第2話 スキルとステータス
「しかし、本当にあなたも一緒に来た方なのですか?」
「ええ、どう考えても俺は若く無いんですが…」
「あっはっはっ!確かに。
なるほど可哀想に、あなたはたまたま巻き込まれたんでしょうね。
…ふむ、正直貴方には用はありませんね」
なんだってー!!?
勝手に呼ばれた挙句に、用無しとか酷すぎる!
「あ、あの…」
そこでモジモジとしながら響子先生が挙手をする。
「ええ、なんでしょうか?」
「い、いえ。私も少女と言う年齢では無いんですが…」
どうやら、少年少女という言葉を聞いて響子先生も棘が刺さったみたいだ。
というか、とても恥ずかしそうにしている。
「ふむ、貴女はこの少年少女達のリーダーのようだから一緒に呼ばれたのだろうね。
それにまだ穢れを知らないお人のようだし」
「ええっ!?えっと何でそんなこと分かるんですか?!」
「それはね、貴女のステータスを鑑定出来るスキルを私が持っているからですよ」
ステータスにスキルだと?
「あと、貴女はそちらのオジサンと違って役に立つスキルをお持ちのようだ。
これから我々の為にしっかり働いて下さいね?
そうすれば…、そこの少年少女の安全は保証してあげましょう」
これは暗に、しっかり働かなければ安全はないぞと脅しているのと同義だ。
さっきの王といい、この国の奴はヤバいなー。
「えーと、質問です!
用務員のオッチャンは役に立たないって言ってたけどなんで?」
ここで2-Aの元気娘である鈴香(すずか)が質問してくれた。
ナイス鈴香!いつも俺のお菓子を与えていた(奪われていた)甲斐があったよ。
「伝承では若い勇者がこの国を救うとされている。というのもありますが、それよりも持っているスキルが微妙なのですよ」
「へっ?スキル?」
「ああ!まだ説明していませんでしたね。
あなた方、異世界より来た者はスキルを獲得するのですよ。
例えば貴女は、『駿脚』というスキルを発現したようです」
「おおっ!なんかよく分かんないけど、早く動けるって事かな?それ、自分でも確認できる?」
「ええ、出来ますよ。
『ステータス』と唱えれば、自身のステータスを確認出来るはずです」
ほおほお、それじゃさっそく俺も。
『ステータス』っと。
川西 龍真(かわにし りゅうま)
36歳 男 用務員
レベル:1
HP50/50 MP50/50
力:10
魔力:10
体力:10
知力:10
敏捷:10
技量:10
運:10
スキル:『
…ええと、いいのか悪いのか分からないな。
「皆さん確認したようですね。
平均的な人間のステータスは、レベル1で各ステータスが10くらいです。
皆さんなら最低でも倍以上はある筈です。
そして、そこのオジサンは全て10ですね。
つまり彼は平均的な一般人とさして変わらないわけです。
更に『
そんな凡人、我々にはいらないんですよ!」
ぐはっ、久々に面と向かってディスられたよ。
しかし言っている意味は分かる。
こんな異世界まで来て、スキル名まで『
「その歳から育てるだけ無駄な労力です。
せめての恩情で金貨100枚とこの国の居住権を差し上げますから、どことなりへと消えてください」
笑顔で厄介払いするかのように言い放つ。
え、そこは元の世界へ送り返すとかじゃないのかよ!
いや、聞くだけ聞いてみよう。
「あの、役に立たないなら元の世界へ帰して欲しいんだが?」
「…はぁ、分かってないですね。流石は一般人君だね。
ハッキリと言いましょう。
もう、あなた方が元の世界へ帰る手段はありませんよ?
それにあったとしても、そんな労力がかかる事を役に立たないあなたにやってあげると思っているんですか?」
マジでか!?
てか、そもそもそんな価値すらないと。
勝手に呼んだ挙句、ひでー奴らだな。
「分かったなら、さっさと立ち去りなさい。
こちらの方々にはこれから大事な話があるんです。
衛兵、そのオジサンを外にお連れしろ!」
そう指示が飛ぶと、2人の兵士が俺の両脇を抱えるように掴む。
そしてそのまま外まで引き摺られるように連れていかれて、馬車に乗せられる。
そして城の外どころか馬車で町の外まで連れて行かれて、半日以上かけて移動した。
そして最後には、馬車から外に放り投げられた。
「いってえええっ!」
軽く空をダイブしたもんだから、身体中傷だらけだよ。こちとら単なるオッサンなんだから、もう少し優しくして欲しい。
兵士たちは、俺が地面に這い蹲る姿を確認すると袋を1つ放り投げてきた。
「有難くそれを受け取って立ち去るといい。
くくく、命があるだけ感謝しろよ!はーっはっは!」
2人は高笑いしながら馬車に戻り去っていく。
痛みに顔を顰めつつも袋を拾って中を確認してみて愕然とした。
どう見ても金貨の枚数が足りない。
…というか1枚しか入ってなかった。
「マジかよ…。
あっ、アイツらがネコババしたんだな!」
なんでわざわざ町の外まで連れてこられたのか今理解した。
アイツらが俺に払われた金をくすねてもバレないように、わざと人目のつかない場所まで連れて来たんだな。
はぁ…、つくづく運が無いよなオレは。
しかし、1枚とはいえ金貨が1枚はある。
それに、この国の住民である証である住民カードなるものはしっかりと入っていたし、何とかなるだろうさ…。
「まずは、町に帰らないとだな…」
一応帰り道は分かるが、あたりはすっかり暗い。
歩いて町に帰るにしても、かなりの距離がありそうだし急いで戻らねば。
こうして、とぼとぼと町に向かって歩き出したのだった。
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