1-4 想像よりずっと可愛い

「・・・アマンダ」


レインは目を細め彼女を見つめた。


「あら。レインじゃない。久しぶりね」


「誰だそいつ?」


「ただの同期だ」


「同期!」


「そうよ。私が赤ずきんのアマンダ」


「なんか想像と違うんですが・・・」


「想像よりずっと可愛いでしょ?」


「想像よりずっと可愛くない強さですね・・・」


「あーあ。躾がなってない狼がまだこんなところにいたなんて」


アマンダはそう言うと、さっき打った狼の血をぴしゃりと踏んだ。


ラピスは思わず顔を引きつかせた。


「デューク伯爵は元気?」


アマンダは意地の悪そうな顔で、レインにそう聞いた。


「・・・」


レインは無言でアマンダを睨みつける。


「冗談よ。見る限り、組織を抜けたみたいだし」


「察しがつくなら聞くんじゃない」


「ああ、抜けたんじゃなくて、ターゲットになったのね」


アマンダの言葉が、レインの怒りにに拍車をかける。


「一生かけて追われる身」


レインはギリギリと拳を強く握った。


「そんな重い鎖に繋がれた彼女と一緒にいるなんて・・・。命を粗末にしすぎじゃないかしら」


アマンダが嫌味ったらしくそう言うと、ラピスは顔色一つ変えず言い返した。


「バカだなお前。重いもん背負って歩くってことはそれだけすげえ奴ってことだろ」


「は?」


「でもな、ただの錘としてしか思ってねえ奴、連れ歩くほど俺は親切じゃないんでね」


レインはラピスの発言に目を見開いた。何を真面目に言い返しているのか。しかも、味方みたいに。レインはラピスの馬鹿らしさにふっと笑った。


「ああ。それに私は減量中だ」


「減量中?笑わせないで。ダイエットの話じゃなくて」


「喧嘩売ってくるバカを片っ端からぶった切って減量してんだ。バカな奴らが消えていけばちょっとは軽くなるだろ」


「私もそのバカの中に入っているのかしら?」


「ご名答!」


レインは次の瞬間、アマンダめがけて切りかかった。アマンダは素早い身のこなしでよけると、体制を立て直すべく、木の後ろに隠れた。


「ラピス、よく聞け。明らかにおかしいことがある」


「ああ。あんなダイナマイトボディの姉ちゃんが童話の赤ずきんのわけねえ」


「ああそうだな赤ずきんといえばただの可愛らしい幼女で決まりだろう。ってバカか、真面目に聞け!さっきの銃弾、明らかに遠方からの狙撃だった。それなのに、奴は近距離から攻撃をしかけてきた。この意味が分かるか」


「敵はあいつだけじゃねえのか・・・?」


「ああ。狙っているのはアマンダだけではないかもしれない。私がアマンダを引きつける。お前は狙撃手を見つけろ」


レインはそう言うと、アマンダの隠れている方角に向かって走って行った。


 アマンダは右手にナイフ、左手にピストルを持ち、身を隠すどころか、レインを正面から待ち構えた。レインが斬りかかると、その剣をナイフで止めた。


「ふうん。しなやかでそつのない身のこなし。それでいて一つ一つの攻撃に重量感もある」


「そんな短剣で我が剣を受け流すとは。随分余裕だな」


レインがそう言うと、アマンダはピストルを3発続けて打った。レインは驚きを隠せなかった。アマンダはレインの反対側に向かって発砲したのだ。


「ええ、余裕よ。・・・ふふ。獲物が逃げれば逃げるほど楽しくなるわね」


アマンダは可愛らしい顔で、満面の笑みを見せた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る