第11話 復興の為に
「はーーっ、よく寝たっ!!」
起きると既に夕方に差し掛かるほど、日が傾いている。
隣に寝ているミィヤはまだ起きる気配がない。
オーク襲撃から何日もまともに寝ていなかったのだ、そっと起こさないようにベットを出ようとしたら…。
「ん、どこに行くの?」
俺のシャツをしっかり掴んでいたらしく、起き上がる時に引っ張る事になってしまったらしい。
「ごめんごめん、起こすつもりは無かったんだが」
「ひとりは嫌だ」
「いや、親も生きてるし、仲間もいるだろう?」
「リューマと一緒がいい」
なんか、すっかり依存してしまっているのか?
まぁでも、嫌なわけじゃない。
ただもう少し休んで欲しかったけどね。
付いてくるのなら止める理由はない
「そうだ、換えの服とかないかな?」
「んー、服屋は残ってた筈だよ。
見に行こう!」
ちなみにミィヤの服は、ここが自分の家なのもあり綺麗なのに着替えている。
寝起きなのに花のような優しい良い匂いがする。
しかし、ミィヤの両親を見る限りこの村で俺は頭1つ分以上デカい。
だから親の服を借りたりも出来そうに無かったのだが...。
「ああ、俺に合うサイズがあればいいけどなぁ…」
「はは、それは問題ないよ」
ミィヤ曰く、サイズはどうとでもなるらしい。
それに、服屋の主人は生きていたので、新しい服も頼めるんだとか。
店に入るとすぐに声が掛かった。
「おー、兄さんもういいのかい?」
「ああ、俺はたっぷり寝たさ。
というか、そっちこそ大丈夫か?」
「平気さっ、俺なんかは捕まってただけだからな。
丁度ボロボロになっちまった皆の服を仕立て終わった所さ。
兄さんもどうだい?」
「ああ、まさに頼みに来たんだよ。
俺はこの服しか持ってなくてね」
「なるほど、それは不便だな!
と言うとは、下着も必要だろう?」
「おー、用意出来るのか?」
「ああ、勿論さ!腰巻のタイプと履くタイプならどっちがいい?」
「腰巻きってなんだ?あーあれか!?
じゃあ、断然履くタイプがいいな」
腰巻とか、本で読んだ事しかレベルでしか知らない。
両方用意できるあたり、色々作れるって事なんだろうな。
取り敢えず、着替えが出来るだけでもラッキーだな。
「分かったよ。
じゃあ、作っておくから後で取りに来てくれ」
「え、測ったりしないのか?」
「あー、心配いらんぞ?
俺は『測定』スキルを持っているから、観ただけで分かるんだよ」
「おおっ、そりゃすげーな!」
素直に賞賛したら、ご機嫌になった服屋さん。
かっこいいの作ってやるよと、笑顔で言われた。
なんか、こういう人間味あるやり取りとか久々だな…。
元の世界では、ひっそりとした暮らしぶりだったせいで、数少ない友人と休日を過ごす以外にはあまり人に接することは無かった。
学校では生徒と話をしたりからかわれたりもしたが、やはり対等な付き合いとは違うしなぁ。
「リューマ、なんだか嬉しそう」
「お、顔に出てた?ああ、嬉しいさ」
それも、ミィヤに出会ったからだな。
この子を救ったのは俺だが、心が救われたのは俺の方かも知れない。
いや、間違いなくそうだな。
2人で村の中心に戻ってきた。
あれだけ荒れ果ていた村が、たった半日で綺麗に片付いている。
「たった半日なのに、こんなに綺麗に出来るもんなんだな」
「案外ハーフリングは力持ちが多い。
それに『怪力』スキルを父様が持っているから、手伝うとあっという間に片付く」
村長というから、指示を出す側かと思ったら一緒に働くんだな。
あの偉そうにふんぞり返るだけの王様に爪の垢を煎じて飲ませたいぜ。
「そうだ、あの山積みになってたオークは?」
「さっき聞いたら、既に解体して加工し始めているらしい。
オーク達に食糧を荒されたせいで、直ぐに食用にしないと足りないらしい」
「おお、そうか…。
なんというか、逞しいな」
「生きるというのは、そういうものだと教わったぞ?
リューマは違うのか?」
「俺は食料に困る事が無い国で生まれたからな。
あまり自給自足したことが無い」
「そうなのか?その割には、あった時からサバイバル生活に慣れている感じだったけど」
「ああ、それは趣味で覚えたんだよ。
流石にオークの解体とかよく分からんさ」
「なるほど…。
じゃあ、解体とか覚える?」
「う…、この先の事を考えたら俺が出来た方がいいよな」
「うん、人間の町に行かないと加工された肉とか手に入らないからね」
「だよなー。よし、頼む」
こうして、俺は解体屋のところに向かった。
解体屋では、主に狩猟した動物や魔物を解体して食肉と素材に加工していくらしい。
力仕事でもあるので主に男性が担当するらしいが、食肉にしてからは女性が料理に適した状態にする為、一緒に働いているみたいだった。
「よう、英雄殿じゃないか!」
「いっらしゃい!まだ、料理にするには時間が掛かるよー!」
店主とその奥さんらしい人が出てきた。
どうやら、食べる肉を貰いに来たと思ったようだ。
店の奥では、数人の男達が忙しなく解体作業をしている。
ただ、その場には似つかわしくない服装の女性が何かを確認していた。
なんというか、巫女みたいな、神職の人かなと思うような格好だ。
「あの人は?」
「ん、ああ。あの人は祈祷師だよ」
「なんでこんな所に…。あ…、もしかして」
「分かっちまったか?
村人の半数以上は、オークに殺られちまった。
そして、その多くがその腹の中ってわけさ」
「オークは何でも食べるからねぇ。
だから、腹の中から同胞の亡骸を回収しているんだ」
「お、おう。なんと言えばいいのか…」
「はは、気にすんなよ。
殺られてしまったのは仕方が無い。
俺らも奴等を喰うし、お互い様だからな」
確かオークは高級肉とか言ってたよな。
しかし仲間を食ったオークを食べるとか気分的にどうなんだろうか…。
「まぁ、気分がいいもんじゃないんだが、生きる為には仕方ない。
だが、俺たちハーフリングは、例え喰われても仲間がそのオークを食べる事でその魂を引き継ぐ事が出来るという言伝えがあるんだ。
だから、あのオーク達は俺達が食べてやらないとな…」
「そういう考えもあるのか」
「ああ、そうさ。
本来なら、あれだけの量があれば行商に載せて売りに行かせるんだが、今回は出来ないのは残念だがな」
「あんた、そんな事言ったら精霊様から罰が当たるよ!」
「わーってるって。
なるべく保存が効く方法で加工しないとだな」
やはり、肉体的も精神的にも逞しいな。
ステータスだけ高い俺とは根本的な所で違う。
見習うべき事が多いな。
「俺も手伝わせてくれないか?
解体の仕方とか覚えたいんだ」
「おう、人手は多い方が助かるぜ!
しかし、いいのかい?」
そう言って奥の方をチラリと見る店主。
また一人の亡骸の一部が見つかったみたいだ。
「ああ、いつかはそういう場面もあるだろうし。
そういうのも含めて教えてくれると助かる」
「英雄さんは偉いねぇ~」
「英雄なんて大それたもんじゃないさ。
俺はリューマ、そう呼んでくれ」
「分かったよ、リューマ! さぁ、始めようじゃないか」
奥さんに連れられて店の中に連れていかれる。
そして、早速作業に取り掛かるのであった。
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