自称有能プログラマーのワイ、ブラック上司から無能認定されクビを宣告されるもノーダメージ。家に帰れば巨乳美少女JKが全肯定してくれます!!
シリアスはやりたくなかったけど、物語の都合上仕方ない部分もある。
シリアスはやりたくなかったけど、物語の都合上仕方ない部分もある。
「女の分際で…」
それがあの人の口癖だった。私が何かをすると決まって向けられる、否定と侮蔑を孕んだ言葉。
あの人がいらだった様子で帰ってくるたびに、見つからないように、怒鳴られないように、罵られないようにと、隠れて過ごしていた。
顔や体に暴力を振るうことはなかったけれど、手足ならば平気で叩かれてきた。
本当に痛かった。辛かった。
でもそれ以上に、必要とされなくなるのが怖くて、たまらなく嫌で。必死に役に立てるようにと努力してきた。
「おい、息子がいる売女を見つけた。もしかしたら再婚するかもしれない。」
あの人からそう聞かされた時、私の頭の中は真っ白になった。あの人が私と育ててきたのは、いつか自分の最後が近づいた時に会社を任せられる人物の嫁にするため。
正確には、婿養子として引き取るための道具だ。
「今は別な会社でサラリーマンをやっているらしいが、探偵に調べさせてみたら、なかなか合理的で好人物らしい。あのアバズレから出来た息子が生まれたのは驚きだが好都合だ。」
「それじゃ、私は…?」
もし、あの人が再婚して、相手の息子が社長になることを承諾したら?
「お前は必要なくなる。安心しろ。どこかに嫁がせるか、相手の息子さんの世話係でもしてればいい。」
自由には…なれない。
「女なんて、合理的思考を持たない劣った人間だ。だが、お前は俺が育てたおかげで他の馬鹿どもよりは少しだけ賢い。だからわかるだろう?」
大人しく利用されろ。言外にそう告げているのだ。
私には黙ってうなづくことしかできない。これ以上見放されてしまえば、私に生きている意味はなくなる。私にとって父とこの家は、世界そのものだ。
「泉 悠さんですね。〇〇警察の者です。非常に申し上げにくいのですが、お父様が……」
ある日突然やってきた警官二人組。彼らによって私に人生は大きく変わった。
待ち望んでいた、あの人からの解放。それと同時に襲い掛かってくる、名づけられない恐怖。私はこれからどうなってしまうのだろうか。女一人でどう生きて行けというのか。
「お父さん、教えてくださいよ。頭いいんでしょ?合理的に考えて、私はどうすればいいんですか…。」
焼却された遺体を見つめながら、わけもわからずに涙を零す。怖くても、嫌いでも、この人は私の父親だったのだ。世界でたった一人だけの。
打算とはいえ、私を必要としてくれていた唯一の人だ。
殆どの家財や父の物は、会社の人たちとやらが持ち去ってしまった。
だが、残された書類の中に、
鋭い目つき。誰も信用していないような。全てを敵と思っているような顔つき。どの写真を見ても、表情を崩さず、まるで感情を奪われているようだ。
この人ならば…?
私は卑怯者だ。一人になるのが怖くてこの人の下へ行こうとしている。
あの目を知っている。合理的にものを考える人の目だ。一切の非合理を嫌って、排除して、かんしゃくを起こした時だって理詰めで来る目。
「だったら、対処は出来る。合理的に考える人なら、間違えない……。」
全日本児童健全育成委員会だとかいう機関に電話を入れる。父の遺品整理が終わって、どこか引き取ってくれそうな親戚を見つけたら連絡を寄越すように言われていたからだ。
「泉です。引き取ってくれるかはわからないんですけど…」
これは賭けだ。この寝不足気味の男が、あの人と同じ合理主義者であるのなら、私を利用できると考えるはずだ。どうせ女に自由などは手に入らない。だったら、たとえ檻でも頑丈で強固で私を守ってくれそうな相手を選ぶべきだ。
その方が、合理的だから。
ふと目を覚ます。微かに枕が湿っていて、目の端から雫が零れていった。どうやら泣いていたらしい。軽く目を擦って拭ってみたが、何が悲しくて泣いていたか思い出せない。
「ああ、昨日量さんを膝枕して…。」
いつの間にか量さんは床で寝ていた。たいして私はベッドに寝かされている。
途中で起きたであろう量さんがやってくれたのだろう。おかげで私は寒い思いをせずに済んだが、何もないフローリングに寝転ぶ彼は、寒そうに丸まっている。
まだ秋前半とは言え、地べたの冷たさを感じながら眠るのは寒いだろう。さすがに彼を引っ張って寝室まで連れていくことは出来ない。勝手ながら彼の寝室へと入って羽毛布団を持ってくる。彼の上にかぶせてやると、かすかに食いしばっていた歯が緩んだ気がする。
「まるで子供を育てているみたい。」
この人は確かに合理的だ。だが、どこか非合理に憧れている節がある。
だとするならば、
あえて実利や合理を見逃す彼を、私なら救ってあげられる。非合理な女の中でも、ほんの少し合理を知った気でいる私ならば救える。
こうして必要とされるのは、そういう意味であるはずだ。
……to be continued
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