第4話 村人発見

 しかし馬車で連れてこられたとはいえ、町が見つからなすぎじゃね?


 もしかして、魔境にでも放り出されたのか?

 確実に迷わせる為だったとしたら、アイツら確信犯だろうなぁ。


 くそう、なんの恨みがあるんだか。


 しかし、レベルアップしたおかげで命拾いしたぜ。

 あの後近くを散策したら甘い木の実を見つけた。

 毒があるかも知れないので、舌で触れて痺れないか軽く毒味したし多分大丈夫だろう。お腹を壊さないのを祈っておく。


 あたりはすっかり夜の闇に包まれてしまったし、今日はここらで野宿かもなぁ。


 キャンプ道具が欲しかったなぁ。

 火を起こすのってどうやるんだっけ?

 なんかの本とかで見た事あるけど、道具無しで本当にいけるのか?


 まずは乾燥した枯れ木と、枯葉を集めてと。

 生木は燃えないから駄目なんだよな。

 だから簡易テントの骨組みに使っておこう。


 まずは火起こしだね。

 適当に石を割って尖った先で木に穴を開ける。

 面倒だからと石を投げて貫通!とかやろうとしたけど粉々に砕けたので諦めたのはナイショだ。


 ステータスが上がってるからか、直ぐに穴は空いたので底に木くず敷き詰めて、すっぽりはまるくらいの木の棒を差し込んでから高速でぐりグリグリグリグリ…!!


 おし、火種どころか一瞬でファイヤーし掛けたので組んでおいた薪に投下。

 火種が消えないように丁寧に息をふきかけつつ火を大きくしていく。


 うん、薪に火が移ったしこれでひと安心。

 火を見て興奮するような、おかしな動物とかいない限りはこれで大丈夫だろう。


 あとは寝床とテントだよな。

 爆散した人喰い花の大きな葉を屋根にしてと。

 あとは蔦の部分をネジって縄状にしていく。


 こういうのは用務員のオッチャンやってただけあり、得意なんだよな。

 なんでか何でも作らされてたし。


 さて、縄でしっかりテントを固定して1人分の寝床は完成だ。

 どうせ一日しか使わないつもりなので雨風凌げる程度で充分だ。


 これで獣でも見つかれば仕留めてから上手に焼けました~!とかやるんだけども、あの人喰い花以外に動物を見かけない。

 いや人喰い花は植物なのか?


 さて、無いものはしょーがない。

 さっき採った小さな林檎みたいなのでも焼くか。

 大抵の果物は焼いたらより甘みが増すからな。


 そうそう、この果物もスキルで増加済みだ。

 ただ残念な事に、一個だけしか50個に増やせなかった。

 もしかして、同じ種類のものは一回しか対象に出来ないのか?

 これは検証が必要だな。


 検証とか学生の時以来だ、懐かしい。


 さて、細い木に団子状態で小さいリンゴをぶっ刺して焼く。

 しばらくすると香ばしい香りが漂ってくる。

 焦がさないように気を付けて焼くのに集中しすぎていたらしい。


 ガサガサッと茂みが揺れ動くまで何かが近づいて来るのに気が付いてなかった。


 ん、なんだ!?

 なんかの動物か?


「いい匂い…お腹空いた」


 そこに現れたのは、小柄な少女だった。

 え、人間かっ!?


「オジサン、それちょうだい…」


「開口一番が、それかよっ!」


 しかし、よく見てみると少女の格好は酷いものだった。

 着ている服は、もう服とは呼べないほどボロボロで見えちゃいけない部分まで見えてしまいそうだ。

 そして全体的にドロなどで汚れている。ぶっちゃけ汚い。


 だが、そんなことよりもだ!

 その少女には、あの耳があるのだよ!

 え、だれにでもあるだって?

 違うっ、そうじゃない!

 耳の先が尖っているのだ!


 大事なので2回言うよ?

 尖った耳娘なのだ!


 まさか第一村人がトンガリ耳娘とは、何たることだ。

 しかし、腹減り状態でこちらを虚ろに眺めているな。

 狙いは…、串焼きリンゴか?

 まぁ沢山あるし、あげても構わないか。

 俺を食料と勘違いして齧られても嫌だしね。


「食うか?」

「いただく!」


 食べるかと聞いたら間髪入れずに返事して、直ぐに俺の手から串焼きリンゴを奪い取った。

 余程腹が減っているらしい。


 とはいえ、俺も腹減ったしもっと焼いていこう。

 そうしよう。


 しかし、尖った耳の人間と言えばエルフが定番だがなんと言うかイメージと違う。

 汚れていてよく分からないが、容姿が綺麗というよりは可愛らしいという感じだ。

 まだ子供だからなのかもしれないが、現実は案外この程度なのかもしれないが…。


「なぁ、お前は何処から来たんだ?近くに村があるのか?」


「村はなくなった」


「なくなった?なんでだ?」


「ミィヤの村はオークに滅ぼされた。ミィヤの村はもう無い」


「オーク?って、あの豚みたいな顔の奴か?」


「ブタ?うーん、牙が出てるしどっちかというとイノシシ?」


「うん、そこはどっちでもいいかな。

 それよりも、他の生き残りはいないのか?」


「分からない。ミィヤはお母様が逃がしてくれた。

 そのあと皆がどうなったのか…」


 なるほどな、そうしてひとりでこの森をさ迷っていたのか。

 経緯は全く違うが、ひとりでさ迷っていた仲間として見捨てては置けないな。

 元々見捨てるつもりは無かったけど。


「ただ…」


「ただ?」


「何故か分からないが、人間の騎士が一緒にいてオークに命令していた」


「なんだと?!…人間もグルなのか?

 …というか、その、俺も人間なのに怖くないのか?」


「!?そうなの?変な服着ているし、やせ細ったドワーフか何かなのかと」


 誰がドワーフやねん!

 そんな太ってもいないし、鼻もデカくないわ!

 あ、もしかしてこの世界のドワーフって鼻デカくないのか?

 いや問題はそこじゃない。


「でも、お前から悪意を感じなかった。

 それにミィヤは腹ぺこで死にそうだった。

 捕まって死ぬのも、腹ぺこで死ぬのも同じ」


 そう言いながらも、食べるのをやめないミィヤ。

 既に2本目は無くなっている。

 仕方ない、もう一本焼こう。


「しかし、その歳で随分と達観しているな。

 まだ子供なのに、小さい体で頑張ったんだな」


 死を覚悟させるほど、逃げたあとは大変だったのだろう。

 不運な俺がここに迷い込んだのは、この子にとっては幸運だったかもしれない。

 リンゴにありつけたという意味でだけど。


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