短編読切「シェルター」
何を守るためのものだろう。
いつものホーム
ふとそんなことを思った。
もちろん意味は分かってる。
電車での自殺は
想像以上に多くの人への
迷惑をかけるのだ。
それは分かるけど
このまま電車も橋もビルの屋上にも
シェルターがつけられたら
どうすればその人は救われるだろう。
生きている限り望みはあると思いたいが
人生はその人しか歩めない。
あまりにも、無責任だ。
ただ僕は思う。
その人の声が聞きたかった、と。
近頃は芸能人の自殺も増えた。
なぜ、どうして。
そう思う人が大半だっただろう。
それでも
そうだよな、辛いよな。
生きるって、簡単じゃないよな。
そんなに苦しかったんだな。
僕はそう言いたいと思った。
それは、普遍的な
人類のテーマだろう。
ただ生活しているだけの人なんて
本当にいるだろうか。
その人の努力を、やりきれなさを
支えてやることはできても
最後に自分を救えるのは
他でもない自分ではないか。
ようやく電車が来た。
シェルターが開く。
これは電車に安全に乗るための
優しい柵なのだ。
その優しさが少し
チクリと胸に刺さった。
そんな朝だった。
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