第19話

「何があったッ!?ベニー!!おいっ、返事をしろっ!!」


 携帯は途切れた。ベニーの叫び声と共に。

 ケイスはリンナ達に話の内容を説明する。


「とりあえずベニーは、地下4階で何かヤバい物を見たみたいだ。そして最後に『アンタか』と言った後、『モルティングマン』と言おうとしながら叫んだ。シケイダかブロンドが現れたんだろうか?」


「それは分かりませんが、知ってる人物にモルティングマンが扮してた可能性は高いようですね。急ぎましょう」


「悪いが先に行くぜ」


 ケイスは何時でも出動できる準備をしていたので、カービン銃を担ぐと一足先にオフィスルームを駆け出た。リンナはルーム内に置かれていた大きなライフル型のエアガンを手に取り、中に注射筒の弾を仕込む。その間、ヒットガイも準備は出来ていた


「ヒットガイさん。私達も行きましょう」


「あ、あの……ア、アタシは?アタシはどうすれば……」


「あなたはココに残り、研究所内に連絡を!局やレンジャー隊にも報告しといて下さい」


「わ、分かりました」


 リンナとヒットガイが出て行った後、ジェミーは言われた通りに報告を入れようとしたが、心臓が破裂しそうなぐらい鼓動が高まっていたので、先ずは深呼吸をしながら不安を鎮めた。そこに来客が現れる。


「どうしたんだ?皆んな急ぎ足で出て行ったけど、何か有ったのか?」


「あっ!!ちょうど良かった!実は別館にモルティングマンが現れたみたいなんです?」


「何だってっ?!別館にモルティングマンが?!」


「はい。ベニーが地下4階で何かを見たそうです。それが、どうやら誰かに扮したモルティングマンらしいんです」


「地下4階?ベニーは地下4階に行ったのか?」


「はい。ベニー、大丈夫かしら?私、心配で……」


「大丈夫。君もベニーも一緒に纏めてあげるから」


「えっ?何を?」


 ジェミーがそう聞き返した瞬間、彼女の胸に異様な黒いチューブが突き刺さった。そして悲鳴を上げる間も与えて貰えないまま、その身体はどんどん痩せ細っていく。彼女は体液を吸われているのだ。


「あああ、ミ、ミネ……ハタ……博士。ア、アタシ、やっぱり……役立たずでした……ごめんな……さい……」


 無抵抗のまま力尽きてきた彼女に、更なる追い打ちがかかる。今度は両の眼球と両耳内に謎の細いチューブが突き刺さったのだ。そして、そのチューブに脳まで吸い取られたジェミーは、呆気なく絶命した。

 ほとんど骨と皮だけに成ったジェミーの死体が床に崩れ落ちる。

 来客はそれを一瞥すると、感情の全く籠もってない声で独り言を言いだした。


「見つかったか。まあ、時間の問題だったしな。それに、どうせ今日は祭りの予定だからちょうど良いか。厄介だから一応、別館の監視員も今から殺しとこう。いや、ついでだし研究所内の人間も全員殺すか」


 そう言いながら来客は、死体と成ったジェミーの首を切り取り、頭部の皮を無理やり剥ぐと、それを白衣の内側に貼り付けた。そしてリンナのオフィスルームを後にし、研究所内を隅々まで歩き回り始める。殺戮を行なう為に……。



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