第11話11
「あのさ、ちょっと聞いていい?」
たまらず白浜に声を掛ける。どうしても聞かずにはいられない。
「ん?どうしたの?」
「失礼に感じたらマジでごめん。だけどさ」
言葉を切り、息を短く吸い込む。
「距離が近いっていうか・・・嫌じゃないんだよ!?なんか白浜が何を考えているか分からないっていうか・・・。言っちゃえば不気味にすら感じる」
分からない。俺自身が何を言おうとしているかすら分からない。致命的な国語力を発揮している。あー、さっきの現代文の授業、真面目に聞いておけば良かった。
「・・・つまり今は白浜が何を考えているのか分からない。理解できない。だからさ、白浜のことを教えて欲しい」
「私のこと?」
キョトンとした目で俺を真っ直ぐに見る。
「うん。なんで俺を好きになったのかとかも知らないし、なんで向かいの席に座っちゃいけないのかも知りたい。だから白浜が考えていることとか、思っていることとか教えて欲しい。そして、白浜のことを知りたい」
「・・・そうだね。永峯くんが言っていることは分かった」
「やっぱりちょっと私、変かな?」
そう言って少し悲しそうな顔を向ける。
「いやいやいやいや。俺の国語力の問題だからね!?気にしないでね?」
流石に不気味とか言ったのはヤバいと思っています。よく考えると正気じゃないでしょ・・・。付き合い始めて2日の彼女に向かって不気味だとか言うのはどう考えても一般常識からかけ離れている。もしかしてじゃなくて、実際におかしいのは俺だったりしてね。
「そうかなぁ。でも、私、昔は結構変だって言われてたから自覚はしているよ。色々直したつもりだったけど、まだまだみたい」
「・・・・」
気まずい。とても2日目カップルの雰囲気じゃないぞ。
「とにかくお昼ご飯を食べようか。私が色々話すからさ」
そう言って自ら反対の席に移動する白浜。あぁ、もう俺何やってるんだろうな。ホント最低最悪な人だと自覚せざるを得ない。
「それでまず何で好きになったかだっけ」
白浜がコンビニ弁当の蓋を取り、机に置く。
「頂きます」
きちんと手を合わせて、一口食べる。そして話し始めた。
「私が永峯くんを好きな理由だよね。でもごめんね。明確な答えを私は持っていない。普通の人みたいな理由はないと思う」
「ただ、強いて言うならば。私は永峯くんになら愛されたいと思った」
俺はただ無言で口に運んでいる。ただ二言。たったそれだけで俺が困惑するのは十分だった。日本語で話されている以上、言葉の意味は分かる。だけど、相変わらずに理解は出来なかった。
ただ、ただ一つ理解出来たとすれば。
これは”普通”の恋愛ではないそうだ。
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