第7話 買います買いますそのケンカ
掠は蓮華に更に追い討ちをかけようと迫ってきたが蓮華はまずガードを固めた。
「とりあえずガードを覚えろ」というのは麗桜の言葉だ。
明らかに初級の者と見て分かる構えだったが、それでも掠は打てる場所がなく、攻める手が止まってしまった。その隙を見逃さず相手に打ち返していった。
軽めのジャブだが掠の顔面をとらえた。
『おぉ!』
蓮華が気になり横目で見ていた玲璃は声をあげ驚いた。そして今のを見て安心すると玲璃は自分の相手に集中した。
だが掠はひるまず接近していくと今度は蹴りで攻めていった。さずがに蓮華も教わっているのはボクシングだけなのであまり上手く対応ができず、ガードが甘くなった所をまた何発か打たれていく。頑張ってはいるが蓮華には実戦の経験が足りなさすぎる。掠の多彩な攻撃に追いこまれ防戦一方だ。
するとそこに2人を探しに3人目の暴走愛努流が現れた。
『蓮華~。玲璃~。どこ行った~?』
それは玲璃を探しにいった蓮華までもが帰ってこないので心配して探しにきた麗桜だった。
『あれ?なんだいるじゃんか蓮華。何やってんだ、こんなとこで。早く戻んねぇと、あいつ怒ってんぞ』
喋りながら近づいてきた麗桜も、すぐそこまで来て状況を理解した。
『師しょー…』
蓮華が泣きそうな顔で助けを求めている。
『なんだお前ら?ケンカなら後でしてやるからちょっと待っててくんねぇか?今ダンスのレッスン中なんだ。先生がお怒りなんだよ』
とは言うものの、玲璃は完全にスイッチが入ってしまっていて、すぐそこでかなり激しいバトルを繰り広げてしまっている。口で言って止まる感じではない。麗桜はそれを見て苦笑いするしかなかった。
『しょうがねぇなぁ~。蓮華、大先生にすぐ戻るって言っといてくれよ。』
そう言って蓮華と交代し、蓮華は走っていってしまった。
『ねぇ、ピンク頭さん。あんたが暴走愛努流の総長なの?』
『なるほど。お前愛羽に用か?今日はいねぇよ』
『げっ!マジ!?意味ねー』
麗桜は相手の事情など知らなかったが、その「意味ねー」が、いかにも自分が外れくじみたいな言い方で少しカチンときた。
『おい!なんだその言い方は!さすがの俺も今のは我慢ならねーぞ!かかってこいよ姉ちゃん』
『ちぇー、しょうがないなぁ』
麗桜は完全に舐められているものと認識しマジになっていたが先にしかけたのは掠だった。
さっきと同様一瞬で麗桜の目の前まで来ると速いパンチを繰り出してきた。その意外な速さに麗桜はもろに1発顔面にくらってしまった。
(やるな、こいつ。蓮華があんな顔する訳だ)
自分の中でそう納得すると、しっかりと構え直し相手に向かっていった。
掠も今度は踏みこんでこれず自分から距離をとった。
だが敵が逃げたら追わない麗桜ではない。掠がとった距離を詰めていくと空いているボディにパンチを当てていった。
『うっ!』
掠は顔を歪め声をもらす。
『へっ、ガードがゆるいぜ?』
さすがは麗桜だ。ボディ、顔、ボディ、顔と1発ずつ確実に打ちこんでいく。
『マズイね』
『うん。だいぶ押されてるね』
麗桜と掠を見ながら燃と旋が実況している。
『じゃなくて、このままだともうすぐ掠がキレる』
『そっち?』
『キレる前にやられちゃった方がいいのに』
『燃。あんたどっちの味方してんの?』
『あっち。あいつらあたしの言うこと聞かないから、いい機会だからボッコボコにされちゃえばいいんだよ』
『…あはは、まぁまぁ』
だが4人のタイマンはすぐに決着などつきそうになかった。
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