第38話 野宿させん気かよコノヤロー

 チーム綺夜羅は何度かパーキングで休憩しながら特に迷うこともなく大阪に着いた。もちろん誰も単車で来たことなどないが、道中単車にもなんら問題も起きず予定通り着いた、というところだろうか。


『あ~!やっと着いた~!とりあえず日が暮れるまでに着いてよかったな』


 目的地へ無事着いたということで綺夜羅は上機嫌だった。


『ヤバい…股関節が固まってる…ずっと跨がったまんまだったから…』


 掠が内股の情けない格好で震えていた。長時間単車に跨がっていると股が痛くなるのはあるあるだ。


『腹減ったぜー。飯行こうぜ、飯』


『もぉー、お腹ペッコペコ。ん~、何食べよっかな~』


 数と燃はお腹を抱えて座りこんでいる。


『早くシャワーが浴びたいわ。夜のプールとかも行ってみたいわね』


『えー?じゃあ先、入れそうなとこ軽く飲み行こーよ』


 珠凛と旋はとりあえずどこかに落ち着きたいようだ。みんな疲れている中、それでも初めての大阪旅行にワクワクし期待に胸を膨らませていると次に綺夜羅が言った。


『さーて、今日どこ泊まるか』


 なんでもないことのように言ったこの一言が、メンバーを希望の園から絶望の崖に突き落とした。


『え?なんだよ、みんな。そんな顔して』


『ねぇ綺夜羅。あんたまさか今日これからこの辺で泊まるとこ探そうとしてんの?』


『うん、そーだよ』


 掠がそれとなく聞いてみると綺夜羅は何1つ嘘など言わない5歳位の子供のように答えた。


『ええっ!?嘘、ジョーダンでしょ?またまた~、どっか予約してあるんじゃないの?』


『いや?してないよ?』


 旋が希望を捨てずに言ったがその思いは瞬殺された。一体それの何がいけないの?と本気で思っている顔で綺夜羅はみんなを見つめ返した。彼女のそんな無垢な眼差しにみんな何も言えなかった。


『…あ…そうなんだ。はは…は…』


 だがそんな綺夜羅の前にあの女が立ちはだかった。


 そう、京極数。彼女は他の4人とは違う。嘘はつけないし思っていることは全て言い放ってしまうだろう。


『おい綺夜羅』


(数!)(ダメ言わないで!)(無理かなー)(終わったわね)


 掠、燃、旋、珠凛の順で最悪な想像をした。完全に4人は数が


『おい綺夜羅!てめー今日あたしらにこのまま野宿させん気かよコノヤロー!ちっと考えりゃ事前に予約しとかなきゃどこもいっぱいの季節だってことぐれぇ分かんべよ!このアホンダラー!!』


 とでも言ってしまうのだと思ったのだが、意外にも数は大声を出さなかった。


『…先、泊まんとこ探し行こーぜ。荷物も起きてーしよ』


 みんな首を傾げたが数はそう言っただけだった。


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