第51話 シドンからの報酬
昨日はめちゃくちゃ飲んだな。
流石に未成年が寝泊まりする部屋に、酒臭いまま戻るのはどうかなと考えてたら、ウルナが寄ってきて。
「お客さん、ベットは一つだけど一部屋空いてるよ?安くしとくけど?」
と耳打ちしてきた。
もちろん快諾して、お金を払って借りましたよ!
そしてミィヤも酔っ払ったままついてきて、朝まで存分にイチャついてやりました!
ええ、それはもう存分に!
「オッチャンとミィヤは部屋に帰ってこなかってけど、どこ行ってたの?」
「ああ、酒飲んで酔っ払ったから別の部屋で寝てたんだよ」
「二人で……ですか?」
俺の鈴香への返答に、何故か顔を赤くして聞いてくる明日香。まぁ、お年頃だし想像しちゃうよな。
「もちろんさ。だって俺の奥さんだからね」
「はっ、そうでしたね。あははははっ」
しかし、この程度の会話で耳まで真っ赤とか、随分とうぶなんだな。
瞳月まで俯いてしまい少し気まづさが出ていたので話題を変えようか。しかし、この子達は本当にすれないで生きてきたんだな。いい子達だ。
「この後は、シドンに会いに行くぞ。
早く色んな金属を手に入れて、店の準備しないとだからな」
「あっ、そういえばそうでしたね。
響子先生も心配しているかもしれないし、早く帰らないとですね」
響子ちゃんには目的地を伝えてあるけど、ここに四人が来るのは知らないからな。
いや、坂本達をいれれば八人か。
心配性の彼女のことだ、いないのを知ったらヤキモキしてそうだ。
朝食が終わり、シドンに会いに外に出た。
昨日のどんちゃん騒ぎですっかり顔を覚えられてしまい、会う人会う人に挨拶される。
うーん、目立つ見た目ではないんだけどなぁ。
あ、これだけ女子を連れていれば目立つか。しかも、みんな美人だし。
そういや、あの私立高校の生徒って比較的顔面偏差値高いよな。
やっぱ金持ちってのは、美人やイケメンと結婚するってことだな。チクショー、俺の顔面偏差値も『50』だったよ。
まぁ、高校時代の話だけど、ゲーセンに置いてあったやつで測ったら見事に50だったわけ。速攻クラスのみんなにバレてあだ名がついたくらいだからな。
そんな苦い思い出も、今ならミィヤに出会えたお陰で笑い話に出来るぜ。
この子は俺の女神様だな。
そんなことを考えていたら、あっというまにシドンの工房についた。
相変わらず熱気が凄いが、俺には『熱耐性』スキルがある。だから少し暑いくらいにしか感じない。
他の子達は額に汗を浮かべつつも、我慢してついてきた。
うーん、このスキルを他人にも使えればいいのにな。自分か自分の所有物にしか効果がないのが残念だ。
「来たか英雄」
「英雄じゃないよ、俺はただの用務員おっさんだよ」
「なんだヨウムインっていうのは?」
「はは、細かい事は気にするな。
様子からしたら、ダンジョン攻略したのを知っているみたいだな」
「ああ、ウルナから聞いたぞ。ったく、調査しか出来ないみたいに言っていたのに、しっかり攻略しているじゃねーか。もったいぶりやがって」
そういいつつも、その顔は嬉しそうだった。
そりゃそうか。これでまた鉱石が沢山採れるようになるんだ。シドンも仕事を再開出来るようになるだろうからな。
「預かってた鉱石だが、中々良質な素材が多かった。
溶かしてみたら、ここ数年で一番ミスリルが混ざってたぞ」
「ミスリルって、貴重な金属の?」
「ああ、別名精霊銀と言ってな、魔力が通りやすいだけじゃなく、持っているだけで精霊に好かれるんだ。こいつで出来た武器を持つ事が冒険者の中では一つのステータスになっているんだ」
「おお、それはいいな。
ちなみに精霊に好かれると何がいいんだ?」
ファンタジーではお馴染みのミスリルだけど、実際に使うとなると何がいいのか分からない。
その世界の設定によって効果がマチマチだし、意外と統一性がないからな。
「精霊に好かれれば、精霊と契約が可能だ。
例えば俺は火の精霊サラマンダーと契約している。
そして、精霊と契約すればこの通り『火の玉』!」
ぽわんとシドンの手の平に火の玉が浮かび上がる。
え、これって魔法?
「本来なら、魔法は魔術書読んで習熟してから使えるもんだが、これは精霊術だから自分が覚える必要がない。魔力があれば、精霊を通して魔法を行使できるんだ。
ゆえに、精霊に好かれるということは、魔法を覚えなくても魔法を使えるってことなんだ」
「おおおお、まじか!」
これで俺も、夢だった魔法が使えるかもしれないぞ。
魔術書はとてつもなく高いらしいし、資質がなければ読んでも覚えれないらしいからな。これなら俺でも魔法が使えるようになる。
「ただ、どの精霊に好かれるかはソイツ次第だ。
まぁ、精霊が多い場所を探して根気よく来てくれるのを待つしかないがな」
「ちなみに、今回採れたミスリルでどのくらい武器が作れる?」
「そうだなぁ。普段よりは沢山採れたとはいってもそもそもが希少なんだ。
せいぜい大きい武器が一本に、小型のものが一本かな。
他の金属と混ぜれば数人分の武器は作れるが、それだと精霊を喚ぶほどにはならんぞ」
うーん、今後を考えたら俺用に一本は欲しい。精霊呼べるミスリルだけのやつね。
本当なら鈴香達全員に渡したいけど、また掘ればいいか。
だとしたら、ミィヤの強化が先だな。
「じゃあ、ミスリルのハンマーとナイフを作って貰えないか?
もちろん、シドンなら鍛冶も出来るんだろ?」
置いてある道具を見ればわかる。鉄床(かなとこ)や金槌、そして鍛冶炉がある。
昔、ゲームで使った物と一緒だから、多分合ってると思う。
であれば間違いなく溶鉱だけじゃなく、鍛冶もやっているはずだ。
もさ、鍛冶屋として有名なドワーフが、俺に武器を造ってくれるならこれほど幸運な話はないだろう。
「はんっ、誰に向かって言ってる。
これだけ貴重な素材使うんだ、俺が打つに決まっているだろう?
それに、お前は村を救ってくれたからな。溶鉱も鍛冶代も特別にタダにしてやるよ」
「おお、マジか! ありがとうシドンそりゃ助かる。
出来上がりを楽しみにしているよ」
気難しそうなドワーフが武器を造ってくれるだけでも有難いのに、代金をタダにしてくれるだなんて頑張った甲斐があったよ。
「出来上がりには、三日はかかる。
それまで、村でゆっくりしているといい。
まぁ、気が向いたら鉱石を掘ってくれると村の方も助かるがな」
ガッハッハッと笑いながら言うって事は、掘ってこいということか。
しばらくは暇だし、鉱石掘るのも悪くないか。
あ、そうだ。
魔物がいなくなったダンジョン内を探索するのもありだな。
貴重な素材があるかもしれないし。
シドンに感謝を述べてから別れ、そのまま坑道へ俺達は向かうだった。
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