第23話 スキル『平均』の真価

 いきなり響子ちゃんにお兄ちゃんとか言われて、我を失っていたけど直ぐに立ち直る。

 というか、俺を誰かと間違ってしまうほど意識が混濁しているのか?

 これは結構ヤバい状況なのかもしれない。


 まずは手前の入口を塞いでいるでっかい魔獣2匹を石礫で爆砕する。相変わらず汚い花火だが、四の五の言ってられないな。


 道が拓けたので、鈴香と敦を先に行かせる。


「二人とも、先に行って全員の体制を整える時間を稼ぐんた。

 あの犬っころ達は俺が抑えておく!」


「分かった!オッチャンよろしくね! 」

「川西のオジサン 、頼みます!」


 噴水のように吹き上がる血飛沫を交わしながら、その隙間を通り抜けて響子達の元に駆けつける。

 すぐさま押されている生徒に加勢して、劣勢な状況を覆す。


「おー、流石だな。

 他の生徒も無事…では無いにしろ生きてはいるな」


 ざっと見た感じ、死者はいなさそうだ。

 人数を数えている暇は無いが、倒れて動けないって人はいないみたいだ。


「アイツ、用務員のオッサンじゃね?」


「マジだ、追い出されたオッサンが何しに来てんだ?」


 なんか口が悪いやつもいるが、喋れるなら元気な証拠 。

 でも俺の事気にする余裕あるなら、他のみんなを助ける事を考えような?


 取り敢えず、手前の二体の魔獣の死体を盾にして、その死角から他の魔獣を狙い撃つ。

 入口側にいる10体が狙いだ。



 ビュンビュン…ビジャ、パシュッ!!

 ビュンビュン…ビュンビュン…バサャ、ドシャッ!!


 投げる度に、肉が弾ける嫌な効果音が聞こえるけど、まーしょうがない。

 しかし、これだけの数がいると流石に大変だな。

 いや、床とか血だらけに…というか血の池出来てるし。


 しかも倒したそばから、また新たな魔獣が生み出されている。

 あれは…、なんかの装置か?

 魔法陣っぽい何かが描かれた石から、どんどん出てくるな。


 イメージとしては、どこでもドアからこんにちわって感じでにゅうっと湧いてくる。

 もしやあるのか?欲しいなそれは。


 しかし、魔法で発動しているなら今の俺には無理かも。

 なんとも悲しい現実。魔法欲しい。


 それにしても、みんなどのくらい強さなんだ?

 ゲームと違って他人のステータス見れないのは不便だな。

 分からないなら聞くしかないか。

 丁度副委員長がいるし、聞いてみようか。


「副委員長お疲れ様。相変わらず苦労してそうだね」


「川西さんっ?!いま、そんな世間話とか、している場合じゃ、ないんです!

 危ないから、下がっててっ、下さいっ!」


 おー、必死な感じでなんとか攻撃を防いでいる感じだな。

 ほぼ互角って感じか。

 このままにしてるのは可哀想だから、ヒョイッとね。うん、また真っ赤な花火ですね。


「えっ…?!」


「それでさー、副委員長のステータスってどのくらい?」


「えっ?えっ?なんで、今パーンっって!?」


「あー、そういうスキルだと思っておこうな?

 で、ステータス教えて?」


「あ、はい。私のステータスは…」


 と言うと、何か俺に表示されて来た。

 え、ステータスって開示出来るの?どれどれ…。


児玉 星香(こだま せいか)

17歳 女 学生│勇者候補

レベル:42

HP1250/1500 MP1550/1550

力:520

魔力:910

体力:460

知力:900

敏捷:510

技量:460

運:300


低っ?!

いや、これが普通なのか?


俺とレベル8しか変わらないのに、1000超えてるステータスが無いぞ。

もしかして、後衛だからとかなのか?


「なぁ、副委員長って皆よりステータス低い?」


「えっ?!いえ、そんな事無いですけど…。

 攻撃力は低いですけど、魔力とかは皆の中で一番高いです」


「マジかー」


 追い出された俺に、低い呼ばわりされて少し不服そうだが、力が低いからとか思ってるぽいな。

 ゲームみたいに、スキルによってステータス倍増とかあっても、俺を超えられないなら意味が無い。


 これは下手に俺のステータス開示すると、波乱が起きそうだな。

 どうにかするには…。


 そうだ、俺も使った手段でいこう。

 簡単に強くなる方法、それはスキル『50』でレベルを上げてしまえばいいんだ。


「スキル『50フィフティ』発動、『児玉 星香』のレベルを50に上げろ!」


【スキル使用に失敗しました。対象の所有権を有さない場合、このスキルは使えません】


 なーにーーーっ?!

 つまりは、あれか?

 他人には使えないという事か?


 あれ、ミィヤの場合はどうなんだろ?

 所有権ね…。うーんそれは違う気がするなぁ。


 でもこうなったら、もう詰んだぞ。

 俺がやるしか無いけど、その場合は何故かこの中で最強とかなって、あのちょっと怖い感じのローブの元で馬車馬のように…。


 ブルブル、考えただけでも恐ろしい。

 しかし、見捨てる訳にもいかないし…。

 なんで俺は使えないスキルしか持ってないんだーっ!


 …ん、スキルといえばもう1つのがあったな。

 今まで1回も使わなかった俺の呪いのような名称のスキル。


 最初に確認して使えない認定してから、1回も確認しなかったスキル。

 もう一度、効果を確認してみよう。


平均アベレージ』:指定した範囲の対象は、範囲内で平均の能力を獲得する。自己のみでは発動できない。


 最初に見た時は、俺が強い奴のステータスを分けてもらうだけのスキルだと考えていた。

 それはそれで悪くないが、やられる方はステータスが下がるわけだ。


 そんな危険を背負うマネだれがするんだよと思っていた訳だが…。

 俺が一番ステータス高いなら話は別だ。

 なぜなら、貰う側じゃなくて、与える側になるのだから。


 これなら上手くカモフラージュ出来るかもしれない。

 しかし、人数多すぎたら分散されすぎる。


 だとすれば…。

 あ、丁度良い奴がいた。


「おーい、委員長ー」


「!!?川西さん?なんで貴方がここに?」


 似合わない大きな剣を抱えて、魔物と互角にやり合っているメガネ君を見つけた。

 相変わらず真面目そうな顔しているな。


「話は後だ。俺がお前達に補助スキルを掛けてステータスを上げる。

 だから、お前と副委員長で皆を助けるんだ!」


「え?ええっ!?だって川西さん、使えないスキルしかないって…」


「そんな話は後でいい!

 スキル発動するからステータスを見せてくれ」


「は、はいっ!『ステータス開示』」


岡 優美(おか まさみ)

17歳 男 学生│勇者候補

レベル:42

HP1550/1800 MP1050/1050

力:920

魔力:520

体力:650

知力:800

敏捷:610

技量:560

運:300


 これなら、かなり強くなる筈だ。

 よし、いくぞー!


 小声で『平均アベレージ』と唱え、スキルを発動する。

 対象はもちろん俺と委員長と副委員長だ。

 

 2人に俺のステータスの一部が流れ込んでいく。

 3人で平均するので俺のステータスはガクっと落ちたが、それでもあの魔獣に負けるほどではない。


 それどころか、2人が強くなったおかげで自由に動けるのだから都合がいいのだ。


「強くなったからって無茶して怪我はするなよ!

 よし、2人で皆を救ってこい!」


「言ってることは無茶苦茶ですが、でも不可能じゃない気がしますわ。

 こんなに力が溢れてくるなんてっ!!」


 言うか早いか、あたり一帯に炎の魔法が降り注ぐ。

 その威力は絶大で、たった一発で魔獣が黒焦げになっている。


「これが、川西さんのスキル効果?!

 なんて凄いの…!」


「これならいけそうだ!

 よし、押し返して体制立て直すよみんな!」


 よしよし、ダメスキルだと思ってたが効果てきめんだ!あとは2人に任せよう。

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