最弱という最強の人種
バブみ道日丿宮組
お題:最弱の接吻 制限時間:15分
最弱という最強の人種
誰しも弱点がある。
たとえ神話で無敵の戦士であろうとどこかにある。脆い部分。人間族は一番心が弱い生物だ。長年エルフとして共に過ごしてきたが自ら死を選ぶことが多い。
社会の環境に適合ができない生物と呼べるのかもしれない。強さは知識がある程度……それ以外に目立ったものはない。
巨人族のような巨漢、翼人族のような滑空、エルフのような魔法、地底族のような建築学。
「(だから生き残れない)」
魔法で隠形して仲が良かった人間が死ぬのをみた。
吸血族……いわゆる人の生命力を吸い上げる生命に吸われた。
とはいっても、全部の生命を奪うことはしない。自分のお腹がいっぱいになるまで。そこが人間との違いだ。
人間は欲深く、必要以上の領地を、必要以上の物資を欲する。
そういう意味でとらえるならば、欲が強い生命といえるのかもしれない。
だが……そんな欲は最弱の生物にとっては脅威でしかない。
テリトリーに踏み込んでしまえば、あっという間に滅びる。
「……」
私の中に残った因子がハーフエルフとして新しい生命の希望を作る。そのためにあえて他の生物との接触をした……が吸血族には餌としてしか認識されなかったようだ。
言葉は届いた。
しかし、交わりあうことを拒まれた。
会話に成功していれば、至高の接吻になったであろう。
結果は無残なものだ。
倒れて、痙攣してる。
満足した吸血族は、翼を広げると飛んでった。
私は十分に警戒し、ある程度時間が経過した後、私のお腹の子の親となった男の側に降りた。
「まだ続けるつもりか?」
「……当然。そうしなければ滅びるのは見えてる」
だが、と男はこちらに手をのばす。
「そのことに気づいてる人間は少ない。そして手助けをしてくれる種族も少ない」
「私のような変わり者以外は交わらないだろうな」
「そうした人材は他にもいるはずだ」
男は笑った。
やり方は間違ってはいないのかもしれないが、見ず知らずの者に抱かれるというのには抵抗があるのはアタリマエのことだ。
種族差、生命力、遺伝子。
いろんな要素が見えない限り、毒物と変わらない。
最弱の生物と思われてるが、抱かれたり、接吻されることは最強に近い。
「ふふ、頑張ってくれ」
だからこそ、私は面白いと感じ、子を身ごもった。
再び隠形魔法を展開すると、男の後を静かに追った。
最終的にいえば、男はかなりのハーフを作ることに成功した。
そして人間族はある意味で絶滅した。
最弱という最強の人種 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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