第52話 正しいダンジョンの使い方
さて、暇になったので坑道に向かったわけだが、そこで見知った顔に出会った。
坂本、須崎、藤村、武藤の四人組だ。
昨日は結構遅くまで冒険者に囲まれていたし、ダンジョンも強行進行していたみたいだから結構疲れてが溜まっていたみたいだな。
先ほど起きたような顔をしている。
「あ、川西さん。おはようございまーす」
「ああ、おはよう。ってもうすぐ昼だけどね」
須崎がこちらに気が付いて挨拶してきた。
藤村と武藤も続いて挨拶してきて、ばつが悪そうにしながらも坂本も続いた。
「お、おはよう……ございます。
えっと、昨日はありがとうございました」
ん、今の幻聴だろうか?
坂本から俺が感謝されるだと?!
「え、何を変な顔しているんだよ。
そりゃあ、色々と気に食わなかったから突っかかってきたけどさ。
でも、結局助けられてしまったし」
といいつつも、まだおでこが痛いのか無意識にさすっている。
やっぱ、あれは結構効いたんだな。心身ともに。
「それに本当は俺達、最後のボスの二匹にやられちゃったから、攻略出来てないのに俺らも一緒に攻略したことにしてくれたし。
悔しいけど、俺の完敗だからもう用務員……じゃなかった、川西さんには盾突かないよ。マジでつえーし」
「うーん、まぁ。お前たちが戦ってたのはボスじゃなかったけどな」
「へっ?! いや、だってそれまでのとは全然違う強さだったぜ? どの攻撃してもほとんど効かなかったし」
そうか、あの後気を失ったから見てなかったのか。ミィヤ曰く、俺の今のステータスはドラゴン級らしいから、それよりは弱かったというわけだな。
そして俺と攻撃力が拮抗してたアークデーモンは、ドラゴン並に強いということか。あれはやばかったな。
「あー、なるほどな。確かに強かったかもしれないけど、あの二体倒した後に出てきた、アークデーモンていうのがダンジョンのボスだったんだよ」
「んな、マジかよ。あれより強いとか、どっちにしろ無理だったじゃないか」
「あなた達。川西さん来てなかったら、本当に死んでたんだからね? 本気で感謝した方がいいよ?」
少し怒り気味で目をキッとさせて瞳月が言う。
クールな見た目で言われると、かなり堪えるよな。俺なら凹むわ。
そして、坂本もそれは同じようだった。
「……川西さん、本当にありがとうございました!
あと、今まですみませんでした。流石に頭が冷えたのでもう少し考えて行動します」
「おう、そうしてくれ。それに力づくで女性を物にしようとする考えも辞めた方がいい」
「は?いや、流石にそれは!
いや、近くでカッコイイ姿見せたら、惚れられてモテるとか思ったけども」
あれ、そういうこと?
こいつ思ったよりはまともな奴だったのか。
まさか、好みの女の子を連れてかれて怒ってただけなのか?
まともと言うか、子供っぽいというのが正しいかも。
「はぁ、貴方ね。そんなことで靡く女子なんて、うちのクラスにはいないわよ?」
「確かに瞳月の言う通りですわ。
それよりも、誠実に真剣に人のために頑張れる人の方が魅力的に映ると思いますわ。
例えば、川西さんみたいにね?」
そう言って、ミィヤの方を見る星香。
なるほど、ミィヤが俺を好きな理由はそれだと思っているということか。
「そう、リューマは私の村を命懸けで救ってくれた。そして、誰よりも強い。
強いだけではダメ」
「まー、坂本は元々モテないからねぇ。
女バスのメンバーには不人気だったし!」
そこで鈴香がトドメをさす。
流石にクラスメイト以外にも不人気とか、知りたくないよな。
その気持ちだけは、俺は分かるぞ。
まだ若いんだし、頑張れ!
「お、俺って一体……」
「さ、坂本。女子にモテるためにも、これから頑張ろうぜ、なっ?」
須崎がフォローを入れるも、既に轟沈してるようで耳に入らないようだった。
「ああ、そうだ。お前たち先に帰るんだろう?
だったら響子ちゃ……鈴木先生に俺らは無事で、一週間くらいで戻ると伝えておいてくれ」
「あ、はい分かりました。必ず伝えますね」
そう言って、坂本を連れて既に須崎達は帰りの馬車が出る場所へ向かっていった。
「さーて、俺らはタニアのとこへ行こう」
「お呼びですかマスター?」
「いや、お前の本体に会いに行こうかと」
「なるほど、では扉の前まで来てください」
いきなり現れてビックリしたけど、そういや分身がいるんだった。
どこからでもダンジョン内に戻れるのかと期待したが、出口と入口は同じ場所らしい。
ひんやりした坑道を歩きつつ、最深部へ向う。
村の英雄ということで、入坑料は取られなかった。入坑税は貰うよって言っていた。
まだ坑道内に魔物がいるかもしれないということで、調査が完全に終わるまでは坑夫は入れない。
ダンジョンはなくなったけど、冒険者の仕事はまだあると喜んでたな。
「着いたぞ?」
「……私達以外、周りに人はいないようですね。
ではマスター、皆さんを最深部へ転送します」
「頼む」
すると足元が光り、魔法陣が浮かび上がる。
そして、次の瞬間には最深部へ移動していた。
「凄いです、本当に一瞬でここへ来れるのですね」
「魔法でもワープするようなのは無いって言ってましたよ。ゲームなら良くあるから、もしやと思ったのに残念でした」
「明日香ちゃんも、ゲームなんてするんだね!」
「鈴香程じゃないけど、新体操の試合とか終わった後とかにちょっとね」
てへへと笑いつつ話す明日香。
最近はみんなゲームをするから、照れることじゃない気がするけど。
それよりも、ワープが無いって話の方が重要だ。
ということは、タニアの言う通りに拠点を増やせば俺だけワープと同じ使えるというわけだ。
これは凄いことだぞ。
「タニア、やっぱりワープの魔法はないのか?」
「ワープ? ……、先ほどの転送のことでしょうかマスター。
それであれば、詠唱する魔法では使えません。
先程利用した魔法陣でなければ無理です。
また、この魔法陣は特別な魔族しか使えない特殊なものです」
「おお、じゃ人間には使えないってことか」
魔族って何だろうと思いつつ、現状自分くらいしか使えないが分かって喜ぶ。
このダンジョンとタニアを手に入れたのはかなりラッキーだったようだ。
ついでに、ダンジョンの機能について聞いておこうか。
「なるほどな。
ついでにだけど、ダンジョンマスターって何が出来るんだ?」
「マスターは、ダンジョン内を自由に変える事が出来ます。例えば、地下二階と地下三階の構造を入れ替えたり、ダンジョン内に落ちている物を回収するなど出来ます。
また、ダンジョンコアである私に蓄えられた魔力を使って魔物を創ることも可能です」
「魔物を創れる?!」
「はい、マスター。
その魔物を倒せば、経験値を手に入れるのが可能ですので、レベルを上げる為には最適です」
それはいいな。
ミィヤのレベルをもう少し上げたいし、何故かあれ以来変わらない俺のレベルも上げておきたい。
「よし、今日はレベルあげをしようか」
こうして俺達は、貸切ダンジョンでレベル上げをするのだった。
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