第6話6
会議の内容が全く頭に入ってこない。前に座っている人が言った言葉を永遠と考えている。
白浜は確かに俺の苗字を言った。・・・OK、妄想じゃないことを確認しよう。
腕を限界まで抓ってみる。そして禿げないように祈りながら髪の毛を数本抜いてみる。さらには頬をシャーペンで突いてみる。
司会進行役の上級生が不審そうに俺を見ているけど知ったもんか。こちとら人生かかってるんだよ!
痛みはちゃんと返ってくる。つまり・・・くだらない妄想や夢でなく、現実。
何かしらの想いを抱かれている疑惑は、恋心を抱かれているという確定事項へと変化した。
黒板には体育祭に向けたスケジュールが書かれている。目には入るけど、覚える気や真面目にメモする気なんて湧きあがらない。ただただ、今身に起きていることを何度も確認するだけ。
永峯寛樹は告白された。
会議はあっという間に終わりそう。もう少し司会役には頑張ってもらいたかった。だって俺、どうすれば良いの?今からどんな顔をして白浜に会えば良いの?
いや、マジで。リア充ってのも中々キツイものですねぇ!!
・・・嘘です。調子乗っているだけです。
「それでは、今回の体育委員会は終了します。お疲れ様でした。」
眼鏡をかけた司会の先輩が会議を閉じる。一斉にどの体育委員も立上り、出口へと向かう。さて、どうしたものか。
立ち上がり、時間稼ぎの背伸びをする。えー・・・・白浜、全然動かないじゃん。このまま今日は退散するか? いや、それはなんだかおかしい気がするし・・・・。どうする?そろそろ背伸びは時間的に限界だぞ。早く立ち上がってくれ、白浜。進行役の先輩からの冷たい目線を浴び過ぎて致死量超えちゃうよ。先輩の視線にビビって白浜が座っている席に背を向けてしまう。背伸びはもう出来ない。次は屈伸?スクワット?どうしよ神様。人生ここまでですか?
後ろから先輩の足音がコツコツと聞こえ始める。もう教室で待とうと理性的な案を弾きだした脳を褒めつくし、さっさと会議室を去ろうとした刹那。白浜が椅子から立ち上がる音がした。よし、もうここしかない。
振り返り、さも冷静さと平然さを保っている風に声を掛ける。
「白浜、帰ろぅ↑~」
あ、上ずった。先輩は日本語からかけ離れた発音に驚きを隠せていないし、白浜はそんな俺の声なんて聞かずに、「よしっ!」って立ち上がって深呼吸をしている。あれ、俺、死んで良いですかねぇ!?
「永峯くん。帰ろ」
俺の言葉なんて聞こえていなかったんだね!まぁ良いけど!
頬を赤らめながら近づいてくる白浜。目は合わせてくれないし、こちらも何故だか頬が熱くなってくる。
あ、口元を必死隠して笑いを悟られないようにしている先輩は許さないからな。覚えておけよ。
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