第34話 鉱山の村ドワンゴ①

 あれからテントと馬車を使って、みんなで野営所で一泊した。

 俺とミィヤが馬車で寝て、学生四人組はテントでぎゅうぎゅうになって寝ていた。

 本当に急いでいたのか、瞳月と明日香はキャンプ道具を一切持ってきてなかった。


 とても申し訳なさそうにしていたので、それだけ星香と鈴香の事を大切な友人と思ってるのだなと、フォローしておいたよ。


 さて、朝になり鉱山へ向かって馬車を走らせる。

 人数は増えたけど、二人くらいなら大丈夫。

 小柄だし、細身の女の子なので大して幅取らないからね。

 それに荷物をアイテム袋に多少入れてもらってるし、スペースは十分だ。



 半日以上かけて、やっと鉱山の近くにある村へ到着した。

 目的の鉱山は、坑道が見えるくらい近くにある。

 もうあたりは夜になっていて、門番以外は村人は見かけない。


「あんたらは鉱石を堀りに来た冒険者かい?

 もう坑道は閉じてるから、今日は宿に泊まるといいよ」


 そう言って門番は親切にも宿屋の場所を教えてくれた。

 宿屋は二箇所あるみたいだが、女の子を連れているなら宿代が高い方をオススメするよと言われる。


 安宿は部屋も共同で雑魚寝だし、荒くれ者も多いから襲われても文句も言えないぞと脅されてしまう。


 こう見えて、ミィヤ以外はそこらの冒険者よりも強いのだけど、流石に寝込みを襲われたら分からないし、そんなむさ苦しいところに女の子を泊めるわけにいかない。

 勧められた通りに高い方の宿へやってきた。


「いらっしゃーい」


 背の低い女の子が俺らを出迎えてくれた。

 ただ子供という訳じゃなく、背が低いだけか?

 肌の色もやや緑がかっていて、手足がしっかりしている。


「あら、ここらは初めてかい?」


「ああ、そうだよ。よく分かったな」


「私はこの宿屋の娘で、ドワーフのウルナだよ。

 そんな珍しそうな顔をしているのは、だいたい初めてこの村に来たやつだよ」


「なるほど、おのぼりさんと一緒というわけだ」


「うん? まぁ、よく分からんけど宿屋オルターナへようこそ。

 うちは飯も上手いし、何日でも泊まってよね」


 豪快な笑い声をあげつつ、早速受付をする。

 料金は一日一人銀貨二枚で、朝食付き。

 夜飯は別料金でその都度払うらしい。


「ここらは温泉も湧くから、風呂もタダだよ。

 普通の部屋なら共同風呂を使うことになるけど、六人部屋なら専用の風呂もあるけど、どうだい?」


 共同風呂は、いわゆる銭湯みたいな感じで脱衣所こそ分かれているものの、混浴らしい。

 しかし、この地域では混浴は普通らしいので、ほとんどの人は気にしないとか。

 ただ、貴族や商人など他の者と一緒に入りたくない客がいるので、風呂付きの部屋も用意しているだってさ。

 ちなみに風呂代として追加料金が一日銀貨三枚発生する。


「どうって言われても、この女の子たちは俺の娘じゃ……」


「はい! それでいいです!!」

「鈴香?!」


「(だって、共同風呂だと他の人も入っているんでしょ? みんなだけならいいけど、他の人とはちょっと……)」


「(いや、でもミィヤさんはいいとしても川西さんもいるんだよ?!)」


「(それは、入るタイミングをずらせばいいのでは?)」


「(それだ!!)」


 どうやら、女子四人で話が決着したらしい。

 ミィヤは、俺と一緒に入れればどうでも良いらしく、話には参加してない。


「川西さん、六人部屋でお願いします!」


「おっちゃん、うら若き乙女を守ると思って、お願いっ!!」


 今どきうら若き乙女とか言う子がいるんだな。

 まぁ、俺としても人を気にしないでゆっくり入れるのは有難い。

 風呂くらいは落ち着いて入りたいからな。


「分かった。君たちがそれでいいなら、そうしようか」


「やったー!!」


 四人は嬉しそうに、ぴょんぴょん跳ねて喜んでいる。

 こうしてみると、どこにでもいる子供たちなんだけどな。

 まぁ、高校生を子供でくくっていいのか分からんけど。


 馬車は宿の人が預かってくれた。

 荷物が盗まれないように荷台もしっかり保管してくれるらしい。

 なんとも有難い。


 一先ずは、腹ペコ学生達を連れて夕食を食べに行く。

 食堂は酒場も兼ねているらしく、地元の鉱夫達も利用してるみたいで、熱気に包まれている。

 空いているテーブルを確保して、取り敢えず席に着く。

 ウェイターを呼んで、オススメな料理を人数分頼んだ。


「なんか、やたら視線を感じるのですけど……」


「まぁ、オッサンひとりを美女が五人も囲んでいれば注目を浴びるだろうよ」


「あははっ! 美人だなんてオッチャンでもお世辞言うんだね」


「ん? お世辞じゃなくて、素直にそう思ったンだが?」


「リューマ、私以外を褒めるのは良くないぞ」


「えー。別に事実だからいいじゃないか。

 だからって、ミィヤへの気持ちが変わるわけじゃないし」


「ん、それならいい」


 そんな二人の世界を作ろうとしたところで、邪魔が入る。


「おうおう、見せつけてくれんじゃねーか」


「そうだそうだ。アニキなんか彼女すらいねーんだぜ?」


「てめぇ、よけーなこと言うんじゃねえっ!」


「アイテッ」


 酒に酔った冒険者らしき男が俺たちのテーブルの前にやってきた。

 相手の数は四人。俺がいうのもなんだけど、ムサイやつしかいない。


「お前たち今日来たばかりだろう?

 俺様が手取り足取りこの村を教えてやるから、大人しく俺らに酌をしな!」


「そうさ、そのまま朝までイロイロいーことを教えてやんぜ!ぎゃははっ!」


 なんだ、この悪党のテンプレみたいなの。

 同じテンプレなら、可愛いお嬢様が助けを求めてくるパターンにして欲しいもんだ。

 いや、ダメだ。それも色々と問題が起きるな。


「えーと、ゴメンね?」


「は??」


「いや、だからね。お断りしまーす」


 鈴香にあっさりと断られ唖然とする冒険者のリーダーらしき男。

 それを見て、さっきまでヘラヘラしてた取り巻きたちの眉間にしわが寄る。


「てめぇら、まだ分かってねーみたいだな?

 俺はこの村に出来た新しいダンジョンから生還した唯一の冒険者だぞ?」


「何っ!? ダンジョンが出来たのか?」


「へへっ、やっぱ知らねーみたいだな。

 先月、坑道の最深部にダンジョンの入口が出来たんだ。そこにいる魔物がかなり強くてな……。なんと想定レベルが30と来たもんだ」


 ほうほう入口から30レベルとなると、勇者御用達のダンジョンよりも最初の難易度が高いな。


「そこから俺達は帰ってこれた。それがどういう意味かわかるな?」


「え、逃げてきたから?」


「馬鹿なのか、てめー! 魔物よりもレベルがたけーって事だよ!

 聞いて驚け、俺様のレベルはな……。

 35だ!」


 そこで囃し立てるように、取り巻きたちがヒューヒューいったりピューピュー口笛鳴らして盛り上げる。


 えーと、俺らで君より低いのはミィヤだけだな。

 そのミィヤも、俺のスキルを使えばお前よりも強くなるんだよな。


「はっはっは!驚きのあまり声が出ないのか?

 そーだろう、そーだろう!

 そうだ哀れなオッサン、お前はレベルいくつなんだ? ほら、言ってみろよ」


「(なぁ、星香。レベル35って凄いの?)」


「(ああ、はい。一般人にしてはかなり高いかと。冒険者はレベル30から上級冒険者と言われるみたいですから)」


「(なるほど、だからかー)」


「おい、オッサン。何ヒソヒソ話をしてるんだ!

 俺様が聞いてやってるんだぞ、さっさと言いな!」


 多分、見た目から想像してせいぜい20レベルとか思っているのだろう。

 まぁ、スキルがなかったら、そこまですらいってなかっただろうけどな。


「はぁ。俺のレベルは……50だよ」


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