第53話 パワーレベリング①

 さて、早速ですがレベル上げの時間だ。

 今日は初日だし、午前中だけにしよう。

 午後はダンジョン内の探索をしよう。


 昨日は結構急いで回ったから、細かいところ見れてないからな。

 それに、もしかしたらいい鉱石が取れるかもしれないし。


「タニア、ダンジョン内でも鉱石は採れるか?」


「はい、もちろんです。マスター。

 特に最下層付近ではミスリルなどの希少鉱石が産出されます。多く取れる場所などは案内出来ますので仰ってください」


「おお、タニアは優秀だな!」


「そ、それほどでも……。コアを持つものなら誰でも可能なことです」


 表情はいまいち分からないけど、照れているのか?魔物にも感情があるんだなー。

 しかし、思わぬ所で資源の確保が出来そうだ。

 ミスリルが沢山採れれば装備も充実出来るし、資金にも出来る。こっち来てからなんかツイているな。


 鉱床が判明しているなら、焦らないでいいな。

 予定通り経験値稼ぎをしよう。


「よし、では先に経験値稼ぎしたい。

 タニア、魔物を創ってくれるか?」


「承知しました、マスター。

 では、皆様に最適な魔物を創りますので鑑定の許可をしていただけますか?」


「えーと、みんなはいいか?」


「はーい、大丈夫だよ!」

「はい、私もオッケーです」


 鈴香と明日香は即答でオッケーだった。

 しかし、星香と瞳月がここで渋った。

 二人で何かを話してから、俺に話しかけてくる。


「あの、川西さん。お言葉ですが、鑑定した内容が魔王に伝わるのでは?」


「瞳月の言う通りですわ。確か、タニアは魔王と連絡を取り合っていると言ってましたわね?

 流石にステータスの詳細が伝わるのはまずいのでは?」


 あー、確かにそうか。

 俺はともかく、人類の味方として呼ばれている勇者のステータスがバレたらマリウスがキレそうだな。


「タニア、魔王に内緒に出来るか?」


「少しお待ちください……。

 魔王様は、既に把握済みだから興味が無いそうです、マスター」


 なんだって!?

 つか魔王ってやっぱ凄いな。会ってもいないのに分かるのかよ。


「今後、皆さんの情報について特に報告の義務を課さないと仰りました。

 その為、マスターのご命令であれば特に報告はいたしません」


「じゃあ、それで頼むよ」


「承知しました、マスター」


 あとは信じるしかないわけだが、どうだろうな。

 星香と瞳月は信用はしてないし。


「どうする?星香、瞳月」


「レベルだけ伝えて、それで相手を用意してもらうのは可能ですか?」


「……はい、可能です。

 ただ、見誤る可能性がありますので最適より低い相手を用意しますがそれでいいですか?」


「ええ、それで構わないわよ。

 星香もいい?」


「ええ、私もそれで良いですわ」


「よし、決まりだな。

 ミィヤはどうする?」


「ミィヤは見られても問題ない。

 それに皆ほど強くないから、今更だよリューマ」


「そっか、それなら俺とミィヤ、あと鈴香と明日香の鑑定してくれ」


「畏まりましたマスター。

 ──『鑑定』」


 まずは、ミィヤ。レベル28と以前よりも大分上がっていた。

 昨日戦ったおかげかな?

 戦う相手はコボルトナイトという、青銅の鎧を身につけたコボルトだ。

 レベルは25だが、武器と盾を装備した相手に生身で戦うのだからただレベルが高いだけでは勝てる相手ではない。


 しかし、レベルが低かったとはいえ冒険者だったミィヤは、俺の予想を超える戦いぶりだった。

 素早く動き、コボルトナイトの視覚を翻弄する。

 さらに死角から急所を狙うことで、たった二、三回の攻撃で圧勝していった。


 いや、見惚れるほど美しい動きだったよ。

 全ての攻撃をさらりと受け流し、隙を晒した瞬間に急所へ的確に攻撃だ。

 傍から見てると、戦いながら舞っているようだった。


 次は明日香。レベルは42だ。

 武器はオールドトレントから出てきた、トレントの棍だ。

 木材の筈なのに、鉄のように硬いので武器を弾き返せる優れもの。

 戦う相手は、オークジェネラル。レベルは40だ。


 巨大な斧を持ち、一撃でも当たれば大怪我では済まなさそうだ。持ち前の怪力で、それを軽々と振り回すので間合いに入るのが難しい。

 しかし、それをトレントの棍で受け流しガツガツと攻撃する明日香。

 それを何回も繰り返し、徐々に体力を減らしていく。

 突き、払い、殴打を華麗に繰り出す明日香は雑技団のようだなと言ったら、『私は新体操選手です! 出来ればバトンが欲しい~』と文句を言ってきた。

 うん、今度シドンに聞いとくね。


 鈴香のレベルは45。前衛だし積極的に戦っていたので一番レベルが高い。うかうかしていると、越されそうだな。

 俺のステータスは越えられないだろうけどね。


 それでも力が1000を超えていたので、一撃がかなりの威力を発揮する。

 そんな鈴香の武器は鉄甲と鉄脚。

 手のグローブと足のシューズの甲に鉄板が貼られていて、殴ったり蹴ったりして攻撃する。

 剣や槍も扱えるみたいだけど、直接叩き込む方が性格にあっているらしい。


「でや〜、とおおっ!!」


 戦っているのはトロール。レベルは41。

 大型の魔物で、オークの倍くらい大きい。

 しかもその肉体は筋肉がぎっしり詰まっていて、天然の鎧となっている。


 中途半端な攻撃なら、効かないどころか自分の方が痛いだろう。

 しかし、その鎧を突き抜けるほどの威力を鈴香は繰り出す。


「はっはー! 唸れ私の拳ーー!!」


 傍から見たらふざけているようだが、体がめこりと凹んでトロール吹き飛んでいくので本気で戦っているみたいだ。

 なんか拳が青く光っているし、あれが鈴香のスキルなのかも。


 しばらく様子を見たけど、三人は問題なさそうだな。問題は星香と瞳月だな。


 星香の武器は薙刀だ。弓も使えるけど消耗するのでレベル上げには向かないのだ。

 レベルは45とそこそこ上がっているな。

 魔法も使えるらしいし、それほど前に出てなかったのかな?


 敵はレッサーデーモン。レベルは37。

 肉弾戦もそこそこ強いが、魔法を得意とする厄介な悪魔だ。


 殆どの戦いを一撃で終わらせていた俺は、魔物が魔法を使うところを殆ど見ていない。

 まともに食らったのは、あのアークデーモンが初めてだ。


 お、ちなみにだが。

 レッサーデーモン、デーモン、アークデーモンの順に強くなっていくらしいよ。

 デーモンですらレベルは50以上あるらしい。

 アークデーモンのレベルは80以上だってさ。

 さらに上のデーモンロードなる悪魔がいるみたいだけど、それらは個体名を持っていてレベルも強さもバラバラということだ。

 もちろん、アークデーモンよりは確実に強い。


そんな最下位の悪魔でも、人間にとっては脅威になる強さをもつ。

 炎や氷の矢を魔法で放ち、隙あらば手に持つ剣で切りつけてくる。


 星香はそれでも、魔法の防壁を作り身を守ることで武器の攻撃だけに集中しているみたいだ。

 しかし、これでは……。


「うっ……。魔力の消費が激しいですわ」


 そう、MP切れで連闘するのが難しいのだ。

 かと言って、武器だけで倒せる相手ではレベルが低くて経験値があまり入らずどちらにしろ効率が悪いのだった。


 これは考えないとなだな。


 そして、瞳月の方も……。

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