第7話7

どうしたものかと。お互いになんとなく一緒に帰る雰囲気になって、なんとなく一緒に家路についている訳だけど。


一切会話が発生しない。


無言の空間が数分程続いて決心する。あーあ、これが男の仕事ってやつですか。世の中が男女平等を叫んでいることに納得する。政治なんて全くもって興味が湧かないけど、恋愛の場にも男女平等を取り入れてくれるなら今の与党を支持してもいい。


とりあえず、適当に会話のボールを投げてみるか。


「白浜の家ってどこらへんなんだ?」


「え? あ、うん。西坂の方だよ」


俺が声を発したことに驚いたような顔をする白浜。何だかなぁ。いつもの白浜を全く感じられない。飄々として、凛として、冷静で。そんな感じを振りかざしている白浜はどこに行った?


「永峯くん・・・・なんで一緒に帰っているの?」


あぇ!?もしかして、勝手な想像でしたか?一緒に帰る雰囲気なんて実は皆無でしたか?勝手に雰囲気を頭の中で改竄して俺が白浜の隣を歩いているってことですか!?それってただの俺がストーカーを現在進行形でしているってことですか!?


制服の下に汗の川が造設される。もう汗の勢いは止まるということを知らない。


「あ、違うよ!?私も一緒に帰りたいって思ってたから、なんで一緒に帰ってくれてるんだろう?みたいな?」


血の気を失っている俺の顔面を見て気づいたのか、光の速度で慌ててサブマシンガンのように喋る白浜が居た。


「アッ違うよ!一緒に帰りたいってのはぁ・・・・」


また思うところがあったらしく、今度は白浜が顔を赤らめて考えこむ。でもね・・・もう大丈夫だよ。君はそれ以上の爆弾発言を会議前に投下しているから、既にそんな段階じゃないんだ。


「あーもう嫌!」


顔をパタパタと手で扇ぎながら、諦めたような顔と何かを決心したような顔を覗かせる。


「永峯くんが好きだし、付き合いたいなって思ってる。これが私の気持ちです!どうにでもしてください!!」


永峯寛樹は正式に告白された。


「ちょっと待って。どうにでもしてくださいってどういう意味!?」


「そのまんまの意味だよ!いろいろしたいんでしょ?ほら、い、卑しいことでも何でもしても良いよ!!!」


そう言って両手を広げ、目を力強く瞑る白浜。んんん~??


「しないよ!恋愛の順序がおかしくない!?」


「じゃぁどうするの!?」


「えー・・・・?告白の次は・・・・俺が告白の返事をする?」


「はい!それじゃ結果発表に移ってください!!!」


「あ、はい。それでは結果発表です」


「ドゥルドゥルドゥルドゥル~」


人造効果音が白浜の口から飛び出す。


え?告白の返事ってこんなテレビ番組のようにするっけ??


「ええと。こちらこそ?お願いいたします」


勇気を出して言ったが反応はイマイチ。あれ?ちゃんと言えたよね?


「ん?どういうこと?」


「だから付き合おうってことだよ!!!」


こうして何かが抜けている白浜柚茶との恋人生活が始まった。あの時、ちゃんと理解しておけば良かった。「何で」抜けているのか。なぜ、彼女を前にすると「関わるな」と本能的な警告が頭に浮かんだのか。


互いに何を求めているのか、それを互いに未だ知らず。

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