やはり、彼はとても寂しそうだ。







岸本は17とかの若い時にこの業界に入り、当時はとても人気で引っ張りだこになっていたりしたのだが、今じゃ全然売れていない。

半月に1回仕事があれば良いくらいだ。

幸いこの家は小さめの上に中古のを買い取ったため借金とかはないが、収入がないとさすがに死んじゃうので、今はアルバイトをして生活の足しにしている。




「岸本優希、今は全然売れてないからバイトしてる」


「岸本、さん」


「これでも昔は人気だったんだ、でも時代に置いてかれちゃったよ」



君の名前は、と聞けば男は慌てたように言う。


「僕、春巳って言います。佐藤春巳」


「春巳くん、大学生って言ってたけど、美術大学?」


「いや、普通の大学です。でも、もう辞めようかなって…」


「え?」




春巳は少し困ったように笑い、眉を下げる。


「行ってても意味なくて…僕、本当は美術の大学行きたかったけど、行けなくて…」



春巳は、だめだなぁ、とため息をつく。


やはり、彼はとても寂しそうだ。





「…お風呂、沸いてるよ」


「え、ありがとう…ございます」


「お茶も用意しとくから、風呂から出たら突き当たりの部屋においで」




岸本は、春巳の話が聞いてみたくなった。









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