第24話 転送装置
俺が2人から離れても効果は持続するようだな。
自分のステータスが増えたら切れたと言う事だこら、気をつけておこう。
「リューマにーちゃん…」
「キョーコちゃん?!どうした、大丈夫かっ!?」
フラフラとした足取りで近づいて来たのは響子だった。
どうやらかなり無理をしていたらしく、目が虚ろで焦点が合ってない。
「リューマ、キョーコは限界だ」
「分かっているよ」
俺の傍に辿り着くと同時に、なんと気を失ってしまった。
え、まじで?
「ミィヤ!キョーコちゃんを見ててくれ!」
「分かった。それよりも、子供たちの様子が変」
響子を優しく抱えながら、生徒の方を指さすミィヤ。
その先には、突然パニックに陥った生徒達がいた。
「えっ、えっ!?響子先生が倒れた!」
「まずいまずいまずい!!響子ちゃんがいないとこんな数防げないぞ!!」
「いやー、食べられるぅ~!!」
さっきまで果敢に戦っていたのに、いきなり持ち場を捨てて逃げようとしている生徒達。
明らかにさっきまでと行動が違う。
「お、おいお前達落ち着け、響子先生は気を失っただけだ!少し休めば目を覚ます筈だ!」
「おい、おっさん!そんな問題じゃない!
響子ちゃんがいなくなったら、一気に戦力が落ちるんだよっ!」
なんだと?
響子はそこまで強いようには見えないし、どう考えても戦闘向きな性格じゃない。
そもそもさっきまで指揮していただけで、戦ってすらいなかったじゃないか。
…指揮?
もしかして、指揮する事でみんなのステータスが向上するのか?
だとしたら、凄いスキルを持っている事になるな。
え、だとしたらヤバくないか?
全員が一気にステータスダウンしたのと同じじゃないか?
「も、もう抑えられない!ぐがあっっ!」
「いやぁー、ぎゃあああっ!!」
うわっ、負傷者が続出してんぞ?!
回復魔法とか持っているやついるのか?
「リューマ、行って。子供たちを助けてあげて。
キョーコもきっとそれを望むはず」
「あー、もう分かったよ!」
しかし、倒してもキリがないくらい次々に湧くので倒すだけじゃ意味が無い。
やっぱりあの装置をどうにかしないとだな。
そういや、生徒たちは他の部屋からここに転送されたんだっけか。
だとしたら、あの魔獣たちも他の部屋で生まれて転送されてきているのか?
兎に角、まずは壊してしまおう。
いつもよりも大きめの石を使って…、えいやー!
ごぉぉおおおっ!と石がまき起きした風が哭く。
まるで突風が吹いたかのように、近くにいたものを吹き飛ばしながら魔法陣が描かれた装置目掛けてひとっ飛び。
どごおおおおんっっっっ!!
爆音と共に、辺りに瓦礫が撒き散らされる。
あれ、やりすぎた?
まぁいいか、さて肝心の装置の方はどうかな?
砂埃でよく見えなかったが、段々と見えてくる。
巻き込まれて死んだ魔物も居たが、無事に装置は破壊できたみたいだ。
「よし、今のうちに体制を立て直すぞ!」
「すげーっ、1発であれかよ!」
「おっちゃん、強かったんだな」
あまりの急展開についていけないのか、呆気に取られている生徒達。
俺の言うことなんか聞いてくれないな。
「委員長、回復出来るやつとかいないの?」
「あ、はい!副委員長なら出来るかと」
「なんだ、そうなら最初から言ってくれよ!
響子先生を回復してくれ、俺じゃ生徒たちを纏めれない」
「はいっ、分かりました!
『ヒール』!」
ぽやぁーと光を放ち、その光が響子を包む。
苦しむ表情が次第に和らぎ、いくつもあった傷もなくなっていく。
「すごいな、魔法。
俺も使えたらなぁ…」
「魔法って、便利ですよね。
でも、何時もより効果が高い気がしますわ」
「あぁ、俺のスキルでステータス上がっているからな」
「なるほど。では、先生と同じようなスキルなんですね。
でも、それならなぜあの王宮魔道士様は川西さんを追い出してしまったんでしょうか?」
「俺のスキルは、俺が弱いとみんなを弱くしてしまうからなぁ」
「え…、じゃあ今は川西さんの方が強いという事に…」
「え?あはははは。…どうだろうな?」
取り敢えずごまかし笑いしてやり過ごしておこう。
流石、副委員長は頭がいいな。
こんな短い会話だけで核心を着くとか、まだ子供だとか侮ったら見透かされるぞ。
「う、う〜ん」
「あ、先生!気が付きましたか?」
そこでタイミング良く響子ちゃんが目を覚ました。
まだ視界がぼやけているのか、辺りを見渡す。
「わ、私は…。
!みんなは?!無事なの?!」
そして、現状を思い出し慌てて立ち上がろうとした。
「ダメ、まだ安静にしてて」
それをゆっくりとミィヤが制して、落ち着かせる。
そして、そっと耳元で呟いた。
「リューマが加勢して、みんな無事。
魔獣は減ったし、怪我人も治療中。
もう、大丈夫だよ」
まるで子供を寝かしつける母親のように、響子を撫でながら落ち着く声で宥めるミィヤ。
その様子を見ていた副委員長が頭にハテナを浮かべてミィヤを見ていた。
「えっと、この女の子は誰ですか?」
「ん?私はミィヤ。
リューマの妻だよ」
「リューマ?…って、川西さんの事?
え、妻…って結婚されたんですか?!」
約1ヶ月でいきなり結婚していたとか、ビックリもするよな。
あ、ちなみに俺が独身なのは生徒達は知っている。
坂本が良くそれで俺をからかってきていたからな。
なぜか、童貞の冴えないおっさんという事にされていたが、別に童貞だった訳じゃないぞ。
彼女がいた事もあるし、経験だってある。
一人だけどね!…うん、言ってて虚しくなってきたもうこの話は止めとこう。
今はミィヤがいる。それで十分だ。
「その話はさておき、残りの魔獣達を方付けようか。副委員長は、怪我人の治療に当たってくれ。
おーい、委員長いくぞー」
「あ、はい!分かりました!」
「あ、オッチャーン!あっちは片付いたよ!」
「お、良くやった!鈴香は優秀だな。
残りの奴もやっちまうから、一緒に行くぞ」
「うん、分かったー!」
そして、俺は委員長と鈴香を連れて未だ苦戦している奴らの手助けをするのだった。
それから、30分もしない内に全ての魔獣を討伐し終わった。
ピンチになっていた生徒に『
生徒達が戦うことで、俺のステータスの異常な高さも目立たなくなるので、一石二鳥だ。
「お、終わった~!」
「もう、だらしないなぁー。
私はまだまだいけるよ!」
「コラコラ、無理したら死ぬんだから、余裕をもって戦うくらいじゃないとダメだぞ?」
「はぁーい」
口を尖らせてぶーたれた鈴香だが、全員の救出に間に合い、何処と無くホッとしているみたいだ。
その証拠に、晴れやかな顔をしている。
本当に嘘が付けない奴なんだな。
「みんなを助けれて良かったな。
お前と敦が死ぬ気で走ってきたから間に合ったんだ。よくやったな!」
そう言って、頭をポンポンとする。
おっと、馴れ馴れしいか?と思ってたけど、ふにゃりと崩れた表情を見る限り嫌なわけじゃないみたいだな。
「これも全部オッチャンのお陰だよ!
本当にありがとうね!
これは、お礼だよー、チュッ!」
そう言ったかと思ったら、俺に抱きつき頬っぺたにキスをしたのだった。
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