第27話 洗脳と統率の違い
「まるで自分が生徒を操っているようで怖いんです。でも、使わないとみんなの危険が増えるし、昨日みたいにピンチになっても、誰かが助けてくれる事はないですから」
「オッチャンが来てくれて本当に良かったよ!
レベル40くらいのモンスター相手だと結構苦戦するのに、あの数とか絶対無理だったから!」
鈴香は笑いながら言っているが、本当にやばかったんだろうな。
いきなり今までより強い敵が無限に湧き続けるとか、悪い夢を見せられているようなもんだ。
しかし、それでもあそこまで耐えれたのは間違いなく響子のスキルのおかげだろう。
だからこそ余計に悩むよね。
「はは。俺もレベル上がってなかったらやばかったよ。というか、助けに行けなかっただろうな」
「オッチャンのレベルいくつなの?」
「ん、俺か?……うーん、他の奴には内緒だぞ?」
「うんうん」
「俺のレベルは50だ」
「ええっ!?」
素直に驚く鈴香。
副委員長と響子も唖然としている。
しかし、あれだけ倒したのにまだレベル上がらないのか。
ん、よく見たらもうちょいだな。
「リューマさん、どうやってそこまで上げたんですか?私達も頻繁にダンジョンに行ってますが、せいぜい40~45ですよ」
「それは俺が持つスキルの効果のおかげなんだ」
「そんな凄いスキルだったの? えーと、『
「そっちは対象を平均化するスキルだから違うな。もう1つのスキルだ」
ここで教えていいものか悩む。
万が一あのローブ男にバレたら、今の生活が出来なくなってしまう。
それでもオッサンはいらないとか言われそうだけど、ミィヤとの気ままな生活に支障が出るかもそれないしな。
「ど、どんなスキルなの?!」
「それはな……」
「う、うん……」
「ナイショだ」
「えーーーっ!」
結局秘密にされて、口を尖らせて抗議する鈴香。
なんとも可愛らしい仕草だが、教えてあげない。
リスクを負うのは避けないとだからね。
「駄目ですよ鈴香。この世界でスキルというのは生きるための切り札。特殊なスキルであれば秘匿するのは当然です」
「そ、そうよ綾堂さん。人には教えたくない秘密の一つや二つ……」
「キョーコは絶対聞こうとしてた」
「う、そんな事、ナイデスヨ」
バツが悪そうにして、目をそらす響子。
三人は強くなる事を求められているし、早くレベル上がる方法があるなら知りたいよな。
しかし、今は教えられない。
「すまんな、色々とわかってない事が多いし、あのローブ男にバレると厄介なそうだからまだ秘密にさせてくれ」
「!そうでしたね。勝手に呼ばれて追い出したのに、また手助けしろとかあの人達なら平気で言うでしょうから」
その反応からあの男は俺を追い出してからも変わっていないようだな。
それもそうか、たかが1ヶ月程度で人間変わらないよね。
「それよりも、響子ちゃんのスキルの話だったよな」
「ああっ、そうでした。私どうしたらいいですか?」
スキルを使わないと生き抜けない。
しかし、使えば相手を洗脳する形になるか。
でも戦闘中だけだし、普段は自由なんだから気にしないでいいんじゃないか?
そもそも言うこと聞かない奴が多いし、統制取れないとあっという間に死んじまうだろ。
ただ、自分の采配が悪くて誰かが死んだ時はかなり自責の念に苛まれるだろうな。
うーん、いい方法かー。
「使わないって線は無いだろうから、結局は戦術の勉強して生存率上げるしかないんじゃないか?」
「やっぱりそうなります?」
「ステータス効果もそうだけどさ、あいつらに自由にやらせてたらすぐ死んじまうと思うぞ」
「私もそう思いますわ。先生も授業中は苦労されていたじゃないですか」
「それはそうなんだけどね……」
とはいえ、自分の手の上に彼らの命が乗っていると思うと気が乗らないよな。
もし自分が同じ立場だったなら、すぐに逃げ出してるよ。
「じゃあ、辞めちゃえば?キョーコには向いてない」
「コラコラ、辞めれるならとっくに辞めてるだろ」
「そうですよ!私だってこんな事をいつまでもしていたくないんですから!
でも、自分の生徒達を見捨てることなんか出来ないじゃない……」
「キョーコ……。ごめん言いすぎた」
「いいんです、本当の事ですし」
本当、辞めれれば楽なのにね。
俺も追い出されたけど、結果気楽に生活出来るからな。
あの時追い出されていなかったらと思うと、ちょっとゾっとする。
スキルの効果に気が付いていなかったら、奴隷以下の扱いだったかもしれないからな。
「あー、そうだ」
「何かいい案が?!」
「うん、辞めちゃおう」
「えええっ!? いま、私の話し聞いてましたか?!」
「ああ、ごめんそういう意味じゃないさ。しばらく使うのをやめようって話だ。
『統率者』なしで慣れれば皆の能力の底上げにもなるだろ?
逆に、『統率者』が切り札にもなる。そうすりゃ、ピンチに直面しても余裕が出来るんじゃないか?」
今までスキルありきで戦っていたから、ギリギリの戦闘になると今回のように耐えれなくなる。
それなら統率なしの状態で慣れておいて、いざという時に使うようにした方がいい。
「ちなみに相手を指定したり出来ないのか?」
「意識を絞れば出来ると思います。ただ、あまり慣れてないので上手く出来ないですけど」
「そこは練習かなぁ」
「そうですね、しばらく慣れるためにやってみますね」
「キョーコならすぐ出来る」
「ふふ、ありがとうミィヤ」
さて、話は一区切りついたかな。
あとは響子ちゃん次第だ。
上手く生徒も自分もコントロールして欲しいな。
それでも上手くいかなくなったら…、その時はいっそ俺が攫ってしまうか。
俺のせいなら、彼女もそこまで気に病まなくなるだろ。
そのあとは女子同士の雑談が繰り広げられ、お茶のお代わりが出た頃。
店の奥から鼻をくすぐる素敵な香りが漂ってくる。
ぐぅ~と、可愛らしい音が誰から聞こえた。
「あははっ、お腹なっちゃった」
犯人は鈴香だったようだな。
流石の鈴香も、顔を赤らめて恥ずかしそうにしている。
うん、しおらしくしていると可愛い子なんだよな。普段が元気すぎるので、女子らしさが半減で損している。
「あはは、すごくいい匂いしますものね仕方ないわ鈴香。こんないい匂いしたら私もお腹鳴りそうですわ」
「うん、じゃあもうすぐいいものが出来上がる筈だから楽しみに待ってろよ」
「え、何何?甘い匂いするし、クッキーとか、パイとか?」
鈴香の質問に、笑顔だけで答える。
あれは、最初のインパクトが一番大事だからな。
それから暫くして、あるものを持って料理長が出てきた。
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