第12話12
私は、白浜柚茶は。この人になら愛されても良いと思った。
始めて出会った時の印象が良かった訳ではない。ましてや、小説やドラマのような出会いでもない。ただ、淡々と会釈をしただけ。それが私と彼の出会いだった。
授業中はずっと窓の外を向いている。喋りかけないと何も話してくれないタイプ。そんな人なんて何処にでもいる。だけど私はこれまで出会った人の中で唯一、愛されても良いと思った。
理由は。
彼は私と似ていると感じたから。
私が彼と正反対なことは理解している。物心ついた頃から優秀で、自分が特別だと理解していた。何をしても大抵は上手くいった。異性から好まれ、同性からは妬まれるような容姿をしていることも分かっている。
恐らく、私と彼を並べて「似ている」なんて言う人は私以外に存在しないだろう。
彼のふとした瞬間。例えば、下校時間になって鞄を持ち、立ち上がる瞬間。降りやまない雨が溜まり、模様を作った校庭を廊下の窓から見る横顔。ほんと、たまに。彼がする表情は私にそっくりだと思う。
私は私の気持ちを理解してくれる人に愛されたい。だから、似ている彼なら。きっと私にしか理解できないこの気持ちを理解してくれて、愛してくれると思っている。
こんなに愛にこだわっている女子高生なんて珍しいな、とは自分でも思う。普通は適当に顔が良くて性格が良さそうな人と付き合って、色々と経験を積んでいくとも分かっている。
だけど、手に入れることが出来なかったものには執着するし、固執する。
これは私のせいじゃない。私が”両親”と呼べるような存在から愛を受けていたら、私はこうじゃなかった。こんなに、自覚する程に愛に飢えることはなかった。
・・・今更そんなことを言っても意味はないかな。声の届かない場所にいる彼らは上手くやっているだろうか。
彼にはこう言ったっけ。「いろいろ話すから」って。そう、まだ彼には全てを話さない。まだ言っても理解してもらえない。
それにしてもちょっと傷ついたな。これまで生きてきたけど「不気味」なんて言われたことは初めて。私だって・・・ちょっと変わってるとはいっても花ある女子高生の一人だからね?今度はもうちょっとオブラートに包んで欲しいかな。
軽く心の中で苦笑いをする。今のを口に出したら「言っても良いんだ!?」なんて彼からのツッコミが飛んできそうな気がする。
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