そこまでして作りたいかね。

 異世界転生・転移モノには往々にして手垢のべったりとついた展開が数多く存在する。

 神から最強の能力を与えられたり、ステータスがカンストしていたり、現地でパーティから追放されたり、奴隷を買ったり、ハーレムになったりetc……。

 なかでも現代知識を用いて無双するタイプの作品だと農業に関する知恵だったり、建築に関する知恵、はたまた食生活の文化を持ち出して現地人をアッと言わせる展開が山ほど存在する。

 そして個人的にどうしても許容しがたい、なんでそうまでして作りたいんだよそれをというべきものがある。


それはマヨネーズである。


 実際の作り方がどうかは知らないが卵とお酢があればできるらしく、多くの人間の心をつかんでやまない調味料の代表格だ。

 今や手垢が付きすぎてというより異世界転生の流行りに知識で無双するというのが廃れたためにあまりお目にかからなくなったが、転生した主人公が現地で材料を集めて作るという展開が散見された。

 マヨラーというありとあらゆるものにマヨネーズをかける人種が存在するだけあってその中毒性とお手軽さはかなりのものなのだろうが、かくいう私はそのマヨネーズが好きでない。

 つけた瞬間、その料理を根底から覆さんとする味わいは料理人に対する冒とくともいえる。いやそこまで食通というわけではないが……。

 しかしあの濃い味代表ともいえる調味料は個人的には如何ともしがたく、何故異世界転生までして作ろうというのか理解に苦しむのである。

 確かに異世界転生モノでは専ら文化と技術の水準が低く設定されており、食事の文化が開拓されていないであろうことから現代人準拠の主人公では食事の簡素さに故郷の味を懐かしく思ってしまうのかもしれないが、その故郷の味がマヨネーズでいいのかと。いくら転生する前は親とうまく和解できていないといえど、おふくろの味がそんなことでいいのかと。

 なんにでもあってしまう万能調味料というだけに愛されるのかもしれないが私はあの濃い、甘いのか酸っぱいのかよくわからない味が好みでない。じゃあマヨネーズが入っているものを食べないのかと言われたらそんなことはない。というより現代の加工品でマヨネーズを避けることができるわけないから内心「邪魔なんだよな……」と思いながら手を付けている。


 転生した先で何を作ろうと大して気にはしなかったがマヨネーズを作り始めたときだけはブラウザバックをしたくなる。どうしてそこまでして作ろうとするのか……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る