第47話 ダンジョンマスター
坂本は須崎達に任せて、ボス戦の戦利品を確認しようか。
ゴーレムとグリムリーパーは壁に吸収されてしまったので跡形もない。
その代わりにアークデーモンからは、いくつか手に入ったのだ。
まずは武器として使っていた大鎌だ。
これはグリムリーパーと同じものだし、元はグリムリーパーのものかな?
それ以外には、アクセサリーが数種類。
不思議な光を放っているので、何かしら魔法が掛かっているだろうと星香が言っていた。
あとは宝石とか変わった色の鉱石とか沢山落ちているので全て魔法袋に入れてもらう。これらはドワンゴ村に戻ったら鑑定する予定。
価値があるものだといいなぁ。
さて、一番謎の黒のオーブだがずっと途切れた道を照らし続けている。
罠だったら怖いので、撤退する準備を先に整えてから確認する手筈だ。
「さて、みんないいか?」
「うん、オッケー」
「リューマとなら、いつでもいいよ」
「それ、なんか変な意味に聞こえるぞ」
「ふふ、リューマのえっち」
悪戯っぽい笑みを浮かべて言うミィヤ。
絶対わざとだよね?
しかし、こんなとこでイチャついてるわけにもいかんのですよ。
それは帰ったらね?
さて、やる気も復活したことだしサクッと調べて帰ろう。
光を辿って、ゆっくりと壁に近付く。
どう見ても行き止まりなんだが、この先に何があるんだ?
「あのー」
ここで須崎が水を差す。
口を出せる雰囲気じゃないのは分かっているが、言わずにはいられなかったようだ。
しかし、それは俺にとって吉報となる。
「なんだ、言ってみろ」
「俺は『
部屋がある?
いや、行き止まりにしか見ないけどな。
この萎んだような壁の先に、まだ部屋があるって言うのか。
試しに黒いオーブを近ずけても変化なし。
手で壁を押してみても、動く気配はない。というか壁硬いな。
「リューマ、壁破壊したらいいんじゃない?」
「そうそう、オッチャンならドッカーンといけるよ!」
二人は俺をなんだと思ってるんだ?
しかし、このままでは拉致が明かないのも事実だ。だったらやるだけやってみるか。
でも、流石に素手は痛そうだし……。
そうだ、さっき変な鉱石出たしあれを投げよう。
金属なら後で溶かして使うし問題なし。
「鈴香、さっき拾った変な色の石だしてくれ」
「ん? あー、さっき拾ったヤツね。
ほい、これどうぞー」
子供の頭ほどの大きさの鉱石を右手に持ち構える。
「みんな危ないから、ちょっと下がってて」
俺の言葉に従って、全員俺からかなり後ろまで下がる。
須崎達は何が起こるんだと頭にハテナを浮かべていたが、このあとすぐに分かるだろう。
まぁ、壁壊せなかったら口笛でも吹いて誤魔化そう。吹けないけど。
「せーの、どりゃあ!」
やりすぎるとどこまで飛んでいくのか分からないので、気持ち控えめでの力で投げた。
それでも、ビュオオッと風を起こしてしまう。
ドゴンッガラガラガラゴロンガシャンッ!!
うん、それでもかなり飛んでいったな。
「は、はぁっ!? 本当に石投げただけで壁が粉々じゃんか。川西はバケモンかよ」
「ば、馬鹿! 聞かれたら殺されるぞっ」
「坂本のやつ、喧嘩売る相手間違えてるよな」
と須崎、藤村、武藤がコソコソ話(?)をしている。いや、丸聞こえですけど?
バケモノ扱いは心外だけど、男子相手ならナメられるよりはましか。
女子と違って、ガキンチョだからな。なんせ俺もこの時期はそうだったからな。みな似たようなものだ。
「よし、いい機会だから言っておくぞ。次に俺が巻き込まれるような悪さをしたら、ああなって貰うからな?」
そう言って、崩れた壁を指さすとミィヤ以外の全員がコクコクと頷いた。
いや、須崎達は分かるんだけど何故に星香達まで頷いたんだ?
ちょっと距離が出来たみたいで、オジサン哀しいよ。
さて、気を取り直して新しく現れた部屋に入るか。中はランタンがなくてもいいくらいに明るい。
その理由はすぐに分かった。部屋の真ん中にある機械の様なものが光を放っているからだ。
その装置の隣には、粉々に砕けた水晶の欠片が散らばっている。
あ、やべ。勢い余って何か壊したか?
み、見えなかったし仕方ないよね。
「これは……」
さこで星香に発見されてしまった。
ちゃうんです、わざとやないんです。
「クリスタニアの亡骸でしょうかね」
ん、亡骸?
「これって、魔物なの?」
「はい、同じ魔物を試練のダンジョンで見たことが有ります。確か、ゲートの守護者だったと思います」
「なるほど、じゃあ結果オーライか」
「はい、そのようですわね」
じゃ、いいか。
細かいことは気にしない!
あ、でもせっかく倒したのだし、ガラスとして使えそうだから拾っておこう。誰か加工してくれるかもしれないからね。
そう思って近づいた時だった。
黒いオーブが強く光った。
それに反応して、カタカタカタとクリスタニアの破片が動いている。
「な、なんだ??」
すると、破片が浮き上がりこちらに襲いかかって……、来なかった。
それどころか、黒いオーブも宙に浮かび上がる。
そして破片はオーブに集まって、カッと光った。
突然の事に思わず目を瞑り、目を開けるとそこには一体の魔物が現れた。
「げっ、復活した?!」
予想しない出来事に身構えるが襲ってくる気配はない。
ゆっくりとこちらを見ると、その場に膝まづいた。
「初めましてマスター、私はこのダンジョンの管理者を務めますクリスタニア。まずは私に固有名を授けください」
「へ? マスター??」
「これは……、川西さんが魔物の主になったということでしょうか?」
「オッチャン、魔物まで仲間にするとか凄いね!」
凄いねとか言われても、頭が追いつかないんだけど。あの黒いオーブは、魔物を復活出来るアイテムだっとか?何がなんだかだな。
「えっと、その前に質問していいか?」
「私に固有名を授けてください」
「いや、だから質問をだな」
「私に固有名を授けてください」
駄目だ聞いちゃいない。
固有名って、名前を付けろってことだよな?
いきなり言われても、俺のセンスのなさは自他認めるほど酷いからなぁ。
うーんうーん。クリスタニアか。
「じゃあ、タニアね」
「安直ー」
「なんというか、ありきたりですわね」
ほらっ、やっぱり!
だから嫌なんだよな。
「畏まりました、私は今からタニアです。
これで、このダンジョンのマスターは貴方様になりました。
今後とも、よろしくお願いしますマスター」
こうして、俺はダンジョンのマスターになったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます