第37話 ドワーフへ会おう

 さて、すっかりリフレッシュしたので朝食を済ませてみんなで出かける。

 目的地は鉱石を溶かす為に、溶鉱炉を持ってる製鉄所だ。

 製鉄所とは言っても、小さい工場くらいの規模らしく、各親方が自分たちで工場を作ったものが点在している。


 俺たちは、鍛冶屋のマッチョ親父に紹介して貰ったシドンという男を探した。

 女将に聞いたら、なんと親戚だと分かった。


「ちょっと待ってな」


 と言うと、サラサラと地図と手紙を書いて渡された。

 何やらドワーフの文字で書かれているらしく、俺には読めなかったが……。


「こういうのって、異世界特典で読めるんじゃないのか?」


「多分、喚ばれた国の言葉だけ分かるのでは?」


 星香もその手紙を見て、読めないのを確かめるとそう予想した。

 それを裏付けるようにミィヤが教えてくれる。


「ミィヤ達は、人間と同じ共通語を使っているからな。種族が使っていた古代文字は私も読めない」


「なるほど、そういう違いなのか」


 なんの苦労もせずに一国の言葉が話せる&読めるだけでも、かなりのチートだからな。贅沢言っても仕方ないか。


 そんな訳で、辿り着いたシドンの工房。

 中からは熱気が溢れていて、外にいてもじんわり汗をかくほどだ。


 なるほど、これはかなりの温度だな。流石は、鉄を溶かす設備という感じだ。


「すみませーんっ!!」


 ゴオオオッ!!と音が絶え間なく響く中では、普通の声では届かないようだ。

 なので、大きな声で再び声をかけた。


「すみませんええぇぇえっっんんんっ!!!!」


 建物全体がビリビリと振動する程の声で呼びかけた。

 何故かミィヤ達が恨めしそうに涙目で睨んできているが気のせいだろう。

 ついでに言えば、鈴香には平手で背中を叩かれた気がする。

 なんか、ヒリヒリする。うん、気のせいだろう。

 でも次からは、先に大声を出すと言ってからにしようと決めた。


 さて、シドンは出てくるかな?

 そう思っていると、奥からドタンドタンと足音を立てて走ってくるオッサンが見えた。

 うん、俺もオッサンだけどよりオッサンだわ。

 髭とかぼうぼうで、顔に年季の入った皺があるからね。


 そういや、俺の顔のシワってこっち来てから無くなったな。

 これも異世界特典だったのか?

 気が付いたら転生してたわけだし、それくらいはサービスして欲しいところだ。

 まぁ、シワが無くたって大した顔じゃないんだけどね。

 顔も平均点ってやつさ。

 言ってて悲しくなってきたので、早く来てくれないかな。


「誰じゃ! バカでかい声を出した大馬鹿もんわ!」


 なんか怒りを顕わにしている、オッサンドワーフがやってきた。

 おお、親戚というだけあってちゃんとドワーフだな。

 深緑の肌でごっつい腕と足。

 厳つい顔には立派な髭をたくわえている。

 正に、ドワーフ!


「なんだお主、気持ち悪い顔で見おってからに」


「あ、すみません。ドワーフだなぁと思って」


「なんだお主! ワシを馬鹿にしに来たのか!?」


 おっと、心の声をそのまま出してしまっていた。

 いやー、ファンタジーの定番であるドワーフを見て興奮していたようだ。

 女将のウルナは、女ドワーフだったし結構可愛い顔をしていたので、イメージと違ったんだよね。

 でも、目の前のドワーフはイメージ通りというわけだ。


「違います違います。実は、城下町の鍛冶屋の店主からの紹介で来たんです。

 あと、ウルナから手紙を預かってきましたよ」


 そう言ってウルナから受け取った手紙を渡す。

 すぐに受け取って手紙を取るシドン。

 読みながら何かに驚き、俺と手紙を交互に見ている。


「ここに書いてあることは本当か?」


「えっと、俺はドワーフ語は読めないので書いてある内容を知らないんですけど」


「……そうだったか、すまぬな。ここには、ドワンゴ村で暴れていた冒険者を一撃で倒したと書いてある。姪が言うには、ここ最近何度も酒代を踏み倒されて困っていたらしく、とても助かった。恩人だからお願いを聞いてあげて欲しいとな」


「姪って、ウルナの事? じゃあ、宿屋のオーナーと兄弟ってことか?」


「ああ、そうだ。宿屋のオーナーがワシの弟だ。

 あいつに似ず、ウルナは良く出来た娘だ」


「なるほど。オーナーには会ってないですが、ウルナはとても良い人ですよね」


「うむ、そうだろう?

 で、これは本当なのか?」


「えーと、あの絡んできた冒険者の事を指すならその通りですよ」


 その時に店のテーブルが粉々になったのは伏せておく。

 弁償はあの冒険者がすることになっているが、力加減が上手くいかずやらかしたからね。


「……分かった、信じよう。

 そもそも、あのウルナが嘘を言うわけが無いからな。

 よし、付いて来い」


 シドンに案内されて、工房の中に入っていく。

 外とは比べ物にならない程、熱いそこはまるで灼熱地獄のようだ。

 ステータスが高くても、熱による影響は緩和されないのか。

 熱耐性とか手に入ればいいのにな。

 あ、そうだ。

 スキル『50フィフティ』発動。

 熱の影響を50%カットしてくれ!


【スキル『50フィフティ』の効果で、熱への耐性を0%から50%にしますか?】


 おお、もちろんYESだ!


【スキル『50フィフティ』の効果で、熱への耐性が50%になり、スキル『熱耐性』を獲得しました】

 

 おおお!!なんかスキル獲得した?!

『ステータス』!!


川西 龍真(かわにし りゅうま)

36歳 男 用務員

レベル:50

HP2500/2500 MP2500/2500

力:2500

魔力:2500

体力:2500

知力:2500

敏捷:2500

技量:2500

運:2500

スキル:『平均アベレージ』、『50フィフティ』、『解体術』、『熱耐性』


 おお、本当に増えてるな。

 そして、このスキルの効果は……。


『熱耐性』:熱による身体ダメージによる影響を半減する。このスキルは常時発動する。


 うんうん、狙い通りの効果だなー。

 いやいや、というか半分冗談だったんだけど、ナニコレ。

 スキルって、こんなに簡単に取得出来るの?


「なぁ。この暑さの影響で『熱耐性』が手に入ったんだけど?」


「リューマ。気持ちは分かるけど、現実逃避している場合じゃない。

 そんな簡単にスキルが手に入れば、みんな苦労しないから」


「そ、そうだよね。あははははは……」


 ええええ!?

 いや、そうだよね。普通は手に入らないよね?

 なんか、俺のスキルってヤバくない?


「よし、ここでいいだろう。ここに来たという事は、鉱石を溶かして金属にしたいんだろう? お前達が掘ってきた鉱石をここに積んでくれ」


「あ、はいっ!」


 おっと呆けている場合じゃない、ひとまずスキルの話はおいといて目的を済ませてしまおう。

 鈴香と星香に袋からあるだけの鉱石をその場に積んでもらった。


「お、お主達。一体どれだけ溜め込んでおったんじゃ!?

 この量は、この村の坑夫達全員の一週間分くらいじゃぞ。

 うーむ、流石にこれだけあると数日はかかるぞ?」


「え、そうなの?

 えっとこれ一日で掘ってきたんだけど……」


「なんじゃと!? ……はあ、もういいわい。

 お主達が規格外なのはよくわかった。

 それに、その魔法袋。単なる冒険者が持つ物ではあるまい。

 さしずめ、お主らは噂の勇者一行という所じゃろう?」


 う、このシドンは鋭いな。

 長年色んな人を見てきているんだろう、洞察力がすごい。


「あー、その……」


「ふん、言わなくてもよい。

 その代わりと言ってはなんだが、お主達に頼みたいことがある」


 ニヤリと口元を変え、立派な髭をさすりながらこう言った。


「新しく出来たダンジョンを攻略して欲しい」


「…? えーーーー!?」


 まさか、思っていなかった提案をされる羽目になったのだった。

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