第5話
「というわけだ。これで問題ないか?」
俺はパーティーの事を会長に報告していた。
「ありがとう。助かったよ」
「面倒ごとを押し付けるのはほどほどにしてくれよな」
「分かっているよ。で、饅頭があるんだけど食べる?」
戸棚の方に向かい、饅頭を用意しようとする会長。
「ふざけんな。要らねえよ」
「あらら」
残念そうに元に戻す会長。
俺はこいつに隙を絶対に見せないようにしようと強く決心した。
会長からの面倒ごとも解決し、普通の日常に戻った。
なんだかんだあのパーティーは心労が絶えずしんどかったが、食べ物は美味しかったので総合的にはプラスだったのだが。
せっかくだし大にこんなうまいもん食ったんだぜって自慢でもしようかと思ったのだが。
「私、多分誰かにつけられている」
どうしてこうなった。
「お前をストーキングする奴なんて居るんだな」
「どういう意味よ」
「こいつの正体知らねえんだなって気の毒に思ってよ」
「……」
無言で大の腹を殴っていた。
「いたっ。やめてくれ。痛いから」
「私の心が痛いからなあ。こうしてると収まってくる気がするから我慢して」
「そんな堪忍な。助けてくれ夏樹」
「自業自得だ」
まあこんなことを言っているが椿は紛れもなく美人だ。こういう話はあり得ないでもない。
「それっていつごろからなの?」
「先週位からかな」
京の質問に気を取られたのか、大への暴力は収まっていた。
被害者こと加害者の大は腹を抱えてうずくまっていた。しばらくは使い物にならないだろう。
「なんでその時に話さなかったんだ?」
「すぐに収まるかなって思ってたね」
「確かに涼野の私服見たら100年の恋も冷めるもんな」
復活した大が涼野を怒らせそうなことを言う。
「私の服は普通だよ」
「普通にダサいよ。現実見て」
唐突に京が正論を放つ。
「え、京……ねえ」
ショックで膝をつく涼野。この人自分のセンスの無さを未だに自覚してないんだよな。
別にファッション誌に乗っているモデルとかの服装を見ても似合ってると普通に良いコーディネートだと認められるんだけど、自分で選んだ服も何故か良いと判断しているんだよな。
それはさておき、大体の人間が涼野の私服を見て恋心が覚めるのは事実である。
「実際休みの日にも来ているのか?」
「そうだね。買い物に行くときとかにも誰か私の方を見ているなって感じはする」
ファッションセンスが壊滅的だから大体の人間は涼野の事を見ている、ということは置いといて、こう言うってことは本当にストーカーされているのは事実なのだろう。
「そうなんだ。誰か目星はついているか?それと、実害とかはある?」
「どっちも無いかな。ただ遠くから見られているだけだと思う」
このパターンの場合、基本的には何も起こらないとは思うのだが、ストーカーはされているだけで精神が摩耗していくだろうからな。
「カップルの俺たちじゃああまり効果が無い。ということで彼氏役、任せたぞ。大」
「俺が?こいつと?」
「あら?何か不満かしら?私は不満だらけだけど」
青筋を立てながら大を脅迫する涼野。すまん涼野。我慢してくれ。
「えっと、無いです」
大は頑張ってくれ。
「んで実際にはどうするんだ?」
「現状は家まで送り届ける所かな。二人は駅同じだっただろ?」
「そうだな」
「理想はそれで諦めてくれることだが、激高して襲い掛かってくることもあり得る。大はその魔の手から身を挺して守るのが仕事だ」
「ナイフを持って突撃してきたらしっかりとお腹で受け止めるのよ」
「夏樹の言いたいことは分かった。だが涼野。お前は俺に死んでほしいのか?」
「そんなことは言ってないけれど。感動的なシーンは見てみたいとは思っているけれどね」
「それはイコールで死ねなんだよ」
「ということで頑張ってくれ大。ちゃんと2階級上げといてやるから」
「俺は死なねえよ!」
「じゃあ決定!」
京の鶴の一声で大の犠牲が決定した。
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