第9話 襲撃の真相
ひとーつ、ふたーつ、みーっつ、よーっつ、いつつーーー。
…。
だああっ、数が多い!
血生臭いのは苦手だが、モンスター相手だから躊躇しなくていいな。
結果、あっという間にオーク数は減らしていった。
まぁ、減らしたのは俺なのだけどね。
ただ、おかげで着ていた作業着が血でぐちゃぐちゃになってしまったよ。
案の定、殆どのオークは一発で仕留める事が出来た。
唯一、出来なかったのは最後まで後ろでふんぞり返っていた一回り大きなオークだ。
最初は余裕をかましていたが、仲間が減るごとに顔色が悪くなっているのが分かった。オークでもちゃんと表情とか分かるんだな。他の奴らよりも知性を感じるからか?
「キ、貴様!何者ダ!
ナゼ我ラノ邪魔をスル!
ココヲ占拠スルヨウニ命ジタノハ、貴様達ノ王ダゾ!」
「あー、あの王様がグルなのか。
あの王様は、ヤバそうだったもんなぁ。
うん、俺あの王様と仲悪いからさ、関係ないわ」
「ググッ、ナンダトッ!
コウナレバ仕方ナイ!
ウゴオオオオオオオオオッ!!!」
急にオークの親玉からオーラみたいなのが湧きだす。
それと同時に、ただでさえムキムキな筋肉がモリモリになってキモチワルイ。
じゃなかった、凶悪になっていく。
見るからにパワーアップしましたってやつだよな。
こいつのスキルとかなのかな?
どれくらい強くなったのかわからんけど、用心するに越したことは無い。
いつも通り小石を投げる。
ビュンッ!グチャッ!
オークの右横腹に穴が空いた。
「ヌゴオオオオオオオオオッ!!!
キサマァァァァァ!!」
「やべっ、外した。滅茶苦茶怒っているな。
すげー勢いで、走ってくるな」
うーん。小石じゃまた貫通してしまうかも。
次は、この棒切れでも投げてみるか…。
狙いは頭。
ひょい、ブウウウンッ。
ゴシャッ。
ドオオン…。
おお、死んだか??
強化したっぽいのに、当たったら即死かよ!
俺が強いのか、見掛け倒しなのかさっぱりわからんな…。
念のため、ちゃんと死んでいるか確認してみるが、息はしていない。
というか、頭が砕け散って息する場所がないな。
心臓は…、分厚い鎧で確認出来ないな。
えーい。
ドンッ。
うん、これで良し。
流石に心臓が無ければ死んだだろ。
「さて、これで終わりかな?
念のため、全部の家を見て回るか…」
ダッシュで駆けまわり、全ての家の扉を開けて隠れているオークや人間が居ないか確認した。
幸いなことに隠れている者はおらず、安全を確保できた筈。
あ、門番もいたか。
「おーい!」
「キサマ ミタコトナイカオ ドコカラハイッタ?
ナカガ ソウゾウシカッタ ミタイダガ?」
「そう、俺は侵入者!と言うわけで、サヨウナラ」
「ナッ!? グパッ??」
一撃で頭を粉砕し、門番たちも片付けた。
ついでに正門を閉めて、閂を掛ける。
裏門にも回って、しっかりと扉を閉じて同じく閂を掛けた。
ここまですれば一安心だろ。
さすがに走り回って疲れたぞ。
ミィヤも心配しているだろうし、一旦戻ろうか。
とりあえずオークの骸は町の中央に積み上げておく。
放置して獣が集まっても困るから、後で処理しないとだな。
さて、ミィヤは大丈夫かな?
「ただいま~」
「ひっ、リューマなの!?
血がいっぱい、大丈夫!?」
そういや、オークの血を全身で浴びたんだった。
流石に臭うか?とか思ってたら、ミィヤが抱き着いてきた。
「そんなに血だらけで、生きてる!?
大丈夫!?」
あー、俺が血を流していると思っているのか?
はは、優しい子だな。
自分に血が付くのも構わず、あちこち大きなケガがないかを確認しているようだ。
おっと、そこは危険な場所だからやめなさい。
「大丈夫、大丈夫。これ全部オークの血だから。
ミィヤが汚れちゃうぞ?」
「汚れるとかどうでもいい!
本当に?怪我は無いの?」
「ああ、大丈夫だ。
かすり傷もないくらいさ」
「良かった…。
本当に良かったぁぁぁ~」
そう言うと、その場にへたり込み泣きじゃくるミィヤ。
そんな彼女をどうしたらいいかもわからず、ただ軽く抱きしめて『ただいま』とだけ言うのだった。
ミィヤが落ち着いた所で、状況を説明した。
どうやら人間の王がこの村の襲撃を命令した事。
それにオークが加担したという事。
そして、多分この部屋にいた男も王国の人間だろうという事。
「一応全部の家を見て来たけど、他にはいなかった。
村の門も閉めたし、暫くは安全だと思うよ。
ただ、人間の国から使者が来るとバレてしまうから、それだけは運次第ってところか」
「そうね。
だとしたら、まずは皆の治療をしないと」
俺が戦っている間に、何人かは意識を取り戻したらしいが、みな満身創痍だ。
だが村には傷を癒す薬があるらしく、それがあればなんと出来そうだという事だった。
それと、生き残った村人の中に治療師がいるらしく、治療の魔法が使えるらしい。
その人が意識を取り戻せばすぐにみな動けるだろうという事だった。
「じゃあ、まずはその人の治療だな。
すぐに取り掛かろう」
「うん」
2人で薬師の家に向かい、必要なものを取りに行った。
衰弱した村人を動かすことは出来なったので、俺らが走り回った。
そして、夜が開ける頃。
「終わったぁー」
「リューマありがとう。
これで、生き残った皆は助かったはず」
夜通し走り回ったせいで、流石に疲れ果てた。
しかし、その甲斐はあったみたいだ。
「村を解放していただいただけでなく、我々の命を救って頂けるとは、なんとお礼を申したら良いか」
「ああ、お礼はミィヤにしておきなよ。
ここに俺を連れてきたのはミィヤだ」
「最近の人間にしては、とても思慮深い方なのですね。
もちろん、娘には感謝をしております」
「そうか、なら良かった。
あとは任せていいか?流石にくたびれたよ」
「ええ、まだ治療が必要な者もいますが、あとは村のものだけで大丈夫です。
リューマ殿は、あちらの客間で休んでいてください」
「そうしてくれると助かる。村の門は閉めたけど、いつ奴らの仲間がやってくるとも限らない。
なるべく警戒してくれ」
「ありがとうございます。では、そのように手配しますとも。
ミィヤ、お前も疲れただろう?リューマ殿と一緒に休んでなさい」
「はい、お父様」
あ、この人がお父さんだったんだな。
よく見れば、立派な服を着ているな。
あれ、村長とか呼ばれているぞ?
「あれ、ミィヤは村長の娘なのか?」
「あれ?言ってなかったか? ミィヤの父様がこの村の村長だぞ?」
聞いてないよー!?
でも良かった、ミィヤの両親を救えたなら。
こうして、村長の勧めるがままに俺とミィヤは客間のベットで一緒に寝るのだった。
「なんで一緒のベットで寝ているんだ?」
「ミィヤはリューマと一緒!」
村長も止めないし、もういいか。
疲れたし、もう考えるのは止めだ。
それに、なんか一緒に寝るの慣れたし落ち着く…。
そして、俺たちはお互いの温もりを感じながら泥のように眠るのだった。
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