1-7

午前6時35分、所定の体育館裏に着いた。そこには当たり前だが、草間優祐が居た。


かなり緊張している。ということは脅迫ではなさそうだ。告白なら、すっと断ろう。


そんな私の考えを壊す言葉が、彼の口から出た。


「音無さん、いじめられてるよね?」


緊張からかかなり声が震えていたが、彼はそういった。


私は自分の耳を疑った。が、私の脳はそれ以外の言葉に変換しなかった。


私はその言葉に肯定も否定も出来ず、その場で泣き崩れた。


私は泣きながらも、何故それを知っているのかを聞いた。


彼が言うには、偶然あの廃教室にたどり着き、そこで私がいじめられているのを見たという。一瞬だったが、スマホの録画も見せてもらった。そこには、ペットフードに顔をうずめる私の姿が映っていた。


やはり脅迫かと思い、走って逃げようとしたが、泣き崩れて脱力していた私の足は、それを許さなかった。


やがて近づいてきた彼は、思いもよらない言葉を口にした。


「僕は弱いけど、音無さんの力になれる。そう断言する。だから、少しずつでも良い。僕に概要を教えてほしい。勿論、信じられないなら今ここで通報してくれたって構わない。」


その彼の言葉には、先ほどのような震えは無く、ふと見上げた彼は私をまっすぐに見ていた。


彼のその姿に、私はまた泣き始めた。その姿に彼は動揺していたが、すぐに介抱してくれた。その貧弱そうな体は、不思議と頼もしく感じられた。


私は、いじめの内容、自分の境遇など全てを話した。正直、そこまで話す気は無かったのだが、いつの間にか全て話してしまっていた。


いじめの内容を一通り確認した彼は、少しの間黙っていたが、やがて口を開いた。


彼が口にした内容に、私はハッとした。


「表で何もしないなら、無視すれば良い。」


そうだ。どうして私はこんなにも簡単なことを気付かなかったのだろう。


今まで「ただの目立たないクラスメート」だった彼は、突然光を帯びたように見えた。


そう感じた矢先、彼の背から陽が差し込み始めた。彼が、眩しかった。

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