第15話15

つまらないことを考えているうちに地表と太陽の角度が40度程変わっていた。文字通り、気付いたら放課後になっていた。いやいや、そんなことないだろと言う人がいるかもしれないが、俺の身になって考えて欲しい。授業中はただ黙って勉強しているふりをして、休憩時間には適当に瀬崎をあしらいながら窓の外を眺めての繰り返し。単調な時間の繰り返しで、思い返せば一瞬だったなとさえ思えてしまう。あくまでも「思い返せば」の話だからね。授業時間なんて一瞬で終わるはずがない。


運動系の部活に入っている奴らがテンポよく鞄の中に荷物を入れているのが目に留まる。そういえば俺、部活にすら入ってなかったわ。別に入りたくないって訳ではなかったのに新入生の入部期間を把握していないせいで完全に時期を逸してしまった。今頃サッカー部にでも入っておけば割と充実した生活を送れていたのだろうか。え?なんでサッカー部かって?サッカー部で陰キャになっている奴を見たことないっていう人生経験からです。試しに教室の中をぐるりと確認してみるとサッカー部のバックを持っている奴らは大抵クラスの中心人物。これはもう自然界の法則として証明されたのではないのだろうか。後世の文献に「サッカー部は陰キャであらず:永峯寛樹」と記載される日も遠くないだろう。


いや待てよ?サッカー部だから陽キャなのだろうか。実際は「陽キャしかサッカー部に入らない」なのかもしれない。鶏が先か、卵が先か。これ以上考えると俺の人生が哲学に染まりそうだからご遠慮しとこう。


「帰るの?」


哲学にしては浅すぎる命題を考えていると、隣の席で身支度を済ました白浜がこちらを見ていた。


「部活にも入ってないからな。自然と帰るしか残らない」


「友達と買い物とか行かないの?」


「おい、俺に友達が居ないことを知っていながら言うか!?」


ふふ、と上品そうに笑う白浜。こんにゃろ、白浜も友達と言えるような存在は少ないだろ。


「私は生徒会があるから。また明日」


「・・・おう」


控え目に手を振り、教室を出ていく白浜。全っ然期待していなかったからね?一緒に帰る青春シチュエーションなんて微塵も期待していなかったから、全っ然落胆なんかしていないからね!?


気持ちを切り替え、背伸びをしていると瀬崎が後ろを向いてきた。


「ドンマイな、寛樹」


「・・・何が?」


「言ってほしい?」


「言ったらブチコロス」


コイツは人の心を読む練習でもしてきたのか?こうも察されると普通に殴りたくなってしまう。ダメ、暴力反対。


「ま、上手くいくといいな!俺は部活行ってくるわ」


そう言って元気そうにテニスラケットをブンブン振る瀬崎。もう仕草が小学生にしか見えない。


走って教室を出ていこうとした瀬崎が急ターンをして戻ってくる。


「あ、相談したくなったらしろよ♡」


「絶対しないから安心しろ。あと、語尾がたまらなく気持ち悪い」


誰がお前にするかよ。でもまぁ。ちょっとくらい。ほんの3mmくらいは心配してくれているのは伝わった。



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