第5話 ハーフリングという種族
「その歳?…ミィヤはもう子供じゃない。子供を産める歳だし…人間より体が小さいのは種族的特長だ」
「へ?えーとミィヤはエルフじゃないのか?
今いくつ?」
「エルフでは無い。ミィヤはハーフリングだ。
今年で20歳になった」
マジかよ!?この見た目で20歳!?
あ、ハーフリングってなんだ?
某友人なら詳しかったかも知れないが、俺はそんなに詳しくはない。
「なぁ、ハーフリングってなんだ?」
「それは、人間に人間って何だと聞いているのと一緒だぞ?
だけど、特徴として容姿は人間寄りでエルフより身長が低いらしい」
確かに人間ってなんだって言われると、説明が難しいよな。
それでもちゃんと答えるあたり、基本はいい子なんだな。
「そうなのか、教えてくれてありがとうな!
よーし、一先ず明日村を確認しに行こうか」
「生き残りを探してくれるのか!?
…でもいいのか?もし、見つかったらお前もただでは済まないかもだぞ?」
「ん、そういや自己紹介もまだだったなー。
俺の名前は川西龍真だ、”りゅうま”と呼んでくれ。
こう見えても結構強くなったから、オークくらいなら平気だと思うぞ」
「じゃあ、これからリューマと呼ぶ。
オークって、とても怪力で強いんだぞ?
ミィヤが言うのもなんだけど、その細腕で勝てるのか?」
オークといえば、怪力な上に獰猛なイメージだったな。
確かにぱっと見では非力な人間にしか見えないだろう。
しかし、レベルアップした俺はステータス上はALL2500とかなり高くなった。
あのゴミのようなステータスが嘘のようだ。
これも俺のスキルの『50《フィフティ》』のお陰だな。
これだけ上がっていれば、さすがによくRPGゲームでは最初の方に出てくるモンスターに負けないだろう。
これで負けるなら、もはや人生詰みだ。
「ミィヤは自分のステータスを見れるか?」
「ミィヤは成人しているから、ちゃんとステータスを見れるぞ」
ん?という事は、成人するまではステータスって見れないのか?
そう考えると、あのローブ男は未成年を狙って召喚しているくせに酷い言い草だったな。
今度会ったら〆ておこう。
もう会いたくはないけどな。
「どのくらいか、教えてくれ」
「うーんと、力90くらい。魔力なら150もある。
他は大体70程度だ」
「レベルと、HPとMPは?」
「レベルは20で、HPは220、MPは400だぞ」
ほーう、そうなのか。
昨日までの俺ならかなり格上の存在ではあるけど、これはレベルの差もあった筈。
いや、ミィヤが弱いだけかもしれない。
オークのステータスとか知らないかな?
「ちなみにオークのステータスとか分かるか?大体でいいんだが?」
「もぐもぐ。うーん、確かHPが500くらいで、力が300くらいで魔力は50程度だと聞いている。
他のステータスはさほどミィヤたちと変わらない。
レベルによってまちまちだけど、魔物達はレベル20までしか上がらないからそこまで変わらない筈だぞ?」
「力が300で怪力か…」
俺の力は、その8倍くらいあるぞ。
ええっと、これだけ差があると逆に参考にならないな。
「ちなみに俺の力は2500あるんだ」
「ぶうっー!ごほっごほっ!食べてる時に、変な冗談を言わないで。
ああっ、リンゴが・・・」
「もし、本当にそれだけ力があったら、どのくらい強い事になるんだ?」
「…まぁ、もしもそれだけの力がある生物がいるなら、ドラゴンとかそういう伝説級の魔物くらいじゃないか?」
なるほど、ステータスだけならドラゴン級かぁ。
…ってマジかよ!俺、伝説級のバケモノじゃないか!
こりゃあ、大暴れしたらあのローブがやって来て何かやりそうだ。
あんな奴隷みたいな扱い、二度とごめんだぞ。
そう考えたら、響子ちゃんとか置いてきたのが心残りだな…。
でも、戦力として呼ばれている以上はずさんな扱いはしないか。
うん、そう思っておこう。今の俺ではどうにも出来ないし。
「そうかー、よしそれなら明日はオーク肉だ!
食えるんだろ、オーク肉」
「ほう、良く知っているな。脂身と筋肉のバランス良いから上質な肉として有名だぞ。
でも、群れでいる事が多いからなかなか手に入らない高級肉なんだぞ」
「じゃあ、明日は肉パーティーだ!!」
「おおおおっ!!?」
「ちなみに、オークって肉食か?」
「いや、雑食らしいぞ。逆に言えば何でも喰らう」
「そ、そうか・・・」
「うむ、この世は弱肉強食。仲間が喰われていたならそれも仕方ないのだ」
「随分と割り切っているな…」
この世界の当たり前の感覚なのかなとか思っていたけど、そうではないみたい。
その証拠に、身を守るように抱く腕が僅かに震えている。
食べられても文句は言えないが、食べられてもいいというわけではないんだろうな。
とにかく、今は体を休める事に集中しよう。
ようやくお腹がいっぱいになったのか、ミィヤの食べる手が止まった。
俺も追加で焼いてある串リンゴにかぶり付き、お腹を満たしていった。
俺が食べ終わる頃には喋らなくなったと思ってミィヤを見てみると、既にうつらうつらと船を漕いでいた。
一瞬触れる事に躊躇ったが、そのままではただでさえ薄着なのに夜風で風邪をひいてしまうだろう。
考えても仕方ないと、そおっと抱え上げると一瞬だけ目を開けたが特に抵抗することなく眠りに落ちた。
余程疲れていたんだろうな。
俺用に作ったテントだが、そこにミィヤを寝かせる。
流石にそのままでは二人で寝る事は出来ないので、少しだけ広げておく。
火種が消えないように炭になった焚き木を灰に埋めて、埋火とする。
こうすればすぐにまた焚火を作れるのだ。
また寝ている間に火の粉がテントに移って火事になる事もない。
「お父様…」
温もりが伝わるくらいの距離で一緒に寝る俺に、そう呟きながら袖を掴むミィヤ。
今まで心細かったんだろうな。
俺が結婚して子供でもいたら、こんな気持ちになっていたんだろうか。
まぁ、まともに彼女が居た事すら無いんだがなっ!
はっはっは!
いや、虚しくなるからこの話はやめよう。
そっと、頭を撫でて『大丈夫だよ』とだけ呟き、俺もそのまま眠りに入ったのだった。
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