第10話 生徒名簿
時間は遡り、用務員の川西さんが追い出されたあとの話。
私は、ある私立高校の2-Aの担任をしている鈴木響子。
さっきまでは、だけど。
いつもの通り教壇に立ち、帰りのHRをしていたのに、何故こんな事になったのか。
突然光に包まれて、気がついたら足枷を嵌められて地下牢に入れられていた。
突然のことに頭がついていかなったけど、それでも生徒を守るために必死に考えていた。
それなのに、既に1人が暴力でのされてしまい、助ける間もなく何処かに連れ去られてしまった。
その後もいつもお世話になっている、用務員の川西さんがいきなり追放されてしまった。
いつも気さくに話しかけてくれて、小さい頃に仲が良かった従兄弟のお兄ちゃんみたい思っていたのに、助ける間もなくだ。
私が担当する生徒は30人。
男子と女子が丁度半々で皆個性的な性格をしている。
このクラスは特進クラスと言われていて、成績優秀者か、スポーツ特待生しかいない。
私は人の覚えが悪いので、生徒名簿に簡単にどちらのコースか+αを書いてある。
1:綾堂 鈴香(あやどう すずか) バスケット特待生
2:宇佐美 高志(うさみ たかし) 特進コース
3:岡 優美(おか まさみ) 特進コース 委員長
4:加藤 瞳月(かとう しずく) 特進&弓道
5:木村 拓巳(きむら たくみ) 特進コース
6:工藤 敦(くどう あつし) 野球特待生
7:児玉 星香(こだま せいか) 副委員長
8:坂本 俊哉 (さかもと としや) サッカー特待生
9:須崎 冬弥(すざき とうや) 特進コース
10:田口 陽介(たぐち ようすけ) バレー特待生
11:天堂 明日香(てんどう あすか) 特進&新体操
12:戸田 茉莉花(とだ ジャスミン) 特進 ハーフ
13:那須 真彩(なす まあや) 特進コース
14:根津 大介(ねず だいすけ) 特進コース
15:野田 美文子(のだ みやこ) 特進&図書委員
16:浜崎 桃華(はまさき とうか) 特進&生徒会
17:日村 航大(ひむら こうだい) 特進コース
18:藤村 光輝(ふじむら こうき) 特進&剣道
19:間宮 健(まみや たける) 特進コース
20:宮田 翔(みやた しょう) 特進コース
21:村田 賢(むらた けん) 特進コース
22:武藤 剛毅(むとう ごうき) 特進&柔道
23:芽原 淑子(めはら よしこ) 特進&ピアノ
24:毛利 哲(もうり さとり) 特進コース
25:矢口 冴子(やぐち さえこ) 特進コース
26:山田 乃里子(やまだ のりこ) 特進コース
27:山田 博之(やまだ ひろゆき) 特進コース
28:湯田 智洋(ゆだ ともひろ) 特進コース
29:横山 勇気(よこやま ゆうき) 特進コース
30:和田 彩純(わだ あすみ) 特進コース
それぞれの評価はまた別ページに書いてあるけど、それには全員の『スキル』とかも書いておかないと。
連れ去られた坂本君はまだ帰ってこないし、他の生徒は私が守らないと!
私に授かったスキルは『調和』と『指揮』というものだった。
『調和』は、特定範囲の精神を落ち着かせる効果があるみたい。
『指揮』は、その名前の通り特定のグループのリーダーになる事により、そのグループの能力を向上させるみたい。
私もゲームくらいはやるから分かるけど、本当にゲームみたいな仕組みの世界。
大体レベルとステータスって何?
戦うだけで強くなるとか、賢くなるとか意味がわからない。
今までの人生を否定されたようで、腹に据えかねていたんだと思う。
前にいた世界では、どれだけ努力しても、どれだけ才能があっても、必ず上手になれる訳じゃなかったし、必ず評価される訳じゃなかった。
それが一転して、レベル上げてステータスを上げたら英雄になれるとでも言うのかしら?
本当に馬鹿にしている。
しかし、今の現状を変えるには先ずはこのステータスやレベルの上げ方を知らなくちゃ。
そうじゃなきゃ、私たちを飼い殺しにするつもりだろうこのローブの男や王様のずっと言いなりのままになる。
まずは、ここの人達より強くならないと!
「さて、全員のステータスは分かりました。
ああ、申し遅れました。
私は筆頭王宮魔導師のマリウスといいます。
先に言っておきますが、私のレベルは80です。
そして、魔力は2000ありますからね?変な気を起こしたら消し炭になると思ってください」
流石に王の代わりに仕切るだけはあるわね。
でも魔力2000って何?
本当の化け物じゃない。
いっそ、私も川西さんと一緒に追放されていれば気が楽だったのになぁ…。
って、ダメダメ。
頭が良い子ばかりだけど、まだこの子達は子供なんだから!
私がこの子達を守るのよ響子!
「キョーコちゃーん、出発だってよー」
「キョーコちゃんは、俺らが守ってやるからな!」
「なーに言ってるの男子は!サカモトみたいにやられるのがオチよ!私達が守るに決まってるわ!」
あ、うん。
私が護られるのね、あははははっ…。
もう、嫌われてないだけマシと思うことにしよう!
「うん、みんな喧嘩しないでね?
私のことを思ってくれてありがとう、これからみんなで頑張ろうね!」
そう、ただ言っただけだ。
なのに、さっきまでいがみ合っていたはずの生徒達が同じ表情になり、こくんと頷いた。
ぞぞぞぞぞっと背中に悪寒が走った。
何これ!何なのよこれ!
これが『調和』スキルの効果って事?
こんなの…、洗脳に近いじゃない。
その様子を見て、マリウスが満足気に嗤っていたのが見えた。
怖い、逃げたい。
でも、逃げ場所がないのは分かりきっていた。
「川西さん…」
思わず溢れたのは、もうここにはいない『用務員』の名前であった。
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