番外編1
番外編 1-1
私の肌を灼く太陽は、南中を過ぎ、時間差で今日の予想最高気温をもたらす。
いつもは私より先に待ち合わせ場所に居る彼の姿は無い。
彼を心配する文章にも既読は無く、私の心配が段々と高まってきたその時、私の目が彼の姿を捉えた。
「遅れてごめんなさい。」
そう言って頭を下げる彼の腕時計も集合時刻である14:00ピッタリを指しているだろう。
「大丈夫。遅れてないよ。」
そう言って私はスマホのホーム画面を彼に向ける。
嘘だ。私の心は大丈夫じゃない。待っている間、「どうして今日は遅いんだろう」とか「もしかしたら事故に遭っているのかも」とか想像してしまった。月一回のデートも5回目。いつしか彼が待ってくれているのが私の中で当たり前になっていた。
家族以外の人を待ったのなんて何年ぶりだろうか。もしかしたら初めてかもしれない。「次からはもう少し早く来るようにしよう。」心に決めた瞬間だった。
噂には聞いていたけど、実際に体験するとあまりにも長い大学生の夏休み。ようやく折り返したころだろうか。今日は秋物の服を買いに近くのショッピングモールに来た。中学、高校とファッションには興味が無かったので、今の服装にも正直自信は無いのだが、彼もファッションに疎いのか、気に掛けていない様子だ。
前回、夏物を買いに来た際は迷いに迷って彼を3時間も振り回してしまった。
今日は早くきめなきゃと思いながら、顔を上げた彼の方を向く。
「じゃ、行こっか。」そう言う私の声はまだまだぎこちない。
それでも良いのだ。彼だって同い年だというのにまだ敬語が抜けていないのだから。
私たちはショッピングモールの中に入って行く。
この後彼を前回以上に振り回すことになるとは知らずに……
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