に攻撃がやってくる。
魔法やら槍やらメイスやらで次々と繰り出された。
「あー、鬱陶しい!!」
辺りには俺しかいないので、俺も全力で戦う。
最初は黒斧で一体づつ倒していた。
しかし、最初の五体を倒した後にタニアに言われる。
「
効率を重視してください、マスター」
と言われてしまう。
一撃で倒しているのに、過剰なのか?
ダメージが多すぎるってことか?
それなら、いつものこいつがいいのかな。
そう思って、小石を一個づつ投げつけた。
たった一個の小石で、デーモンの頭が木っ端微塵に吹き飛ぶ。
それを五回繰り返して、倒すとまたタニアから言われてしまう。
「遅いです、マスター。
もっと効率を重視してください」
「いや、これ以上早くってまだ魔法すらないのに。スキルだって俺のは攻撃には……」
そこでふと気がついた。
そういや、なんでも一発で倒せちゃうからスキルを攻撃に使ったことはないよな。
スキル『
それなら、スキル『
自分、もしくは自分の所有しているものを50にするスキル。
その対象の幅は思った以上に広い。
しかも、効果は即時に現れるという意外と壊れたスキルだ。
同じ対象には一回しか使えないが、これならどうだろ?
「くらえっ!」
小石を一つ握って、投げる瞬間にスキル『
頭の中に例のアナウンスが流れるが、直ぐに消える。
そして50個の小石になり、辺り一面に散らばる。
ドガガガガガガガガガガッ──!!!!
全面にあるものを全て破壊しつくす散弾となった小石。
ダンジョンの壁まで破壊し土煙がもうもうと立ち込める。
視界が元に戻った時には、デーモンの姿はなくその残骸らしき肉片が散らばっていた。
「うわっ、何これ……。
つかこれこそオーバーキルじゃ……」
「流石ですマスター!!
ダンジョンはいくらでも修復出来ますので、ドンドンいきましょう!! 数も増やしますよっ!!」
何故か目を輝かせて、息を荒くするタニア。
いや、ちょっとテンション上がりすぎじゃない?
てか、いいよって言う前に召還しているし!
いきなり十体に増やすなよっ!
あーもー、やってやんよ?!
こうして俺がいるフロアだけ、戦闘機が絨毯爆撃でもしているかのような音が延々と響き渡るのであった。
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