第21話
京をこういう危機から守るため!クラスに現れた強盗から皆を守るため!秘かに訓練していた!
ではなく名前カッコよくね?これ身に着けてたら面白いだろの精神で学んできたシステマを披露するときだ。
数々の動画を見て覚えたロシアの格闘術、受けて見よ!
「とにかく基本に忠実にやるんだ」
システマは技よりも身体の使い方が重要らしい。
実際に何かを実験体にしたことが無いので分からないけど。
俺はあくまでもリラックスして、姿勢をまっすぐ保つ。西園寺に対する感情は一旦そばに置いておく。
動画では分かりやすいようにお腹等を殴っていたが、それはあくまで指導の為。
体格でも身長でも劣っている俺は、的確に急所を狙わなければいくらシステマといっても効果は無い。
俺は歩きながら近づき、目の前に飛んでくる拳を避けようとしたが避けきれず、肩に当たる。
流石に戦ったことが無い人が攻撃を避けるのは無理があるな、と思いつつ、その勢いを使って鳩尾に攻撃する。
黒服の一人はあっさりと吹っ飛んだ。
どうやら、自分の力のみで殴るよりも相手の威力が出て楽に倒せるらしい。
とは言っても何回も黒服の攻撃を受け続けるのは流石に体がもたない。
まあ時間稼ぎだからな。
俺は何も言わずにただ待ち構えるだけ。
相手は黒服の一人が吹っ飛ばされたことにより警戒心を強めている。
完全に偶然の産物だけど、どれだけ強いか量っているのだろう。
「夏樹、待たせた!」
しかしそのお陰で時間稼ぎは済んだらしい。大が柔道部と剣道部をかき集めてくれたらしい。
俺は一旦京を引き連れて後ろへと下がった。
「ありがとう!これならどうにかなる!」
いくら強いと言っても、武術経験者を二人同時に相手できるほど強くないはず。
「京さんを守るぞ!」
「「「オー!!!!」」」
野太い声が響き渡った。明らかに強そうな男達を相手にするというのに士気は最高潮に達していた。京の人気の賜物だ。
「これで大丈夫そうだ」
柔道部と剣道部が黒服たちに向かって行く中、攻撃を受け続けていた佐藤も柔道部と剣道部の後ろまで引いてきた。体はどうか分からないが、服はズタボロだった。
「ありがとうございます。お陰で間に合いました」
本当に全て佐藤のお陰だ。一人だったら何もできずに奪われていた。
「生徒を守ることは教師の義務だからな。これくらい普通だ」
「これくらいって……」
「体育教師だから体を張る事ことしかできないけどな」
がっはっはと豪快に笑う佐藤。体を張る事が一番大変だというのに。
様子を見ていた人たちも佐藤に対して好意的な視線を向けていた。
「そんな事よりもあっちだ。青野も戦えてそうだったから手助けしてやってくれ」
と後の事を任された。
「佐藤を保健室に連れていって欲しい」
「うん」
近くに居た女子生徒に頼む。普通なら京に頼むところだが、京がここを離れるのが最も危険だ。
男子ならもしかしたら戦闘力になるかもしれないので、女子生徒にお願いした。
頼まれた女子生徒は、俺たちが戦っている反対側から迂回する形で保健室に向かって行った。
「京、もう一回行ってくる」
「気を付けてね」
俺は、少しでも戦ってくれている奴らの手助けになる為にもう一度飛び込んだ。
後ろからじゃ巨体で隠れて見えていなかったが、戦場はかなり統制が取れていた。
両部の部長の指示に従い、柔道部と剣道部でタッグを組み、黒服と戦っている。
柔道部が黒服に直接つかみかかり、その横から剣道部が木刀で殴る。
即興で組んだとは思えないコンビネーションだった。
しかし黒服も無抵抗なわけもなく、いつの間にか装備していた警棒を武器に柔道部に組み付かれないよう戦っていた。
そして黒服たちは極力密着して混戦になるように動いており、木刀を気軽に振れないようにしていた。
「何も考えずに来たけど、どうすりゃいいんだこれ」
正直俺が入ってどうこうできる状態ではなかった。
何かできないかと周囲を見渡す。
すると、西園寺の守りが薄いことに気付く。
黒服が二人しかいなかった。
そう思いタイミングを伺っている最中にとあることに気付く。
警官、あまりにも遅くないか?もう来ていてもおかしくないのに。
「残念ながら警察は来ないよ」
したり顔で西園寺は言う。どうやら、この男の権力は相当に高いらしい。
「つまり全員倒しきるしかないのか」
状況は思っていたよりも厳しいらしい。
「聞いたか?お前ら!全員倒さないと終わらないらしいぞ!」
それを聞いた剣道部の部長が皆に話す。
「まあ俺たちにはこれくらい余裕だよなあ!」
「「「おう!」」」
それでも諦めずに立ち向かってくれる両部の人たち。本当に感謝だ。
警察が来ない以上、黒服を無視して西園寺を倒したところで無駄だ。つまり俺は今から黒服二人を相手取る必要がある。
俺は先程と同じように完全にリラックスし、姿勢を綺麗に保つ。
やってやろうじゃあないか。
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