第5話

 結論から言おう。


 高宮さんからは特別攻撃を受ける事はなかった。


 なぜなら、それとは別の問題が俺に投げかけられる事になったのだ。




「実はクラスの男子全員にしているんだけど、私達の中の誰ならハーレム入り出来る? 勿論今までの事を本気で反省しているなら真面目に答えるよね」




 と、圧迫面接顔負けの圧力で言ってきたのは、クラス一の美少女と俺は感じている委員長の赤井あかい佑衣子ゆいこだ。


 で、周りに並んでいるのが竹本たけもと茜あかねと林はやし真琴まことと金田かねだ貴子たかこと4人だ。


 そこに、しれっと高宮さんも近づいていたのだけど、一歩離れて見ているからたぶん選択肢外なのだろう。たぶん。




「分かった。真剣に考えるからちょっと待って」




 滅茶苦茶緊張はしているのだけど、あまりに緊張状態が続いて俺は逆に少し余裕が出てきた。


 だから、そう口にして改めて4人を見比べる。




 まず赤井さんだけど、その赤い長い髪と緑の瞳が幻想的で、そして守って上げたくなるようなふんわりとした雰囲気を纏っている。


 いや、彼女の発言からどちらかと言えば気が強いのだろうと思うのだけど、見た目だけはほんと可憐な美少女なのだ。


 大半の男から見ても小柄だから、なおさらだ。


 そして、爆乳。たぶん4人の中で僅差で一番目か二番目だと思う。


 まあ、俺はぶっちゃけると胸はそこまで重要じゃない……と言うか、どんな見た目よりも性格が良い子が良い。


 ほんと女の子怖い……。前世でも今世でも今まで感じたことないんだけど、この迫力で囲まれたら本気で思うわ。


 怖くない女の子が良いってね。




 それそうだからともかく見た目を確認していこう。


 次に竹本さんだが、彼女の青い髪もめっちゃ奇麗だと思うし、ほんと美人だと思う。切れ目で少し怖い印象を受けるくらいだけど、俺のイメージ通りのクールビューティーって感じだ。


 身長は多分前世の俺より少し高いくらいだろう、クラスの女子の中では一番だ。


 まあ、身長の高さもこの際どうでもいい。身長の高さで好き嫌いは前世の頃からないから。


 同様にスレンダーで胸も控えめなのも、ぶっちゃけ爆乳とどちらも好き度は一緒だ。


 だから、その、紫の瞳でゴミを見るような目つきはやめて。つらい。


 確認するためには全身見なきゃいけないから、ほんと許して。




 林さんは、なんというか。普通だ。


 黒目黒髪なのも、アイドル顔負けの容姿もこの世界ではインパクトがあるのだろうけど。ぶっちゃけ黒目黒髪ってだけで前世が色濃く出ている俺にはなじみ深くて、凄く安心する。


 と言うか、凄く好き。


 俺黒目黒髪が好きだったんだな。


 まあ、彼女のみニコニコと含みのない笑顔浮かべてて害がなさそうってのも滅茶苦茶ポイント高いんだけど。


 うん、身長も丁度クラスで真ん中くらいだし、体型も腕や足を見る限り少し痩せすぎかなってくらだ。


 いや、おじさんから見たら皆痩せすぎって感じるだけで、彼女達からすると普通なのかもしれないけど。


 今世の感覚で感じようとしてみて……あ、あいつ完全に消えたかな? 全く分からん。




 今世の俺が完全に消えたかもしれなくて少し嬉しくなりつつも、続けて金田さんを見る。


 奇麗な金髪碧眼で爆乳の美少女。でもめっちゃ和風の顔つきで、でも少なくとも俺には一切違和感はない。


 まあ、この世界では爆乳はともかくありふれている容姿だろう。


 と言うか、赤井さんとそこまで差が分からない。強いて言えば金田さんが身長が少し高いくらいかな?


 いや、まあちゃんとジャンル分けは出来るか。




 おっさんの俺の感覚からすると、ほんわか小柄美少女赤井さん。長身スレンダークールビューティー竹本さん、ザッ女の子林さん、和風美少女金田さんって感じかな。


 因みに高宮さんはボーイッシュガール高宮さんってところかな。竹本さんと違って凄くスポーティーな感じがするんだよね。


 で、個人的な好み順で言えば林さん、赤井さん、竹本さん、金田さんって順番かな?


 高宮さんからは嫌われているから、そもそも選択肢に入れるなんて恐れ多い事は出来ない。


 うん、なんか今ジト目で見られているし。怖い。


 とはいえ、ハーレム入りの視点で見るならって話しなら――




「えっと、ハーレム入り出来るかどうかって話なら。見た目ならそもそもこのクラスの女子で出来ない子は居ないな。って言っても性格が合うかどうかの方が俺は重視しているし。そもそもの話誰かと付き合ってたりハーレム入り決まっているならNGだな。あ、でも別れたりハーレムから外れたりした女子と付き合えないって事はないぞ」




「へー、じゃあ決め手はなにになるの?」




 あ、あれ? なんか凄く空気が重いんだけど?


 なんか、目の前の4人だけじゃなく、高宮さん含め他の周りの女子からの視線も冷たいって言うか。


 俺なにか間違えたのか? いや、正直に答えてダメならもう仕方ないだろう。


 あれだ、生死も関わってくるし、望みがない子しかいないのにしがみつくほど余裕ないし。


 高校時代に付き合えない時点で割と不能&無能の烙印が押されるとか、本当か分からんネット情報とは言え嘘じゃなかった場合のリスクでかすぎるしな。


 いかん、ビビッてまた関係ない事考えちゃってたから早く答えなければ。




「そりゃ、さっきも言った通り性格が合うかどうかかな。見た目が好き嫌いとか、どうしてもある程度は出ちゃうだろうけど、それ以上に好きって思えるかどうかだと思うし。いや、俺が好きって思ってても相手も同じ気持ちじゃなきゃ当然付き合えないと思うし、好かれても俺が好きって思えなきゃ、そりゃ、ごめんなさいってするしかないと思う」




 言いながら、勿論リミットギリギリで好きですって告白されたら頷くかもしれないけどと、心の中で呟いた。


 命には代えられないから……っても、出来れば好きあって付き合って子供作ってってして、それで死亡回避出来たら一番……なんだな俺。よく分かってなかったけど、なんか前世からの理想みたいな感じがするし、しっくり来たわ。




 一人勝手に納得してたら、再び赤井さんが口を開いた。




「じゃあ好きって思えた相手しか勃たないの?」




「……え、ごめん。タツってなにが?」




 脈絡が全くない質問に思えてしまって、ふと意味が分からない事を問い返す。


 すると、赤井さんの顔がびっくりするくらい真っ赤に染まった。


 え? なにその反応? って、まさかタツって勃起の事? いやいやいやいや、そんな事女の子が口にしたらダメだろう。


 自分自身も恥ずかしさから真っ赤に染まるが、赤井さんから凄く睨まれてしまい。また、周りの女子達からも攻めるような視線を向けられている気がして俺は口を開いた。




「えっと、勃ちます。と言うか、そこは好きじゃなくても勃っちゃうって、俺も年頃の男子なんだし」




 滅茶苦茶恥ずかしいけど、圧力に屈した俺はそう何とか言葉にするところまではできなのだけど。一斉に女子全員から唖然とした表情を向けられてうつむいてしまう。


 なんだよ、いくら今まで酷かったとしても……うん、まあ仕方ないかな?


 マジでおはようって言われただけで、黙れブスお前の穢れた声を聞いたせいで俺の耳が潰れそうだし、目は潰れたわ。さっさと死んでくれねぇ。とか言ってたからな。やんわりした方で。


 うん、今世の僕死んでも自業自得じゃねぇんかな。


 何故か鮮明に今世の僕の犯した過ちが蘇り、縮こまって遺憾の意を全力で俺は表した。


 こいつの人生を乗っ取る以上これは致し方ない。甘んじて受け入れよう。




 その後10分の短い、しかし俺にとっては鬼のように長く感じる休み時間に誰も言葉を発する事はなく。


 つまり、ただただひたすら女子達からの蔑みの目を受け続けたのだった。


 いや、顔上げられなかったから実際は知らんけど、あの息苦しさはあってると思う。

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