Chapter13:黒い計画をぶっ壊す! ④
「どうせ捕まるなら、貴様も生かしてはおかん――私たちは
(俺もいるのに愚かな真似を……)
ひたすらダルいが、市長を助けてやるか――
待てよ。
これまで散々調子に乗ってきた市長にはいい薬なのでは?
市長は早く助けろとアイコンタクトを送ってくるが、気づかないふりをして目を逸らした。
「ほら、早く死ねよクソジジイィ……!」
「あが……」
黒杉は手を休めることなく、ギリギリと市長の首を絞め続ける。俺もギリギリまで粘る。チキンレースや。
「もう少しで三途の川だぞ。楽しい旅行になるな……っ」
市長は白目を
「ぐおほっ!」
俺は黒杉の背後に回り、左こめかみを思い切りぶん殴った。
本当は後頭部にしようかとも考えたが、後頭部は即死もあり得るのでやめた。さすがに殺人者にはなりたくないからな。
黒杉が床に
「助けるの遅ぇーよ! 俺に恨みでもあんのか!?」
「今まで散々煽られてバカにされた分を一括払いしてもらいました」
俺の心境を理解した市長は渋い顔をすると、
「ふん。今後もお前をディスって貯金を稼いでやるよ。この中卒が」
「堂々巡りっすね」
いつものごとく俺を小馬鹿にしてきたので応戦する。俺たちはいつもこんな関係だ。
「貴様ら……」
二人で言い争いをしていると、こめかみを押さえてよろよろと立ち上がった黒杉がスマホを取り出した。
「最終手段だ――おい、出てこい」
黒杉が何者かに合図を送ると――
黒服を着た男たちが市長室に侵入してきた。その数、ピタッと十人。
「数の暴力かよ」
「この人数差は辛いな……さすが黒杉先生、切り札を出してきたか」
「感心してる場合ですか」
男たちに囲まれた俺たちは逃げ場を失った。
「まさか、市議の私が単身で乗り込んだと思ってたのか?」
黒杉はニマァッと嫌な笑みを浮かべて、
「こうなったらなぶり殺しだ! 行け!」
「イエッサー!」
号令を発すると軍団が一斉に俺たちに迫ってきた。リンチそのものやんけ。
黒服連中は刃物や銃の類こそ持っていないが木刀を所持している。何も持っていない者は、恐らく武道や空手などの心得があるのだろう。
俺もマグナムは持っているが、今の状態で無理矢理取り出しても相手に奪われてしまう危険性が非常に高い。もっと早く出すべきだったな。俺の判断ミスだ。
黒服たちから身体のあちこちを掴まれ、身動きが取れずにいると――――
市長室の扉が乱暴に開かれた。
「乱闘は俺らの
「「「ウオオオオーーーーッ!!」」」
足で扉を開けて入ってきたのは青柳さんだった。
青柳さんが十数名の仲間を従えて市長室に乱入してきた。
室内、ものすごい人口密度となっております。
「な、ヤクザ……!?」
黒杉は突如として現れた
「待たせたな、片倉ァ!」
「グッド、いや、ゴッドタイミングですよ青柳さん! さすが、男の中の男っ!」
俺の
「ド派手にやってやるぜー!」
「あまり物品を壊さないでくれると助かるんだが……」
市長は乱闘の様子を見守りつつも冷や冷やしていた。そんなこと気にしてる場合じゃねーだろ。
人数的に
「うわっ!?」
木刀以外の飛び道具を持たない黒服連中は
「小僧、何者だ……? なぜ、ヤクザとパイプが……? 貴様のバックはどうなってる……?」
「俺のバックは全くヤバくねーよ。ヤクザと警察の知り合いがいる程度だ」
「普通に普通じゃない交友関係だろう!?」
黒杉は俺の言葉に仰天していた。
「クソッ、黒服も役に立たないな! かくなる上は――」
黒杉は扉へと向かった。逃げる気だな。
だが、そうは
「な……」
黒杉の動きが廊下に出た瞬間に止まった。蛇に睨まれた蛙のように。
「警察です。通報を受けて来ました」
俺が予め話を通しておいた例の警察官がやってきた。今回もありがとうございます。
「黒杉市議。あなたに汚職疑惑が出ています。署までご同行願います」
「バ、バカな……! 私は市議会議員だぞ!」
黒杉は市議バッジを警察官に見せつけるものの、何の効力も持たない。
「犯罪者に市議も無職もありません。全員同格です」
「うぐうぅっ!」
手錠をかけられた黒杉はパトカーに乗車するよう促され、
「黒杉さんよ。あんた、何のために議員になったんだ。市民のためじゃなかったのか?」
俺の言葉に黒杉は無言で俯いた。自身の利権しか考えない議員が議員バッジをつけるな。
警察官に黒杉が隠していた資料を渡してあとはお任せする。
「君、まるでドラマの主人公みたいだね」
警察官は俺を心底関心したように、輝いた瞳で見る。
「創作世界の主人公ですから」
「そりゃ傑作だ。ははは」
俺たち二人は顔を見合わせて笑った。
その後諸々どうなったかというと。
市長は知事に誓約書の件をFAXと電話にて報告し、カジノ建設は中止となった。
再開発自体も無期延期となったため、商店街の
しかし、それは平坂市が現状維持になったことも意味しており、人口増加になりうる話題性は生み出せずじまいで幕を閉じたのであった。
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