第2話2
教室に入る。当然のことながらスタンディングオーベーションなんて起きやしない。何故かって?そんなの言わなくても分かるでしょ。いわゆる陰キャという部類に属していて・・・。いや、例えクラスの中心人物でもスタンディングオーベーションは起こらないか。
ともかく、永峯寛樹は休み時間を自分の机で過ごし、大して仲の良い友達もいないクラスで目立たないタイプの人物である。
・・・・嫌われている訳じゃないからね? ちゃんと数人は友達が居て・・・・。
・・・友達?どこから友達なのだろう。休憩時間にすれ違ったら話す程度の関係のこと?それとも、体操服を忘れる時だけ貸して貰おうとやってくる隣のクラスの田中みたいな関係も友達っていうのかな?
鞄の中から取り出した教科書を机に積み上げる。積み上げた高さが、人間関係の怪しさと比例するように感じてしまうが無視を決め込む。
いつかは俺にも出来るだろう。中学の同級生がいない高校に入学してしまい、数ヶ月。気に病むにはまだ早い。
きちんと時間割通りに教科書を机の中にしまうと暇な時間が出来上がる。
窓が直ぐ隣で、一番後ろの優れた立地にある席。特権を使用しない手はない。
窓の外からは海がよく見える。距離もそこまで離れておらず、窓を開けると必ず潮の匂いが教室を包む。
いや、格好よく伝えたけど、実際には潮臭い。何が特権だよ。窓側で開けると臭いが浜風に乗ってダイレクトに身を殴打するから不良物件だよ。
文句を思いつく限り並べていると、隣に誰かが座る気配が伝わる。
見ないでも分かる。その名は白浜柚茶。
黒い髪を肩まで伸ばし、整った顔を持つ女子。個人的な第一印象は姿勢が良い、と感じたのを覚えている。
評価者は誇れるような顔をしていないが、白浜柚茶は充分に美人と言われる範疇に入っているのではないのだろうか。
「おはよう」
そんな彼女は”明らかに”不必要なスキンシップを。肩に優しく手を掛け、挨拶を投げかける。
「・・・・おはよ」
彼女の顔を見ないでも分かる。絶対に嬉しそうに笑っている。それも、誰も目にしたことのない笑顔で。
軽くホラーだ。彼女が特定の相手と仲良くしてる姿を見たことがないし、彼女が誰か俺以外と話している姿は指で数えるぐらいしか見たことがない。さらに、近寄りがたさすら感じる。
ただ我ら陰キャとは訳が違い、生徒会に一年生ながら所属しており、新入生総代も務めている。
いわゆる”認められた”孤高の存在である。
そんな彼女が何故か優しい。不自然な程に。
いったい俺が何かしましたか?
もしかして生き別れの妹とかですか?そうなら早くそう伝えてください。
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