ショート:獅子龍 白鯨と妹の関係
脂汗を垂らしながら夜道を歩く男がいた。片手にはゲームの入った袋ぶら下げており、宝物でも運んでいるかのように注意しながら持っている。
小太りの体のせいで、アニメキャラクターが描かれたシャツは引き延ばされており、同じオタクが見ても原型が分らないだろう。秋の夜だというのに指ぬき軍手は汗で湿って、眼鏡も曇っている。
わざと街灯の無いような住宅街を歩いていくと、彼の家の前に一人の少女が座り込んでいるのが見えた。さらりと伸ばしたブロンドヘアー。白鯨とは違って全体的に貧相な体つきであり、それなりに背丈が高いせいで、細身のアイドルのようだ。
今でこそ、風呂上りのためほのかに湯気だたせながら、羽毛のような寝間着を纏っているが、服を着替えればアスリートのようにも見えるだろう。
彼女の名は
現在高校二年生であり、奇しくも悠と同い年だ。
「お兄ちゃん、遅い!!心配したんだけど。」
「ごめんでござる。」
小走りで白鯨の元まで駆け寄ると、少し距離を開けて隣を歩き始めた。最初期と比べて、姫蘭を拒絶することはなくなり、直接触れることさえなければ平気になっている。
白鯨の中では、最も距離の近い女性であり、唯一親友の量と同じぐらい信用している人物だ。
また
「おにいちゃん、この読モがやってるやつやりたい!!」
「ええー。むりでござるよ。そんなに器用な方じゃないんだから。」
彼女のわがままや駄々をこねるのは今に限った話ではない。昔は恐ろしかった彼女のわがままも今ではかわいいと思うようになっている。
無理だとは言いつつ、苦手な女の写真をしげしげと眺めて結び方を覚えるのが彼の日課であった。
「これでいいでござるか?」
「うーん。これ、私に似合う?」
手鏡を動かしながら首を傾げる。あくまで軽く結った程度で少し動かせばほどけてしまう。気に食わなかったのかもう一度とは要求せずに、髪を払った。
「もういいや。ありがとお兄ちゃん。おやすみー。」
「おやすみでござる。」
明日も学校がある姫蘭は自室に戻った。それに対して、フリーのエンジニアとして引きこもりをやっている白鯨は量からのゲームの招待を受けて、今日も夜遅くまで起きているのであった。
……to be continued
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