第9話9
授業の内容なんて頭に入らない。つい昨日、彼女が出来たばかりの最高高度まで浮かれている男子高校生をなめてもらっちゃ困る。ほら、ノートすら広げていない。
さてさてさて。一緒にお昼ご飯を食べようだっけ?ふむ。順調ではないか。うん、順調過ぎる。そんなことを思っていたら、昨日の不自然さが何故だが強調して思い出される。不自然?いや、意外性か。恋愛に対してあまりにもポンコツ過ぎる姿は意外と感じるしかなかった。
・・・・ポンコツか?脳内のミニ永峯が異議を唱える。昨日、白浜の発言によって俺はどこか常識の通じないような場所に迷いこんだ感覚があった。それを俺は白浜が「抜けている」と思い、納得し、処理した。だけど本当に「抜けている」のだろうか。
小さな違和感。変な話だが、恥じらいながらも白浜は自分の行動に自信を持っているように見えた。もし、これが本当なら「抜けている」で済む話なのだろうか。
・・・・何考えてるんだろうな、俺。どうでも良いじゃん。可愛いければOKです。
まぁ、どうも俺は白浜の事になると慎重に考える癖があるらしい。彼氏としてこれからこの癖を治していかないとな。うんうん。
「(うわぁ、またやってるよコイツ)」
おい、わざわざ気配察して後ろ向くのやめようか瀬崎くん。その視線、地味に心にくるんだ。
窓の外を見ると大して綺麗でもない海が見える。ん、こういう時に桜が見えたら青春モノの実写映画になるんだけどなぁ。
チャイムの音で我に返る。どうやら授業を全て聞いていなかったらしい。たまにあるよね、魂が授業中に抜けている時。統計的に(サンプル数:1)窓際の席の人に多いらしいよ。
「さっ、見つけに行こっか」
号令が終わると、直ぐに白浜が俺の席の真横にやってくる。どうやらもう準備は整っているらしい。
「ちょーっと待ってね」
慌ててカバンから弁当袋と水筒を出し、立ち上がる。
「もう大丈夫?」
「大丈夫って言われたら大丈夫」
「何それー」
意味の分からない返答をしてもちゃんと笑ってくれる。あぁ、これが高校生活かぁ。どこからか心にダメージがかなり蓄積する視線がやってくるけど無視。
空き教室が多く、人が少ない旧校舎へと足を運ぶ。
「階段多いけどこっちの方が良いよね?」
「うん、別にそんな心配しないでも大丈夫だよ。ほら私、結構運動出来るし荷物も少ないから」
そう言って階段を駆け上がる。うーん、なんていい子なんだ。
会話の続きにと少し気になったことを聞いてみる。
「今日はコンビニなんだ。良いなぁ、俺の家って絶対弁当だからさ」
「ん?私の家は弁当とかないからこれが当たり前かなぁ~。私からしたら弁当がちょっと羨ましいな」
「いやいや、絶対コンビニの方が美味しい。最近コンビニのご飯って凄いじゃん」
そう、最近のコンビニはすごい。極稀にコンビニ飯を食べる時があるけど、マズイ飯に出会ったことがない。世界的に見ても褒められるような品質だと思う。
「いや~そうかなぁ」
ちょっと苦笑して前を向く白浜。
「でも、私は弁当の方がいいなっ」
そう言ってさっさと階段を上がってしまう。その顔は能面のような無表情に見えたが、見間違えだろう。
まぁ、そういうものなのだろうか。俺はコンビニ弁当の方が美味しいと思っているけど、人それぞれの味覚にもよるのかな。
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