どういう小説が書きたいのか

 小説を書きたいという理由でこのエッセイを始めたわけだが、もちろん書きたい物語というものがあってのこと。

 内容的にはライトノベル寄りでファンタジーとかSFとか青春群像劇とかである。

 刑事ものやミステリーものもいいなと思うことはあるけれどこの辺りは地頭の良さだとか警察組織や世の仕組みの知識が必要になってくるので現段階では少々ハードルが高い。いや、かなり高い。

 時代劇やノンフィクション等もジャンルとして存在するがこの辺りは全くと言っていいほどに興味はない。なんて教養がないことだろうか。

 それになんだかんだ言っても一番影響を受けたジャンルがあるからこそ小説を書きたいと思ったわけでひとまず興味のわかないジャンルは無視していく。

 

 小説投稿サイトの存在を知ったのは「魔法科高校の劣等生」の著者が「小説家になろう」というサイトに投稿していた本作を、出版社に目をつけられたというあとがきを読んだから。

 「小説家になろう」のランキングでは近年(2021年現在)アニメ化された「無職転生」や「盾の勇者の成り上がり」が上位に存在するころで、リアルではソードアートオンラインがヒットし、その影響を色濃く受けてか異世界転生・転移モノとVRMMOモノが鎬を削っていたように記憶している。このあたりのジャンルの偏りが既に出来上がっていたが、作品のタイトルがまだ記憶できる程度に収まるくらいの時代だった。

 とりあえずどういうものがあるのか通学の時間にサラッと読んではおおよそこんなものかと知見を広めていた。

 私自身の検索の仕方がアレだったので浮上してくる作品はファンタジーまみれで、一般文芸というよりはライトノベルに近い作風が圧倒的に多かった印象を受ける。その中でもやはり異世界に転生という話がジャンルを築くまでになっていたことに衝撃を受けた。

 なので書きたい話の中に異世界転生物が第一に湧いてきた。

 インスピレーションを受けたときはとりあえず主人公がバスなりトラックなりで轢かれて死んで、神様が「とりま異世界にいってもらう」と魔法が使える中世ヨーロッパみたいなところに飛ばされて~といった如何にもな感じで構想していたのだが、いざ考えてみればまぁ難しい。

 本来ならば異世界の構築に世界全体の様相や生態系、これらがもたらした文明や技術体系などを設定していき、作風によっては文明に根差した登場人物の文化までも浮き彫りにしていくのだろうがこの作業が考えれば考えるほど果てしない。

 思いついた設定につじつまを合わせたり合理的な理由付けができず、いつまで経っても執筆にありつけないまま時間だけが過ぎていった。

 登場人物の行動理念もいまひとつ説得力に欠け、キャラクターとして矛盾まみれで芯がない。

 そういう諸般の事情をうまくかみ合わすことができず世界観の構築すらままならなかった。

 これはプロアマ問わず指摘される至極当然のことだったのだが、異世界の設定は非常に難易度が高いのである。

 ところが現在の異世界転生物はある程度は読者の共通認識を前提に世界を構築しており、話の展開もおおよそ似たり寄ったりときている。

 いわゆるテンプレートされた展開のことであるが、正直私はこのありきたりな展開が嫌いではない。ただし見る分においてではの話である。

 

 自分が創作するならば不朽の名作のように、オリジナリティを前面に出して自分が満足できるような作品にしたい。複雑な人間関係を描きたいとか濃密な世界観を繰り広げ壮大なストーリーにしたいだとか。

 これは私が書いたものであると認識されるような個別性のある作品が書きたいのだ。

 こう書けばあたかも私だけが殊勝な心構えをしているように感じられるが、もちろん今執筆されている方が皆同様にテンプレート化された話を好きで書いているわけではないということも理解している。

 将来的に副業として書籍化を目指している人や自分が本来書きたいものを見てもらうために読者を集めたい人。

 中には読まれなくてもいいから妄想を具現化したいんだよという人もいるはず。

 各々思惑があって執筆されていることだろうと思うし私が挙げた理想はだいたいの人がそうだろうということに尽きると思う。皆駄作を作りたいわけではないはずだと。

 仰々しく書いておいてとどのつまり「自己満足」というのが私の書きたい小説である。今のところ何も物語を紡いでいないが……いうだけならタダだろう……。

 異世界転生モノにしたってトラックに轢かれるところまでは同じでも、自分が満足できるなら転生した先でやることがテンプレートでなくてもいいわけで……。

 昨今の自動車情勢的に自動運転や自動ブレーキが一般普及すれば交通事故すらフィクションになりうるなら、病にやられてもいいはずだ。

 作品のジャンルは有り体でも展開が自分なりに満足できればいい。そうでなければ何のために始めたのかもわからなくなってしまう。


 あくまで己の妄想を再現することにこだわりたいわけである。


 

 

 

 

 

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